浜辺美波&横浜流星が「わたどう」で示した令和流“和風ドロドロ愛憎”ドラマの可能性
30年前の若い役者が憧れた世界
なお、物語の舞台となった「光月庵」は創業400年という老舗。しかし、ここで描かれた“和風ドロドロ愛憎”ドラマというジャンルの原点はさらに古く、1000年前の「源氏物語」にまでさかのぼります。
その伝統を大いに感じさせたのが、第5話でした。主役の2人が浴衣姿で、星空のようにきらめく蛍を眺めながら語らいます。これは「源氏物語」で光源氏が、かつての愛人の遺児である玉鬘(たまかずら)の美しさを際立たせるため、大量の蛍を放つ場面を思い出させました。
そんな自然と恋愛、芸術とを融合させる美意識は、日本文化の肝というべきもの。昭和の時代には、川端康成や谷崎潤一郎の文学が映画やドラマにも影響を与えました。その終盤、この系譜を受け継いだのが立原正秋の小説とそれを原作とする映像作品です。
1980年の連ドラ「恋人たち」(TBS系)は、32歳の根津甚八さんと23歳の大竹しのぶさんのコンビでヒット。1985年公開の映画「春の鐘」では、浜辺さんの事務所の先輩でもある26歳の古手川祐子さんがヒロインに起用されました。この年、27歳で亡くなった夏目雅子さんは白血病の闘病中に古手川さんの起用を知り、自分がやりたかったと悔しがったそうです。
また、1990年前後のトレンディードラマブームで、W浅野の一人としてブレークした浅野ゆう子さんは、立原文学のヒロインを演じられる女優になりたいと話していました。
つまり、今から30年ほど前には、20代30代の役者たちが憧れるような世界だったわけです。
「わたどう」の成功は、そんな世界にまた光が当たるのではという予感を起こさせます。それこそ「花筏(はないかだ)」「落とし文(おとしぶみ)」「空明(くうめい)」といった名前からして魅惑的な劇中の和菓子が注目されたように、長年かけて培われた美意識に基づくドラマや映画がこれからまた増えていくのでは、という気がします。
浜辺さんや横浜さん、そして脇を固めた高杉真宙さんや岸井ゆきのさんにとっても、この作品に出たことは今後、強みとなるでしょう。「源氏物語」以来の伝統を令和型にアップデートした“和風ドロドロ愛憎”ドラマの可能性。それが若手たちによって切り開かれていくことに期待したいものです。
(作家・芸能評論家 宝泉薫)
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