喪失感、リアルな心理描写…「おかえりモネ」が朝ドラに切り開く新地平
清原果耶さんがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」。放送開始からおよそ1カ月が経過し、好調が続く理由を専門家に聞きました。
現在放送中のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土 前8:00)。ヒロインを務める清原果耶さんは、女優デビュー作となった「あさが来た」(2015年度後期)、「なつぞら」(2019年度前期)に続き、自身3度目の朝ドラ出演となります。
清原さんの他、鈴木京香さん、内野聖陽さん、西島秀俊さん、夏木マリさんら豪華俳優陣が脇を固め、朝ドラでは「あまちゃん」(2013年度前期)以来、作中で東日本大震災が描かれることでも注目を集めている同ドラマについて、テレビドラマに詳しいライターの田幸和歌子さんに聞きました。
朝ドラには珍しい傾向
同ドラマは、宮城県気仙沼湾沖の自然豊かな島で育ったヒロイン・永浦百音(清原さん)がある日、東京からやって来た気象予報士に「天気予報は未来を予測できる世界」と教えられたことに深い感銘を受け、気象予報士を目指し成長していく姿を描いたストーリー。田幸さんは「ロケーション撮影のシーンが多く、自然豊かな映像美が非常に印象的」と評します。
「ロケーション撮影のシーンが多く、自然の光や風の解放感など心地よいシチュエーションの美しい映像が魅力の一つです。特に、オープニング映像の透明感あふれる雰囲気は朝ドラならではの爽やかさを表しているのではないでしょうか」(田幸さん)
透明感あふれる爽やかな映像美が印象的な一方で、従来の朝ドラではあまり見られなかった傾向がいくつかあると田幸さんは話します。
「まず一つは、物語の随所に何らかの関係性をにおわせるような演出が多く見られる点です。まだ明らかになっていない部分が多くあり、加えて、今作は言葉数が少なく、説明を極力省いているような印象を受けました」
「また、登場人物が皆、喪失感を抱いている状態から物語が始まる点も朝ドラには珍しいと感じています。従来であれば、現在の幸せな姿を見せてから、困難に立ち向かっていく姿を見せるというのが朝ドラの一つの描かれ方なのですが、今作の登場人物は皆、始まりから何かを抱えていて、それが何によるものなのかがすぐには見えてきませんでした」
放送開始からおよそ1カ月が経過した同作ですが、田幸さんは、作中での時間経過が非常にゆっくりしていると指摘します。
「今作の特徴の一つに、時間の経過が非常にゆっくりしている点が挙げられます。ですが、その分、登場人物のやりとりや心理描写がリアルに描かれていて、朝の15分の中でここまで丁寧に描く手法は、朝ドラの可能性を新たに広げることにつながるかもしれません」
ヒロインが受けの立場?
田幸さんは、清原さん演じるヒロインの姿についても言及しています。
「清原さんの抜群の演技力があってのことなのですが、斬新だったのは、震災後の風景が彼女の目を通して見える世界で描かれている点です。清原さんのアップの描写が多いのはこの点が関係していることに加え、彼女の演技力を見せたい一つの演出とも考えられます」
「また、ヒロインの周囲の人たちが抱えているもの、境遇などが少しずつ明らかになってきた一方で、肝心のヒロインの姿がまだ見えにくい側面もあります。これまでは妹や友人たちの話が多く描かれていて、ヒロインがここまで受けの立場になっているのも珍しいのです」
田幸さんによると、安達奈緒子さんの脚本も注目ポイントの一つといいます。
「安達さんは清原さん主演の『透明なゆりかご』、西島さんと内野さんがダブル主演を務めた『きのう何食べた?』の両ドラマで脚本を手掛けたことでも知られています。どちらの作品も脚本賞に輝くなど高い評価を受けており、再びタッグを組むという意味でも非常に期待しています」
「原作アレンジが抜群で定評のある安達さんですが、オリジナルの脚本で半年の長期間をどう描いていくのか注目です。これまでも、作品をリアルな世界観で描くために取材をきっちり重ねてきた安達さんですから、震災というテーマをどう扱って、物語を進めていくのかが見どころの一つではないでしょうか」
(オトナンサー編集部)
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