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年賀状とどう違う? 「寒中見舞い」はどんなときに出すものか、事例を解説

「寒中見舞い」はどのようなときに出すのでしょうか。また、寒中見舞いをもらったときは必ず、返事を出さなければならないのでしょうか。専門家に聞きました。

寒中見舞いを送るのはどんなとき?
寒中見舞いを送るのはどんなとき?

「寒中見舞い」という言葉を聞いたことのある人もいると思います。一般的には、1月から2月上旬までの寒い時期に出すあいさつ状といわれていますが、年賀状との違いが分かりにくく感じることがあります。寒中見舞いとは、どのようなときに出すのでしょうか。また、寒中見舞いをもらったときは必ず、返事を出さなければならないのでしょうか。

 日本礼法家元で令和椿和文化協会会長の椿武愛子(つばき・むつこ)さんに聞きました。

年賀状の出しそびれなどに対応

Q.そもそも、寒中見舞いとはどのような時期に、どのような目的で出すのでしょうか。

椿さん「寒中見舞いとは、一年で最も寒い時期、相手の体調を気遣う目的で送るあいさつ状のことで、次の事例に該当する場合に送ります。

(1)年賀状を出しそびれてしまった場合(1月7日までの間に届く見込みがない場合)
(2)自分が喪中の間、相手から年賀状をもらった場合(12月上旬までに喪中はがきを出していた場合を除く)
(3)喪中の人への寒中見舞い
(4)喪中の人に年賀状を出してしまった場合

こうした場合、松の内(元旦から1月7日)明けの1月8日から、2月3日(立春が2月4日の年の場合)までの間に寒中見舞いを送った方がよいでしょう」

Q.寒中見舞いは、どのように書いたらよいのでしょうか。文例について、教えてください。

椿さん「寒中見舞いを送る理由として多い、先述の(1)(2)(4)を例に説明します。まず、年賀状を出しそびれてしまった場合、『このたびはご丁寧な新年のごあいさつを頂きありがとうございました』とお礼を書いた後、『年賀状も差し上げずに大変失礼いたしました』とおわびしましょう。そして、相手の体調を気遣う意味で『寒い日が続きますので どうぞお体にお気を付けてお過ごしください』といった文章で締めくくるとよいでしょう。

事前に喪中はがきを出さずに相手から年賀状をもらった場合、『(家族)が○年○月に○歳で永眠いたしましたので 新年のごあいさつは差し控えさせていただきました』『ご通知が遅れましたこと どうぞお許しください』と喪中だったことをきちんと説明した上で、相手におわびしましょう。その後は『本年も変わらぬお付き合いよろしくお願いします』といった内容の文章で締めくくってください。

喪中の人に年賀状を出してしまった場合、『新年のごあいさつを申し上げ大変失礼いたしました』とおわびする内容で、寒中見舞いを送ります」

Q.寒中見舞いを出す際の作法について、教えてください。例えば、はがきのデザインは地味な方がよいのでしょうか。また、縦書きと横書きのどちらで書いた方がよいのでしょうか。

椿さん「喪中で年賀状を出せなかったことを理由に送る場合、おめでたい話ではありませんので、地味なデザインのはがきを選びましょう。一方、年賀状を出しそびれた理由で送るのであれば、明るいデザインのはがきを選んだ方がよいでしょう。

日本では古くから、句読点を入れずに縦書きで文章を書いていたので、寒中見舞いは句読点を入れずに縦書きで作成してください。その際、ボールペンではなく、万年筆や筆ペンで書きましょう。ボールペンだと『取りあえず書いた』という印象を相手に与えてしまうからです。

文中で『度々』『追々(おいおい)』などの重ね言葉は使ってはいけません。『不幸が2回重なる』などと相手に捉えられるからです。また、近況などを伝える際、『切る』『別れる』など不幸を連想させるような言葉を使うのは好ましくありませんし、いくら事実であったとしても『入院した』『けがをした』などの不幸事を書くと、相手に余計な心配をかけてしまうのでやめましょう。

このほか、自分や相手が喪中の場合におめでたい言葉を使うのも好ましくありません。なお、自分の近況などを伝えても構いませんが、職場の上司や取引先など仕事関係の人に送る場合、文章をできるだけ簡潔にしましょう。年賀状のときにも話題になりますが、家族写真などの画像を添付するのは、友人など親しい人に送る場合に限定した方が無難です」

Q.寒中見舞いをもらった場合、必ず、返事を出さなければならないのでしょうか。それとも、返事を出す必要はないのでしょうか。

椿さん「内容によって異なります。相手が年賀状を出しそびれたことを理由に送ってきたのであれば、必ずしも返事を出す必要はありません。しかし、相手が喪中で、年賀状が送れなかったことをわびる理由で送ってきた場合は別です。その場合、相手を気遣うために『ご家族の皆さまにおかれましては さぞかしお力を落としのことと存じますがご自愛ください』といった内容の文章で返事を出しましょう。

その後、花や香典を送るとよいでしょう。なお、相手が喪中の場合、来客をもてなすのが大変なので『お悔やみに一度お伺いします』と書かない方がよいです。また、花や香典を送る際は事前にその旨を相手に知らせる必要はありません」

(オトナンサー編集部)

【画像】年賀状出しそびれ、喪中に年賀状…「寒中見舞い」の文例を見る

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椿武愛子(つばき・むつこ)

日本礼法家元、令和椿和文化協会会長、ビジネスマナーコンサルタント

北海道釧路市出身。戸板女子短期大学生活科卒業。結婚後、国内における東西のマナーや風習の違いを肌で体感し、主婦の傍ら、作法・和・洋テーブルマナーを学び、日本礼法会教授資格を取得。1988年から、札幌でイベント企画を手掛け、自らも司会やマナー講師として活動。現在、椿武愛子オフィス代表として各種マナー講習会や講演、企業向け接客マナー研修に携わりながら、多様な和文化を伝えていく活動を行っている。令和椿和文化協会(https://www.tsubakimutsuko.jp/wabunka/)。

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