紅白歌合戦が出演者を“さみだれ式”に発表するようになった理由
大物交渉と民放の長時間フェス番組
次に「大物交渉」について。先述したように、昨年も今年も追加発表されたのは大物ばかりで、普段、テレビ番組にほとんど出演しないアーティストも少なくありません。昨年、米津玄師さんにNHKからさまざまな提案や粘り強い交渉があったことが報じられていたように、「当初は断っていたけど熱意で翻意した」というケースも多いそうです。
また、紅白歌合戦の置かれた環境が変わってきたこともポイントの一つ。民放各局が、紅白歌合戦と同等レベルの長時間音楽フェス番組を放送するようになり、物理的なスケール感で勝ることが難しくなりました。そのため、「紅白歌合戦は大物を狙って質の高さで勝負していく」という差別化がより必要になっているようなのです。
NHKとしては、受信料の是非が問われている上に、ネット同時配信への理解を得なければいけないという状況の中、よい番組を制作して存在意義を示し、好感度を高めておきたいところ。とりわけ、「朝ドラ」「大河ドラマ」「紅白歌合戦」の3番組は高視聴率獲得が求められています。
しかし、今年は大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の視聴率が低迷し、現在放送中の朝ドラ「スカーレット」も久々に平均視聴率20%を下回るなど苦戦が続き、「紅白歌合戦だけは失敗できない」のです。だからこそ、放送直前まで追加出演者の発表があるかもしれませんし、あらゆる努力をギリギリまで続けるのではないでしょうか。
(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)
コメント