オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「家、ついて」重定菜子Pに聞く 制作の裏側とコロナ禍の苦悩、番組への思い

4月から、1時間の放送枠となるテレビ東京系バラエティー「家、ついて行っていいですか?」の重定菜子プロデューサーに、制作の裏側やコロナ禍での苦悩などを聞きました。

「家、ついて行っていいですか?」より(C)テレビ東京
「家、ついて行っていいですか?」より(C)テレビ東京

 放送開始8年目を迎え、4月から再び、1時間の放送枠となるテレビ東京系バラエティー「家、ついて行っていいですか?」(毎週水曜 後9:00)。同番組は終電時間を過ぎた街頭で通行人に声を掛け、自宅まで同行、そこで取材した模様を放送するバラエティーです。

 オトナンサー編集部では、同番組の重定菜子プロデューサーに単独インタビューを実施。制作の裏側やコロナ禍での苦悩、番組作りへの思いなどを聞きました。

誰もがそれぞれのドラマを持っている

Q.番組は8年目に突入。ここまで続いた理由は何でしょうか。

重定さん(以下敬称略)「番組の初期から、ずっと続けてくれているスタッフが何名もいるのですが、ノウハウを積んだディレクターたちが番組に対して深い愛情を持ってやってくれているのが、ここまで番組が続いた理由の一つ。

もう一つは、視聴者の皆さまに支持していただいていること。番組を見て気持ちが変わったり、生き方について考えるようになったなど、さまざまな声を頂けることが本当にありがたいですし、それが励みとなって、スタッフも頑張ってくれています。正直なところ、ここまで続くとは思っていなかったです」

Q.番組はどのようにして作られているのでしょうか。

重定「単独、もしくは2人で街に行き、声を掛け、現在は1日10班くらいが動いています。スタッフが暑い日も寒い日も街角に立って、根気よくやってくれていますがほとんど断られるんです。普通に考えたら嫌ですよね(笑)それでも街角に立って、VTRを撮ってきてくれる。本当にありがたいと思っています」

Q.素材の量も膨大な数あるのではないでしょうか。

重定「この番組の取材はいわゆる『ボツ』的なものにはならないんです。過去のものを掘り起こすこともあって、例えば、数年前に出会った方が現在はこんな感じですって紹介したりするので。ストックという意味では多分、地上波の番組の中では一番あるかもしれない。いや、あるでしょうね(笑)」

Q.番組として一番注力していることは何ですか。

重定「誰しもがそれぞれのドラマを持っていると思うんです。だけど偶然、街で声を掛けられたスタッフに簡単に話してくれるわけないじゃないですか。なのでどれだけ、その人に寄り添い、懐に入って話を引き出せるかが重要。話を引き出せるかどうかはスタッフの腕やタイミングにもよるのかもしれませんが、それを持ってこれるかどうか、運のようなものでもあります」

Q.プロデューサーとして心掛けていることは。

重定「一番に思っているのは、取材させていただいた方を守ること。その人は街でたまたま出会ったスタッフを家に上げてくれて、さらに家の中のいろんなものを見られるわけです。その上、話までしてもらい、放送しても大丈夫と言ってくれるわけですけど、ただただ信頼して任せてくれているんですね。だから、放送をすることによって、迷惑が絶対にかからないようにしなければと考えています。

なので、放送終了後には必ず連絡を取って、『どうでしたか?』と聞くんです。喜んでくれているのを確認すると本当にホッとしますね。スタッフにも度々お願いするんですけど、自分の家族を取材するような気持ちでいてほしい。放送後も良好な関係性があることで、以後もVTRに出てくれる方もいますし、その人の人生は放送後もずっと続くので」

Q.一般の方を取材する上で心配になるようなことはありますか。

重定「その日、初めて会ったスタッフが例えば、夜中にお宅へ上がり込んだりするわけなので、何かあったらと常に心配です。相互の信頼関係で成り立っている、極めて特殊な番組です。

海外から、番組のフォーマット販売のお声を頂くこともあるのですが、仕込みを一切していないことを伝えると『絶対無理、成立しない』『理解できない、危険すぎる』という反応なんです。この番組は日本だから可能だし、奇跡的なことなんだなと思います」

Q.新型コロナウイルスの流行で番組作りにはどんな影響がありましたか。

重定「番組のコンセプトが『深夜に終電を逃した人に声を掛ける』というものだったので、もちろん、それはできなくなってしまいました。コロナによって、ロケがメインの他番組もいくつかなくなってしまいましたが、その筆頭のような番組だったので本当に厳しかったです。

ただ、それぞれの人がそれぞれの家で過ごしていることには変わりなく、むしろ、その時間は増えているので、そこにたどり着けさえすればと。これまで、定点カメラを置いたり、タクシーに広告を出したり、オンラインのイベントで声掛けをしたりといろんなことを試みましたが、ありがたいことに番組の認知度もそれなりに高くなっていて、コロナ禍の中でも協力していただける方に出会うことができ、続けることができました」

Q.番組の放送開始以来、変わらないものは何でしょうか。

重定「矢作さんとビビるさんがずっと変わらずいてくれること。2人がVTRを見ながら、温かい目でツッコミを入れつつ、それぞれの方の人生ストーリーを盛り上げてくれています。

また、ビートルズの『レット・イット・ビー』という素晴らしい曲の存在にも感謝です(笑)初めてロケに行くスタッフには『歌詞をちゃんと読んでね』ってお願いするんですが、この番組のVTRにはナレーションが入らないので、この曲の『そのままでいいんだよ』という意味合いをメッセージとしてのせています」

Q.最後にメッセージをお願いします。

重定「今しか切り取れない情景ってあると思うんです。何年後かに振り返ったとき、家の中で取材をしているのに人がマスクをしていたり、夜の街が閑散としている様子を見て、どんな気持ちになるんだろうと…。この映像って今しか撮れないですし、今を表していますよね。だからこそ、今のこの状況下で人が思っていること、感じていることを撮り続けたいと思っています」

(オトナンサー編集部)

コメント