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家の壁から突然“キノコ”が生えてきた…!?「びっくり」「たくましい」、専門家に聞く

家の壁などから突然「キノコ」が生えてくる現象がSNS上で話題に。「びっくり」「たくましい」などの声が上がっていますが、家の中にキノコが生える原因や、その対処法とはどのようなものでしょうか。

壁からキノコがひょっこり=ハヨセナ(@chopitarou)さん提供
壁からキノコがひょっこり=ハヨセナ(@chopitarou)さん提供

 家の壁に「キノコ」が生える現象について先日、SNS上で話題になりました。体験談によると、一般的な住宅の壁や天井、バスルームなどから突然、キノコが生えてくることがあるといい、中には壁紙を突き破ったり、雨漏り後に押し入れの中に生えたりするケースがあるとのこと。SNS上では「びっくり」「昔住んでいた家で生えたことある」「湿気のせい?」「キノコたくましいな」など、さまざまな声が上がっています。

 家の中に突然、キノコが生えてくるのはどうしてでしょうか。オトナンサー編集部では、日本きのこ学会の吹春俊光さん(野生きのこ担当・千葉県立中央博物館研究員)に聞きました。

家屋腐敗の危険信号、人体に影響なし

Q.住宅の壁やバスルームなどにキノコが生える原因について教えてください。

吹春さん「家の材木から発生するのは『木材腐朽菌』と呼ばれるキノコです。キノコは乾燥した場所には生えない(生えにくい)ため、住居内に生えた場合『排水が悪い』『水道などからの水漏れ』『雨漏り』『日常的に水がかかる環境』などが原因と思われます。水分が過剰になると、キノコだけでなくシロアリ類の標的にもなり危険です。

ただし、水分自体は、キノコにとっての栄養分ではありません。キノコが栄養とするのは木材や畳などの有機物です。キノコは、木材の主成分であるリグニンやセルロース、ヘミセルロースなどを分解する酵素を持っており、難分解性とされるリグニンのような木材の成分を分解し『栄養』とすることができるのです。一般的にキノコが『森の掃除屋さん』と呼ばれるのにはそのような理由があり、森の中に降り積もった落ち葉や倒木を大昔から分解する役割を果たしてきました。

森を伐採し、人が家を建てた後も、木材でできた家屋を分解することはキノコにとって得意なことであり、何の不思議もありません。その分解を阻止するために、人は家屋に屋根をつけ、雨どいで排水をよくし、下水を掘って家を湿気から守るように心がけてきたのです。乾燥した場所では、カビも含めてキノコはなかなか成長することができません」

Q.画像にある、壁を突き破って生えているキノコの種類は何でしょうか。

吹春さん「これは『キララタケ』あるいは『コキララタケ』と呼ばれるナヨタケ科のキノコです。この2種は顕微鏡を使うことで区別できます。倒木などにみられる種類で、森の中に生える『モイワラン』や『サイハイラン』など、ラン科植物に栄養を供給していることでも知られる強力な木材腐朽菌です。森の中では倒木などを分解するのが仕事です」

Q.家の中に生えやすい種類のキノコもあるのでしょうか。

吹春さん「キララタケなどヒトヨタケ類のキノコは、家屋の木材部分の他、雨漏りした後の畳(ワラとイグサで作られた本物の畳)などからもよく発生します。また、マンションの屋根に『スエヒロタケ』、家の中の水場近くに『ヒトヨタケ』の仲間、一般住宅のバルコニーの防水シート(立ち上がり)に『キクラゲ』類など、木材や植物成分を分解する性質のあるキノコがよく発生します。

風呂場や洗面所、ベランダなど、水と関係する場所が多く、すべて排水が悪かったり、風通しが悪かったりすることが、キノコ発生の引き金になっています。木材腐朽菌の中には『ナミダタケ』という、家を腐らせる王様のようなキノコがあります。ネット上で画像検索をすると、恐ろしい画像がたくさん紹介されています」

Q.家の中でキノコが生えた場合、人体やペットに害はありますか。

吹春さん「家の材木から発生する木材腐朽菌には、ほ乳類に直接の害を与えるものはほとんどありません。キノコの中には毒性を持ったものもありますが、家屋から発生するものはほとんど思い当たりません。菌類がほ乳類の体内で繁殖するためには、37度前後で生育できること(ほとんどのキノコ・カビは30度で生育しなくなる)、タンパクの分解酵素を持っていることなどが必須条件になります。また、動物に被害を与える病原菌と呼ばれるものは、生きている動物であればその動物の免疫系をクリアして侵入できる能力が必要とされます。通常のキノコ類には、生きた動物に直接アタックする能力はありません。あくまで、森の中で死んだ植物を分解するのがキノコの役割です。

また、よく『胞子が飛散して害があるのではないか』という質問もありますが、大気中にはキノコよりもはるかに大量のカビの胞子が舞っています。たとえ目の前のキノコが猛毒であっても、その胞子を吸い込んで中毒を起こすことはまずありません。ただし、例えばキノコ栽培を職業とし、大量の胞子を毎日吸い込むような仕事をされている方には、まれにアレルギー症状などが見られるようですが、大量のキノコと密室に同時に閉じ込められなければ、そのようなことは起こりません」

Q.キノコとカビの違いは何でしょうか。

吹春さん「キノコの本体は『カビ』です。カビとは、糸状に伸びて広がる菌糸の様子を指しているので、広義でキノコもカビの仲間です。『コウジカビ』やペニシリンなどを作るカビは、一般的な意味でグループがやや異なりますが、どちらも4億年以上前に陸上へと進出し、同じ祖先を持つ菌類が陸上で多様化を果たした菌類の仲間です。キノコもカビも胞子で増えますが、胞子をつくる器官(キノコと呼ばれる部分)が、肉眼的なサイズに大きくなったものを便宜的にキノコと呼んでいます」

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