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腰痛が悪化? デスクワークに便利な「座椅子」、長時間使う危険性は? 理学療法士に聞く

座椅子を長時間使うと、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。理学療法士に聞きました。

長時間座椅子に座ると、どうなる?
長時間座椅子に座ると、どうなる?

 自宅でデスクワークやゲームなどをする際に、座椅子を使っている人も多いのではないでしょうか。座椅子は手軽に持ち運びができ、比較的狭い場所でも使うことができるのがメリットですが、中には使用中に腰を痛めた人もいるようです。座椅子に長時間座り続けた場合、一般的な椅子に比べて、体にどのような負担がかかるのでしょうか。理学療法士の岡田雄一郎(おかだ・ゆういちろう)さんに聞きました。

腰痛、骨盤のゆがみに注意

Q.そもそも、デスクワークなどで座椅子に長時間座る生活を続けた場合、どのような症状が出る可能性があるのでしょうか。

岡田さん「椅子にも共通する話ですが、長時間座り続ける習慣があると、以下の5つの健康問題が発生する可能性があります」

(1)肩こりや首の痛み
座っている姿勢は体幹の力が入りにくいため、猫背の姿勢になり、頭が前に飛び出したような姿勢になります。頭の重さは体重の約10%(体重50キロだと約5キロ)といわれていますが、首を約15度傾けると首・肩には約2倍の重さがかかります。そのような姿勢でデスクワークなどを長時間続けると、肩や首の筋肉が緊張し、血流が悪くなります。その結果、肩こりや首の痛みが生じることがあります。

(2)腰痛
前傾姿勢で座ることで、腰の筋肉が伸ばされた状態で上半身を支えることになり、腰への負担が大きくなります。座っているときの腰への負担は、立っているときの約2倍といわれています。長時間座りっ放しということは、腰の筋肉に力が入りっ放しの状態で血流も悪くなり、腰痛につながります。

(3)柔軟性の低下
同じ姿勢が続くことで筋肉が凝り固まり、柔軟性が低下します。

(4)肥満
座りっ放しの生活は、運動不足につながるため、体重増加のリスクが高まります。また体幹の筋力が落ちると代謝も悪くなってしまうため、エネルギー消費量が下がり、体重増加につながります。

(5)血行不良
座り姿勢は股関節が曲がっている状態であり、股関節前にある太い血管を圧迫し血流が悪くなります。また、下半身の筋肉を使わないため血液が下半身にたまり、むくみの原因になります。

Q.では、椅子と座椅子とでは、体にかかる負担はどう違うのでしょうか。

岡田さん「椅子は、座椅子に比べて血液がより下の方にたまるようになるので、むくみを感じやすくなります。血行不良が続くと静脈瘤(りゅう)や血栓症のリスクが高まることがあるほか、足を組んで座ると、骨盤がゆがむ原因となります。

座椅子の場合は、椅子に比べて骨盤が後ろに倒れやすく、腰への負担が高くなります。お姉さん座りのような横座りの状態では骨盤のゆがみにもつながるほか、あぐらは膝に負担がかかります」

Q.仕事でどうしても長時間座ることが多い場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

岡田さん「最低でも1時間おきに椅子から立ち上がり、ストレッチなどで体を動かし、足にたまった血液を流しましょう。また、体幹に力を入れるようにしてください。

在宅勤務の場合は、まずあおむけになり、足にたまった血液を流すようにします。その際、足首を曲げ伸ばす動作を繰り返すと、ふくらはぎが効果的に血液を流してくれます。足にたまった血液を流した後は、股関節を動かしたり、上半身の伸びをしたり、ストレッチを行ったりしてください。その後、真っすぐ姿勢よく立ち、その状態で呼吸することで体幹の筋肉は刺激され、体幹が安定します。体をほぐし、体幹を安定させてから仕事に戻るようにしましょう。

座椅子の場合は、尻の後ろ半分にクッションを入れることで骨盤を立たせ、腰への負担を減らすことができます。また、市販の正座椅子のような小さい椅子に変えることで、体への負担は軽減されます」

Q.長時間座椅子を使っている人が、使用する機会を減らした場合、どのような効果が期待できるのでしょうか。

岡田さん「座椅子の使用時に出やすい症状は、圧倒的に腰痛です。単純に座る時間を減らすだけで、腰痛の頻度が低くなるケースが多いです。さらにストレッチや運動で下半身の柔軟性を良くしたり、体幹を刺激したりすることで、腰痛の症状を緩和させることができます」

(オトナンサー編集部)

【要注意】座りっ放しで生じる可能性がある危険な症状 写真4枚で分かりやすく解説!

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岡田雄一郎(おかだ・ゆういちろう)

理学療法士/ピラティススタジオ「VITARISE」代表

理学療法士として延べ2万人の治療経験から、姿勢が体に与える影響の重要性に気付き、姿勢改善に効果的なエクササイズを行えるピラティスの世界へ。整形外科・医療グループと提携し、大阪本町にピラティススタジオをオープン。「姿勢改善で日本の健康寿命を延ばす」ことをミッションに、より効果的かつ安全なレッスンに努めている。ピラティススタジオ「VITARISE」(https://vitarise.jp/)。

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