「カビに見えて不安」「農薬?」 ブドウの表面に付いた「白い粉」って安全なの?→管理栄養士に《正体》を聞いた結果
果実の表面が白っぽくなっているブドウを見かけることがあります。この“白い粉”のようなものに不安を抱く人も少なくないようですが、その正体は何なのでしょうか。

スーパーなどでブドウを買うとき、果実の表面が白っぽくなっているものを見かけたことはありませんか? この「白い粉のようなもの」が付いているブドウについて、「おいしいって聞くから、いつも白っぽくなっているものを選んでる」という声がある一方で、「カビに見えてちょっと不安」「農薬かな…と思ってかなりしっかり洗ってる」など、ネガティブな印象を抱く人も少なくないようです。
実際のところ、ブドウの果実の表面に「白い粉」の正体とは何なのか……管理栄養士の岸百合恵さんに詳しくご解説いただきました。
粉が吹いているのは「新鮮な証拠」
ブドウの表面にみられることがある「白い粉のようなもの」。見たことがある人も多いと思いますが、この「白い粉のようなもの」の正体は「ブルーム」といい、果実に含まれる脂質から作られた天然のろう物質が表面に出てきたもので、果粉(かふん)とも呼ばれます。ブドウ以外ではリンゴ、キュウリ、スイカ、プラム、ブルーベリー、ブロッコリーなどにも現れます。
植物の表面には「クチクラ」という、植物自体の脂質から作られた皮膜があります。クチクラの英語読みは「キューティクル」で、生物の体表を覆う丈夫な膜のことをいいます。クチクラは、雨や朝露などの水分をはじいて細菌の繁殖や病気を予防したり、水分の蒸発を防いで新鮮さを保ったりする働きがあります。また、これにより、温度や湿度など環境の変化にも対応できるようになっています。
クチクラは「クチン」という成分で構成されており、水分や脂質が移動できる微細な隙間があります。クチクラの内部にある「ろう物質」が多く分泌されると、無数の針状になって隙間から表面に押し出され、ブルームが作られます。例えばリンゴの場合、皮にブルームが出るものと、テカテカと光っているものとがありますが、ろう物質が針状にならずに溶け出すとテカテカして見えたり、ベタついたりしてきます。
ちなみに、ろう物質の分泌が少ないものもクチクラ自体に守られているので、水分を弾いたり病気を予防したりするなどの防御機能は問題ありません。
このように、果実の部分を守る働きをもつブルームですが、やはり気になるのは「ブルームが出ることによって、味や栄養に影響はないのか?」という点ではないでしょうか。
実は、粉が吹いているのは新鮮な証拠で、しっかりブルームが出ているものは、よく熟した“食べ頃の印”でもあります。ブルームは日がたつことで少しずつ失われていき、鮮度も落ちます。ブルームの出ているものは、丁寧に扱われて人の手が触れる機会が少なかった証しでもあるため、市場価値が高まるようです。果実をしっかり守るブルームが全体を覆っているものはみずみずしく、風味や栄養もよい状態だといえます。




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