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天ぷらを10年揚げられず…伝統文化の「下積み」は本当に必要? 賛否両論に専門家は

下積み期間短縮の動きも

Q.伝統文化の世界に飛び込んだものの下積みに耐え切れず、辞めてしまう若者が増えているそうですが、これは事実ですか。教える側は、何らかの対策を考えているのでしょうか。

齊木さん「『世代を超えて受け継がれてきた精神性』や『人間の行動様式や思想、習慣などの歴史的存在意義』が問われる伝統文化は、それなりの鍛錬が必要となります。そのため、技術面を学ぶまでに至らず、辞めてしまう若者が増えているのは事実です。

教える側も深刻な状況であることは理解しています。しかし、下積みから学ぶことも多々あることは事実であり、こうした期間を経て技術を学ぶのも、その分野をより深める一つの手段です。そのため、下積みをなくすという選択肢はありません。

一方で、伝統文化を教える側も、後継者に伝えていきたいという思いはあるものの、自分たちの生活のことで精いっぱいという現状もあります。例えば、伝統工芸の日本刀作りでは、熟練の職人でも1年間で世に出せるものは1~2本といわれます。着物も、1枚仕立てるのに2~3年かかるものもあります。そうした現状を悟った弟子が辞めてしまうこともあります」

Q.これでは後継者が少なくなり、伝統文化が衰退する恐れはありませんか。

齊木さん「その懸念はあります。そのため、日本の伝統文化の世界でも少しずつ変わろうとしています。例えば、日本料理の業界では、『下積み』と称してろくに仕事を教えず、安い給料でこき使う『しきたり』があります。そこで一部の日本料理店などでは、下積み3年を1~2年に短縮し、教えられることは教えて次のステップに進めるように努力しています」

Q.効率を重んじ、地道な努力を嫌う風潮がある現在、下積み的な仕事を新人や若手にさせる企業もありますが、重要なのは下積みの意義を理解することだと思います。どうすれば、下積みの意義を理解させられるでしょうか。

齊木さん「目的を効率的に達成することを目指すのは良いことだと思います。企業で下積みをする場合、『仕事とは“仕事相手ありき”である』ことを理解するためだと分かってもらうことが大切ではないでしょうか。いかに取引先と質の良い仕事をし、社会貢献することが目的かを伝えることです。

仕事も伝統文化と同様、その職場や上司、先輩が何を目指しているのかを感じ取り、学ぶべきものを見いだしていくことが大切です。その大切さを伝えていけば、下積み的な仕事も、目的意識を持って有意義に取り組めるのではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

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齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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