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スピード違反の「反則金」、義務じゃなく“任意”って本当?

スピード違反など交通違反をして、警察に取り締まられたときの反則金。支払いは「義務」ではなく、「任意」だそうです。本当でしょうか。

反則金の支払い、義務化しないのはなぜ?
反則金の支払い、義務化しないのはなぜ?

「スピード違反」は交通違反の中でも件数が多いものの一つです。いつもは慎重に自動車を運転しているのに、うっかり、スピードを出し過ぎて、取り締まられた経験がある人も多いのではないでしょうか。

 超過速度が、一般道路なら29キロ、高速道路なら39キロまでであれば、違反点数の加算と、期日までに反則金を支払えば、刑事罰が免除されます。しかし、違反に対する罰であるはずの反則金の支払いは実は「任意」で「義務」ではないそうです。本当でしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

義務化は裁判の機会奪う

Q.交通違反の反則金の支払いが「義務」ではなく「任意」であるのは本当ですか。

佐藤さん「本当です。交通違反の反則金の支払いは『任意』です。道路交通法125条3項では『反則金とは、反則者がこの章(反則行為に関する処理手続きの特例)の規定の適用を受けようとする場合に国に納付すべき金銭』と定めています。つまり、比較的軽微な道路交通法違反をした反則者自らが反則行為を刑事手続きではなく、行政手続きで処理されることを望んだ場合、反則金を支払うことになります。これを『交通反則通告制度』といいます。

道路交通法に違反すれば、本来は刑事手続き(裁判の提起=起訴)に進みますが、反則金を納付することで、起訴されることはなくなります(同法128条2項)。なお、無免許運転者、酒気帯び運転者、交通事故を起こした者など、危険性の高い行為をした者については交通反則通告制度は適用されません」

Q.反則金が制裁の意味があるならば、なぜ、「義務」ではなく「任意」なのでしょうか。「任意なら、反則金を支払わなくても大丈夫だろう」と考える反則者が出てこないのでしょうか。

佐藤さん「先述したように、交通反則通告制度は反則金を支払うことにより、刑事裁判を受けずに事件を終結させる制度です。逆に言えば、反則金を支払うと、仮に交通違反の取り締まりに不服があっても刑事裁判で事実を争う道が絶たれます。反則金の支払いを『義務』にしてしまうと、違反の事実について裁判で争えなくなり、『裁判を受ける権利』(憲法32条)を害することになってしまいます。そこで『任意』とされているのです。

ただし、任意だからと反則金を支払わない場合、刑事手続きに移行し、前科が付くリスクがあります。そうしたことを知っている運転者は多いと思うので、違反の事実を自覚しているのに『反則金を支払わなくて大丈夫だろう』と考える人は少ないでしょう」

Q.期日が過ぎても反則金を支払わなかった場合、運転者はどのようになりますか。逮捕されるのでしょうか。

佐藤さん「交通違反をすると、まず、いわゆる『青切符』(軽微な違反をした場合に渡される書類)と『納付書』を交付されます(悪質な違反の場合を除く)。納付期限内に反則金を支払わなかった場合、交通反則通告センターに出頭するか、あるいは、郵送によって、『通告書』『新たな納付書』を受け取ることになります。

通告を受けてもなお、反則金を支払わなかった場合、刑事手続きに移行します。検察庁へ書類が送られ、検察官が起訴するか否か判断します。起訴されれば、刑事裁判を受けることになり、有罪判決となれば前科がつきます。なお、悪質な違反者の場合、逮捕されるケースもあります」

Q.ちなみに反則金を支払っていない場合、運転免許の更新はできないのでしょうか。

佐藤さん「『反則金を支払うまで免許更新をしない』など、反則金を支払わないことに対して何らかのペナルティーを与えることは、国民に対し、反則金の納付を半強制的に選択させ、刑事裁判を受ける権利を閉ざすことにつながるため、許されないでしょう。現行制度では、交通反則通告制度と並行して、点数制度による運転免許の取り消しや停止などの処分が行われています。

点数制度により、違反の悪質性に応じて、危険な運転をする人が排除され、反則金、または刑事罰によって、違反者に対し制裁が加えられることになります。こうした制度により、交通の安全が一定程度守られているといえるでしょう」

(オトナンサー編集部)

佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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