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変化する「乃木坂46」 成熟したアイドルの先にある、新たな“組織体”の可能性

2015年から5年連続紅白出場など、2010年代後半、女性アイドルシーンの中心に居続けた乃木坂46。ここに来て、一アイドルグループにとどまらない新たなコミュニティーの形を模索、構築しています。

乃木坂46(左から)与田祐希さん、秋元真夏さん、白石麻衣さん、遠藤さくらさん、堀未央奈さん(2019年12月、時事)
乃木坂46(左から)与田祐希さん、秋元真夏さん、白石麻衣さん、遠藤さくらさん、堀未央奈さん(2019年12月、時事)

 12月31日に放送される「第70回NHK紅白歌合戦」には、アイドルグループの乃木坂46、欅坂46、日向坂46の「坂道シリーズ」3グループがそろって出場します。「坂道」のパイオニアとして道を切り開いてきた乃木坂46は、2015年から5年連続となる出場です。

 2010年代は女性アイドルグループが大きなブームとなり、さまざまな規模や特徴のグループが登場した時代でした。特にこの年代の後半、女性アイドルシーンの中心的な位置にいたのが乃木坂46だったと言えるでしょう。

「ごく自然に成熟してゆく姿」

 AKB48のブレークに端を発する2010年代の女性アイドルシーンの活性化は、このジャンルにおける表現の幅を拡張し、あるいは、アイドルとして長年にわたり活動する選択肢を広げるなど、アイドルに新しい可能性をもたらすものでもありました。

 その中で、2011年に結成し、やはり幾年にもわたってキャリアを重ねながらシーンの中心に立った乃木坂46は、いわば「ごく自然に成熟してゆく姿」が自らの表現と共振してきたグループだと言えます。

「ごく自然に成熟してゆく姿」とは、特徴として決して分かりやすいものではありません。強烈なキャラクターや企画性であったり、特定の方向性に導くような楽曲コンセプト、あるいは明示的なメッセージ性などとは異なり、「ごく自然」な様であるだけに、代表的なトレードマークとしては指し示されにくい要素です。

 乃木坂46が最も広く支持されるようになったのはこの数年ですが、それは、彼女たちがグループとしてもメンバー各人のキャリアや年齢としても若年の段階を超えて、アイドルとして成熟した段階の表現を手にしてからのことになります。

 2018年に2年連続となる「日本レコード大賞」を獲得し、今年の「紅白歌合戦」の曲目にも選ばれている「シンクロニシティ」や、今年発表された楽曲のうち代表作といえる「Sing Out!」といった作品それぞれのパフォーマンスも、例えば“少女”を表象するものではなく、より普遍的なテーマをこそ表現するものです。

 アイドルがごく自然に成熟していくことの魅力や、彼女たちのライフスパンへの想像力を体現できている、と表現すればよいでしょうか。近年の乃木坂46の代表作にはしばしば、従来の女性アイドルという語からイメージされがちな少女表象とは異なる表現が少なくありません。

 それらはグループとして成熟段階にあるからこそ、説得力をもって担うことのできる作品だったはず。アイドルとして長く経歴を重ねることが珍しくなくなった時代故に、こうした作品群を生みやすい土壌ができていたということでもあるでしょう。

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香月孝史(かつき・たかし)

ライター

1980年生まれ。ポピュラー文化を中心にライティング・批評やインタビューを手がける。著書に「『アイドル』の読み方 混乱する『語り』を問う」(青弓社)、共著に「社会学用語図鑑 人物と用語でたどる社会学の全体像」(プレジデント社)、執筆媒体に「RealSound」など。

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