台風19号で高齢女性がヘリから落ちて死亡、都や隊員が法的責任を問われることは?
台風19号による災害の救助活動中、救助対象者が亡くなるという痛ましい事故が発生。救助現場における隊員のミスは、法的責任を問われるのでしょうか。

福島県いわき市で先日、台風19号による災害の救助活動中だった東京消防庁のヘリコプターが77歳の女性をつり上げて機体に収容する際、誤って約40メートル下に落下させ、女性が死亡するという痛ましい事故が起きました。同庁は原因について、救助を行った隊員による救助手順のミスだと発表しました。もちろん、必死で女性を救おうとした中での事故であることは明らかで、隊員を擁護する声が多く存在します。
自然災害の現場で、救助される側の人命に関わる事故が起きてしまった場合、救助する側は何らかの法的責任を問われるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
国家賠償法1条の規定とは?
Q.今回の事故では、東京消防庁に対して、民事上の責任が問われる可能性がありますか。
牧野さん「民事責任については、国家賠償法1条で『公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体(東京消防庁を含む)が、これを賠償する責に任ずる』とあります。公務員が職務を行った場合について故意または過失による損害があった場合、国または公共団体(今回は、東京消防庁=東京都)が損害賠償責任を負います」
Q.一方で、隊員個人の責任についてはいかがでしょうか。
牧野さん「過失があっても、公務員個人に対して損害賠償請求することはできません。これを認めると、公務員の職務活動が萎縮してしまうからというのが通説になっています。ただ、公務員個人に『重過失(重大な不注意)』があった場合は、国または公共団体は公務員個人に対して、国民に支払った金額の支払いを求める(求償する)ことができます(国家賠償法1条2項)」
Q.刑事上の責任が問われる可能性はありますか。
牧野さん「隊員の刑事責任については、形式的には過失致死罪(刑法210条、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)に該当しますが、救助行為は正当行為であり、違法性がないとされて処罰されない可能性が高いでしょう。また、国や東京消防庁、東京都などの組織としての刑事責任も、救助行為は正当行為であり、違法性がないとされて問われる可能性が低いでしょう」
Q.今後、隊員の過失を認定するかどうかが判断されると思われますが、もしも「重過失」が認められたとすると、隊員に対しては遺族に支払われた賠償金の求償が求められるということでしょうか。
牧野さん「先述のように、隊員に重過失が認められなければ、免責されることになるでしょう。しかし、仮に重過失が認められた場合でも、今回の場合は『あの状況ではやむを得ない』となり、国や地方公共団体は求償権を行使することを控える可能性があることから、求償を求める住民訴訟が行われない限りは、結果的に免責されるでしょう」
(オトナンサー編集部)
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