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延期続く大作ドラマ「半沢直樹」は不運と不安を吹き飛ばせるか

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて再度、放送が延期された「半沢直樹」。さまざまな不安を吹き飛ばして、待ちわびるファンの期待に応えられるでしょうか。

堺雅人さん(2017年10月、時事)
堺雅人さん(2017年10月、時事)

 TBSが新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ドラマ収録の休止を5月6日まで延長することを発表しました。4月1日に、4日から19日にわたる2週間の休止を発表していましたが、状況を踏まえて期間の延長を決めたようです。

 これを知った人々から「『半沢直樹』がまた延期か……」「こういうときだから、見てスカッとしたいのに」などと嘆きの声が上がっていました。やはり、2013年夏の大ヒットから7年もの年月を経た待望の続編だけにショックは大きいのでしょう。

「半沢直樹」は再度の放送延期という不運によって、どんな不安が発生しているのでしょうか。

延期されるほど同系作品が続きそう

 再度の放送延期による1つ目の不安は“原作・池井戸潤×演出・福澤克雄”の同系作品が続いてしまうこと。もともと、続編スタートの4月19日に先がけた5日と12日に「半沢直樹 特別総集編」を放送する予定がありました。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で続編の収録が止まってしまい、放送延期が決定。それを受けて「下町ロケット 特別総集編」が5日、12日、19日の3週にわたって放送されています。その後、収録再開など順調に推移したとしても、「半沢直樹 特別総集編」が2週、さらに「半沢直樹」続編が放送されるなど“池井戸×福澤”作品が続くことになります。

 また、再々度放送が延期された場合、番宣の意味で「下町ロケット2」「陸王」など、別の“池井戸×福澤”作品が「特別総集編」として放送される可能性もあるでしょう。“池井戸×福澤”作品は、下克上と勧善懲悪、アップを多用した力感あふれる映像、熱く濃いキャラクターなどの共通点が多いだけに、「半沢直樹」の続編スタート前に見慣れてしまい、インパクトが弱くなるリスクがあります。

 再度の放送延期による2つ目の不安は、人々の心理、仕事環境、人間関係などの変化。もともと、続編の放送前から、「7年の間にコンプライアンスやハラスメントを取り巻く状況が変わり、働き方改革も進むなどさまざまな変化があるだけに、『半沢直樹』の世界観は合わないのではないか?」などという声が上がっていました。

 加えて、新型コロナウイルスの猛威によって、人々の心理、仕事環境、人間関係などが大きく変わり始めています。7年のブランクだけでなく、命の危機にさらされる緊急事態。「半沢直樹」の続編は、そんな人々や環境に寄り添った作品となりうるのか。放送延期されるほど難しさを増しているのです。

「点ではなく線のPR」に狂い

 TBSは「2020年は半沢直樹イヤー」というキャッチフレーズを掲げ、新年早々の1月3日に「エピソードゼロ~狙われた半沢直樹のパスワード~」を放送。同作は4月から放送される予定だった続編の前日譚(たん)となる物語であり、「正月から春に向けて盛り上げていこう」というメッセージ性を感じさせました。

 さらに2月11日から、ラジオドラマ「『半沢直樹』敗れし者の物語 by Audio Movie」を約2カ月間にわたって放送。2013年の前作に登場した、東京中央銀行大阪西支店の浅野匡支店長(石丸幹二さん)、西大阪スチールの社長・東田満(宇梶剛士さん)、東田の愛人・藤沢未樹(壇蜜さん)ら悪役がそろい踏みしました。

 さらに、グッズの販売、特別総集編の放送など、点ではなく線のPRで視聴者を盛り上げようとしてきただけに、TBSとしては頭が痛いところ。前作の最終話が平成歴代トップの視聴率42.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したことで、どうしても比べられてしまうだけに、PR戦略を立て直してロケットスタートを切りたいでしょう。

 一方、ファンは「早く見たい」という感情に加えて、「盛り上がってほしい」という期待と「不運続きで厳しいのではないか」という不安もある複雑な心境。PRの一翼を担うべく、積極的に情報をシェアするなどのアシストをしてもいいのではないでしょうか。

「続編放送決定」のニュースが流れたとき、喜びの声ばかりではなく、「7年はブランクが空きすぎ。昨秋に放送された『結婚できない男』の続編が盛り上がりを欠いたように、『半沢直樹』も厳しいのでは?」という声が上がっていました。

 7年待たせた上に、新型コロナウイルスの影響で繰り返しスタートが延期されたことで、視聴者の感情は揺さぶられっぱなし。きたる第1話の放送日に向けて、どのようにいいムードを作っていくのか。TBSとしても社運を賭けた作品だけに、不運や不安に屈することなく、最大限の努力を見せてくれるでしょう。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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