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福原遥、新朝ドラ「舞いあがれ!」困難に打ち勝つヒロインの“昇華”に期待 脚本・桑原亮子と“最強タッグ”

福原遥さんが主演を務める2022年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」が、いよいよ10月3日からスタート! 福原さんがパイロットを目指すヒロインをどう演じ、視聴者を楽しませてくれるのか……期待が掛かります。

福原遥さん
福原遥さん

 俳優の福原遥さんが主演を務める2022年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」が、いよいよ10月3日からスタートします。本作は、同局のFMシアターで2017年に放送された「冬の曳航」で文化庁芸術祭・優秀賞を受賞した桑原亮子さんが脚本を務めるオリジナル作で、東大阪や長崎の五島列島を舞台に、ヒロインの岩倉舞(福原さん)がパイロットを目指して奮闘する様を描きます。

桑原作品は“他者を尊重する”がテーマ

 桑原さんは脚本家として長年、ラジオドラマで活躍。2013年に「星と絵葉書」で「創作ラジオドラマ大賞」奨励賞を受賞。翌年、NHK大阪放送局主催の「夏の午後、湾は光り、」で「BKラジオドラマ脚本賞」最優秀賞を受賞し、プロの脚本家としての道を歩むことに。「冬の曳航」で文化庁芸術祭・優秀賞を受賞したことをきっかけに注目を浴びるようになりました。

 その名を世間に知らしめたのは、自身初となる連続テレビの脚本を手がけた「心の傷を癒すということ」(NHK)。同作は阪神・淡路大震災発生時に自身も被災しながら被災者の心のケアに努め、PTSD(心的外傷後ストレス障害)治療の先駆者としても知られる精神科医・安克昌さんの半生を描いたヒューマンドラマです。

 生き残った罪悪感から心のバランスを崩す人々、現実を真正面から受け止められず“地震ごっこ”に興じる子どもたち、神戸が被災した理由を「バチが当たったから」と結論づけ、えも言われぬ不安から逃れようとする他県の人……。桑原さんは、精神科医である主人公の目線から、震災に対するさまざまな反応を冷静かつ丁寧に捉えました。

 実は彼女自身も中学生当時、兵庫県西宮市で被災。それまでの日常が理不尽に奪われたことによる心のダメージは簡単に癒えるものではないことを知っている一人です。だからこそ、桑原さんは主人公を被災者を救うヒーローのような存在として描くことはしませんでした。主人公ができるのは、精神科医として被災者の心に寄り添うことだけ。誰かの心を救うのはその人自身に本来備わっている強さと、周囲の人々の優しさであることを主人公と被災者の交流から映し出すドラマでした。

 そして、桑原さんが描く物語にはどれも“他者を尊重する”というテーマが根底にあるのではないでしょうか。例えば、「心の傷を癒すということ」の主人公は幼い頃に自分が在日韓国人であることを知り、自分は何者であるのかを自問自答した過去があります。「弱いってええことやで。弱いから他の人の弱いとこが分かって助け合える」というセリフがあるように、そうした経験があるからこそ、彼は自分じゃない誰かの心に深く寄り添うことができたのかもしれません。

 同じく桑原さんが手がけたドラマ「彼女が成仏できない理由」(NHK)でも漫画家を目指してミャンマーから来日した留学生の青年と、その部屋に住む幽霊の女性を中心に、さまざまな違いを乗り越えて心を通わせていく人々が描かれています。自分の弱さも相手の弱さも受け入れ、補い合う“相互扶助”の関係を作中で築き上げる桑原さん。それは彼女自身がハンディキャップを背負っていることも一つの理由なのでしょう。

 桑原さんは幼い頃に感音性難聴と診断され、それを補うために弁護士の資格取得を目指すも難聴が悪化。20歳の頃に両耳の聴力を失い、弁護士の夢を諦めていた頃に文学の世界に出会ったそうです。2017年に出演したラジオで、桑原さんは「目標とか、なりたいものとかがあるならきっと、自分だけのアプローチの仕方っていうのが絶対見つかると思うんですね。なので、周りの人からちょっと無理じゃないって言われても、それに惑わされずにどこかに登る道があるはずだって、諦めずに探して欲しいと思います」と語っています。

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苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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