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【引っ越し】賃貸住宅の入居時、自治体から「補助金」「助成金」が出るって本当? どんな人が対象? 不動産鑑定士に聞く

自治体が、賃貸住宅の入居者を対象とした補助金制度や助成金制度を実施しているのは本当なのでしょうか。不動産鑑定士に聞きました。

賃貸住宅の入居者を対象とした補助金制度や助成金制度があるのは本当?
賃貸住宅の入居者を対象とした補助金制度や助成金制度があるのは本当?

 転勤や進学ですでに引っ越しを済ませた人もいれば、これから引っ越しをする人もいると思います。自治体によっては、賃貸住宅の入居者を対象とした補助金制度や助成金制度を実施しているようです。実際に、どのような内容の制度があるのでしょうか。不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。

家賃補助を実施する自治体が多い

Q.自治体が、賃貸住宅の入居者向けに行う補助金制度や助成金制度の内容について、教えてください。どのような内容の制度が多いのでしょうか。

竹内さん「一般的に、家賃補助に関する制度が多いです。離職などによって住居を喪失する恐れのある人を対象としたものがある一方、定住者を増やすことを目的に、子育て中のファミリー世帯を対象としたものも存在し、自治体によって制度の内容や対象者が異なります。

例えば、横浜市には『住居確保給付金』という制度があり、離職のほか、やむを得ない休業などで経済的に困窮している人を対象に、家賃の一定額を補助しています。また、東京都新宿区には子育て世帯の定住化を目的とした『民間賃貸住宅家賃助成』という制度があり、子育て世帯向けに最長5年間、月額3万円の家賃を補助しています。

このほか、自治体によっては金銭の給付ではなく、公営住宅を低額な家賃で貸し出す制度を設けている場合もあります。申請する前に、各自治体のホームページで制度の内容や対象者などをしっかり確認しましょう」

Q.家賃補助の制度は、都市部の自治体に多いのでしょうか。

竹内さん「賃貸住宅の需要は人口が多い自治体に集中しており、家賃補助のニーズはこうした自治体に強く存在します。そのため、人口の多い自治体が家賃補助を実施する傾向にあります」

Q.自治体によっては、鍵の交換や防犯カメラの設置など、防犯対策をした人に対する補助金制度や助成金制度があるようですが、賃貸住宅の入居者も対象になるのでしょうか。

竹内さん「防犯対策に関する補助金や助成金の制度は、基本的に持ち家に住んでいる人が対象となります。なぜなら、賃貸住宅の借り主は、勝手に鍵を交換したり、共用部に防犯カメラを設置したりすることができないからです」

Q.補助金制度と助成金制度に違いはあるのでしょうか。

竹内さん「補助金と助成金は、いずれも『もらえるお金(返さなくて良いお金)』という意味では同じです。国が費用を拠出する場合は、管轄省庁が異なります。例えば、補助金は経済産業省、助成金は厚生労働省です。自治体では補助金や助成金のほか、給付金や手当といった名称が使われていますが、いずれも『もらえるお金』のことを指します。

自治体が行う住宅の補助制度は、自治体が達成したい目的によって異なります。例えば、地方の人口が少ない市町村の中には、人口減少を抑えることを目的に移住者に対して一時金を支払うといったケースも存在します」

Q.賃貸住宅の契約時に、不動産会社が自治体の補助金制度や助成金制度があることを教えてくれないケースが多いですが、なぜなのでしょうか。

竹内さん「自治体の家賃補助制度は、生活困窮者を対象としたものが多いからです。生活困窮者を対象とした制度は、すでに賃貸物件に住んでいる人が利用することを想定しており、新規の賃貸借契約で用いられることは基本的に想定していません。

生活に困窮している人は、新規の賃貸借契約の時点で入居審査が通らないことが多く、賃貸物件を借りられないのが一般的です。そのため、不動産会社が賃貸借契約時に自治体の補助金制度を説明する機会はほとんどないのが実態と考えられます」

Q.ちなみに、家賃などの支出を減らすためには、補助金制度や助成金制度がある自治体に引っ越すのがお得なのでしょうか。

竹内さん「補助制度以前に、まずは家賃相場が低い自治体に引っ越すことが合理的な選択です。さらに引っ越し先に生活困窮者以外を対象とした補助金制度や助成金制度があれば、支出を減らすことができます。

しかし、生活困窮者以外の人を対象とした補助金制度を設けている自治体は少ないです。そのため、補助金制度だけに注目するのではなく、他の視点からも家賃を抑える方法を探ることが望ましいといえます。家賃を抑える方法として、例えば、『駅から少し離れた場所を探す』『快速が停車しない駅の周辺で探す』『低層階の物件を探す』などの方法が考えられます」

(オトナンサー編集部)

【画像】子育て世帯に優しいのはどの自治体? これが「家賃補助」の内容です

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竹内英二(たけうち・えいじ)

不動産鑑定業

不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者であるグロープロフィット(千葉市)の代表取締役。大手デベロッパーにて長く賃貸物件の開発に携わってきたことから、賃貸借を得意としている。賃貸に関しては法人や個人を問わず、貸し主や借り主からの相談を多く受けている。大阪大学出身。 グロープロフィット(https://grow-profit.net/)。

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