花粉症対策で鼻の中に「ワセリン」塗る人も… “肺炎”の可能性? 問題ないのか、医師に聞く
花粉症対策として、鼻の中にワセリンを塗っても問題ないのでしょうか。医師に聞きました。

この春、スギやヒノキによる花粉症に悩んでいる人も多いと思います。そんな中、花粉症対策として、鼻の中にワセリンを塗る人がいるようで、SNS上では「花粉症が軽減した」「鼻の中に塗るとだいぶ違う」などの声が上がっています。鼻の中にワセリンを塗っても、本当に問題ないのでしょうか。
TCB東京中央美容外科 新宿西口院院長 兼 TCBの上級指導医として、鼻の中にボトックスを浸透させ、鼻水や鼻詰まりといった症状を緩和させる治療法「花粉症ボトックス治療」などを行う、村田大典(むらた・だいすけ)医師に聞きました。
子どもや高齢者には推奨せず
Q.花粉症対策として、鼻の中にワセリンを塗る人がいるようですが、問題はないのでしょうか。注意点について、教えてください。
村田さん「ワセリンは安価でとても肌に優しく、さまざまな用途に使える優秀な製品です。基本的に、体のどの部分に使っても問題はありませんが、鼻の中に塗った後、長時間放置するのは好ましくありません。なぜなら、油が肺の中にたまると、肺炎の一種である『リポイド肺炎』を発症する可能性があるからです。
リポイド肺炎は、ワセリンやパラフィンといった薬剤に含まれる油脂のほか、牛乳の慢性的な誤嚥(ごえん)などによって引き起こされます。従って、お子さんや飲食物を飲み込む機能が弱った高齢者は、鼻の中にワセリンを塗るのを避けた方がよいでしょう」
Q.では、花粉症対策として鼻の中にワセリンを塗るのは、お勧めしないということでしょうか。
村田さん「ワセリンを鼻の中に塗ると、数時間から10時間ほど花粉の侵入を防ぐことが可能だと思います。その意味では、多少の効果があるかもしれません。
ただ、先述の通り、鼻の中にワセリンを塗るとリポイド肺炎の原因となる可能性があります。特にお子さんや高齢者のように、リポイド肺炎の発症リスクが高い人は、鼻の中にワセリンを塗るのを避けた方がよいです。
花粉症の治療や予防には、エビデンスがあって効果が高く、ワセリンよりもリスクの少ない方法が他にもたくさんあります。リスクを負ってまで、試す必要はないでしょう」
Q.「鼻血が出た」など、鼻の中に傷があるときにワセリンを塗ることがあるようですが、問題はないのでしょうか。それとも、避けた方がよいのでしょうか。
村田さん「鼻血の対処法は、基本的に圧迫することです。ワセリン単体では止血効果を望めませんが、粘膜を傷つけないようにワセリンを塗った綿球やガーゼを詰めて出血部位を圧迫するのは、効果的です。
また鼻の中以外であれば、ワセリンで傷口を覆って保湿、保護することで、傷口の乾燥が防げます。それにより、細胞の再生を促進する成分を含む液が出るようになるため、傷を早くきれいに治すことも期待できます」
Q.もし鼻の中にワセリンを塗った場合、鼻うがいなどで洗い流した方がよいのでしょうか。ワセリンを塗った後の対処法について、教えてください。
村田さん「塗った後はしっかり洗い流してください。ワセリンを塗る場合は、洗顔で洗い流せるように鼻の奥でなく、鼻の穴の周辺に塗るようにしましょう。ワセリンの成分は油なので、一般的なメイク落としのクレンジングや洗顔料で十分に落とすことができます。洗い残しのないようにしっかり洗顔しましょう」
(オトナンサー編集部)
コメント