「檄を飛ばす」「敷居が高い」「ご自愛」で役不足な人に贈る! あなたの日本語大丈夫?
「即効!成果が上がる文章の技術」を上梓した筆者から、正しい日本語に関する出題です。
昨年くらいから、人工知能(AI)が話題になることが増えました。AIの発展で、人間がやる必要のない作業については代替が進むことが予想されています。しかし、人間の関わりの本質的な部分がなくなることは考えにくいでしょう。
10月15日に「即効!成果が上がる文章の技術」(明日香出版社)を上梓しました。読者ニーズを探るため、数カ月前からQ&A形式のツイートを重ねてきました。その中で、反響の大きかったものを10本紹介します。皆さまはお分かりですか?
読者の皆さまも一緒にお考えください
(1)ご自愛編
A氏:インフルエンザにかかってしまった
B氏:お体には「ご自愛」ください!
「ご自愛」は自分の体を大切にすることの表現です。「お体」の後に続けると「重ね言葉」になります。正解は「ご自愛ください」。これだけで十分です。
(2)潮時編
A氏:事業の成果が出ない。万策尽きたな
B氏:「潮時」かもしれませんね
「潮時」は限界が迫っている時に使いがちです。本来は「一番いい時期」を指す言葉。この文脈で使用するなら「手詰まり」「万事休す」の方がベターです。
(3)さわり編
A氏:明日のプレゼンの役割を決めよう
B氏:最初の「さわり」の部分は僕がやります!
「○○のさわり」は、最初の部分の意味と思われがちです。本来は話の盛り上がるポイントのこと。要点や最も印象に残るところを指します。
(4)破天荒編
A氏:取引先の松田専務が転勤されるそうだ
B氏:「破天荒」な方でしたね
「破天荒」は豪快で大胆な様子の意味で使われがちです。本来は「今までできなかったことを成し遂げる」ことです。「前人未到の境地切り開く」こと。褒め言葉です。
(5)煮詰まる編
A氏:なかなかアイデアが浮かばない
B氏:さすがに「煮詰まって」きますね
「煮詰まる」は、成果が出ず、煮詰まった状況で使われがちです。本来は、議論や考えが出尽くして結論が出る状態のこと。結論が出る寸前に用いるのが正解です。
(6)敷居が高い編
A氏:昨日、社長と赤坂の料亭に行ってきたよ
B氏:赤坂ですか。僕には「敷居が高い」です
「敷居が高い」を、レベルが高くて分不相応な場合に用いるのは間違いです。後ろめたいことがあって「もう一度行くには抵抗がある」ことを表します。
(7)檄(げき)を飛ばす編
A氏:最近の営業は気合いが入ってない!
B氏:「檄を飛ばし」ますか
「檄を飛ばす」は激励するという意味はありません。広く世間に知らしめることを意味します。文脈なら「活」が理想です。なお、某番組で張本さんの「喝!」は誤用です。
(8)吝(やぶさ)かでない編
A氏:社長から出張依頼。今回は土日を返上だ!
B氏:社長命令なら「吝かでない」のでは?
「吝かでない」は「やむを得ない」の意味に使われがちです。正解は「喜んでする」こと。この文脈では、土日返上でうれしいという意味になります。
(9)お眼鏡にかなう編
A氏:君の企画はとても良かった
B氏:「お眼鏡」にかなって光栄です
「お眼鏡にかなう」とは、目上の人に評価されるという意味。元々は、お眼鏡=拡大鏡で是非を判断したことから派生した言葉です。「お目にかなう」は誤用です。
(10)役不足編
主演A氏:私は役不足なので「レ・ミゼラブル」の主演はできません
「役不足」は本来、「能力に対し役目が軽いこと」の意味です。これでは「『レ・ミゼラブル』の主演は軽すぎて不満」という解釈になります。日本語は難しいです。
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