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「母役」「老け役」で苦戦するのに…朝ドラはなぜ“10代主演”にこだわるのか?

「リスクより役のイメージ重視」の挑戦

「わろてんか」の後藤高久・チーフプロデューサーは葵さんの起用理由に、「いつも笑っている役なので笑顔の素敵な人を選びたかった」「フレッシュでありながらも、19歳にしてはすごく落ち着いている」を挙げていました。

 一方、「べっぴんさん」の三鬼一希・チーフプロデューサーは芳根さんの起用理由に、「愛くるしい印象を目にして、我々がイメージしているすみれにピッタリだと思った」「オーディションを重ねるうちに、芳根さんの(愛らしい)外見とは裏腹に中身の芯の強さ、まっすぐさ、健気さを見せてもらった」を挙げていました。

 これらのコメントから、ともに「10代が母親役や老け役を演じるリスクよりも、キャラクターのイメージに合うかどうかを優先している」ことがわかります。引いては、「視聴率が好調なこともあって、現在の朝ドラはこのようなリスク覚悟の挑戦ができる」とも言えるでしょう。

 また、近年の朝ドラは、「ひよっこ」の有村架純さん、「とと姉ちゃん」の高畑充希さん、「あさが来た」の波瑠さん、「花子とアン」の吉高由里子さん、「ごちそうさん」の杏さん、「梅ちゃん先生」の堀北真希さんなど、すでにある程度の知名度と実績を持つ女優が起用され続けてきました。

 しかし、もともと朝ドラは、無名のヒロインを抜てきしてきた歴史が長く、視聴者にとっても「役だけでなく、若手俳優の成長も見守る」という楽しみがあったのです。葵さんや芳根さんら10代女優の起用は、そんな「朝ドラの古き良き伝統を守っていこう」という意志表示でもあるのでしょう。

 どんな理由があるにしても、制作サイドにしてみれば、「この子なら絶対に大丈夫」という確信はなく、チャレンジングなキャスティングであることに違いありません。10~20代を演じるドラマ前半は期待通りでも、30代以降を演じる後半の演技はまったくの未知数。「できるんじゃないかな」「きっとできる」。そんな制作サイドの大きな期待に葵さんは応えられるのか。残り2カ月あまりの放送は、10代女優の演じる老け役に注目してみてください。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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