働き方改革関連法案「有休5日取得」義務化に期待と疑問の声、実現できる? 厚労省に聞く
国会で議論中の働き方改革関連法案には、年次有給休暇取得の義務化と、違反した場合の罰則導入も盛り込まれています。果たして、実効性はあるのでしょうか。
「高度プロフェッショナル」制度導入や残業時間規制ばかりが注目されている「働き方改革関連法案」ですが、法案には、年次有給休暇(年休)取得の義務化と違反した場合の罰則導入も盛り込まれています。原則として、最低5日の有休を取得させることを企業などに義務付けるもので、SNS上では「実現したら結構助かる」「すごい」などと期待する声がある一方、その実効性を疑問視する声も上がっています。厚生労働省の担当者に話を聞きました。
法案成立すれば来年4月施行
年休取得の義務化と罰則導入は、労働基準法の改正案に盛り込まれています。10日以上の年休の権利を持つ労働者に、毎年5日は時期を指定して有休を与えなければならないというものです。違反した場合は30万円以下の罰金を科すことも明記しています。厚労省によると、取得時期は労働者の希望を聞いて決めるよう省令で定める予定です。
5日間とはいえ、これまで全く、あるいはほとんど有休を取れていなかった人には恩恵がありそうですが、SNS上では「年末年始や夏の休暇が有休にあてられそう」「有休という名の出勤日が増えるだけ」「繁忙期の振り替え休日も取れていない」と、制度が有効に機能するのか疑問視する声もあります。厚労省労働条件政策課の担当者に聞きました。
Q.取得義務付けを法案に盛り込んだ理由と経緯を教えてください。
担当者「日本では年休取得率が50%未満で低迷しています。取得率を向上させてワークライフバランスを実現してほしい、と労働政策審議会の労働条件分科会で議論する中で出てきました」
Q.今国会で成立した場合、施行はいつからですか。
担当者「来年(2019年)4月1日からになる予定です」
Q.守らない使用者がいた場合、どのようにして見つけるのでしょうか。また、違反が判明したら即、罰金になりますか。
担当者「労働基準監督署の定期的な監督指導の中で、年休の取得状況を帳簿などで確認していきます。もし取得できていなければ、まず是正勧告などの指導をし、その後チェックしてまだ守っていなければ、送検後、最終的には裁判所で罰金の判断をしていただく、という流れを想定しています」
Q.5日分を、年末年始やお盆の休みにして消化させる企業が出るのでは、という懸念もあります。
担当者「法定休日以外なら、そのような方法も法律上は可能です。ただ、年末年始の休暇を就業規則などに盛り込んでいる場合、それを有休に振り替えるのは好ましくありません。今後の啓発活動の中で注意喚起していくことも検討します。また、年休の時期は、使用者が勝手に決めるのではなく、労働者の希望を聞いて決めるよう省令に盛り込む予定なので、年末年始やお盆に集中させることは考えにくいと思います」
Q.有給休暇を名目だけ取らせて、その日に仕事を割り当てたり、出勤を強いたりしても有休の消化になりますか。その場合、労働者はどうしたらよいでしょうか。
担当者「消化したことにはならないので、別の日に取っていただくことになります。労働者は、労働基準監督署の相談窓口に申告していただければと思います」
Q.義務付けは事業者の規模に関係ないのでしょうか。また、使用者と労働者の双方に「業務過多で取得が難しい」という声もありそうです。
担当者「規模は関係ありませんし、(中小企業への)猶予措置も今のところ考えていません。中小企業の中に『(人手不足などで)年休を取得させるのが難しい』という声があることは把握していますが、年間を通じて5日なので、調整をしていただければと思います」
Q.実効性を確保するために、どのような対策を考えていますか。
担当者「使用者側に罰則が付くことが担保になると思います」
「有休を取りにくい」と嘆く人たちを救う一歩になるのか、注目されます。
(報道チーム)
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