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「コタツがない家」ダメ夫・吉岡秀隆を憎めないワケ 最終回も“人間らしさが匂い立つ”演技に注目

小池栄子さん主演の連続ドラマ「コタツがない家」(日本テレビ系、水曜午後10時)が12月20日、ついに最終回を迎えます。同作で主人公の夫・悠作を演じる吉岡秀隆さんの魅力に迫ります。

「ALWAYS 三丁目の夕日」茶川竜之介、「Dr.コトー診療所」五島健助の“共通点”

吉岡秀隆さん(2003年06月撮影、時事)
吉岡秀隆さん(2003年06月撮影、時事)

 俳優の小池栄子さん主演の連続ドラマ「コタツがない家」(日本テレビ系、水曜午後10時)が12月20日、ついに最終回を迎えます。本作は、小池さん演じる、会社社長兼カリスマウエディングプランナーの深堀万里江が、夫・息子・父という3人のダメ男たちと新しい家族の形を模索していくホームコメディーで、大いに笑って、たまにホロっと泣ける一家のやり取りが、視聴者から評判になっています。

 脚本は、2019年に放送された連続ドラマ「俺の話は長い」(日本テレビ系)で優れたテレビドラマの脚本作家に与えられる「向田邦子賞」を受賞した金子茂樹さんが担当。ユーモラスなセリフ回しはもちろん、キャスティングの妙も光っています。中でも、“ハマり役”との呼び声が高いのが、万里江の夫・悠作を演じる俳優の吉岡秀隆さんです。

 廃業寸前の売れない漫画家というキャラクターの悠作は、10年以上も仕事をしていない実質ニートという状態にも関わらず、家事もせず、ひたすら“ぐうたら”します。言い訳ばかりで何も行動を起こそうとしない割に、自分のファンだという若い女性には前のめりになるなど、側から見れば「なんで離婚しないの?」と万里江に言いたくなるような夫。しかし、なぜか憎めないのは、吉岡さんが演じているというのが大いに関係しているのではないしょうか。

 吉岡さんといえば、映画「男はつらいよ」シリーズをはじめ、「北の国から」シリーズ、「Dr.コトー診療所」(共にフジテレビ系)シリーズなど、時代を超えて人々に愛される作品に出演。特に主演映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの主人公・茶川竜之介役での演技が高く評価され、2006年と2008年に「日本アカデミー賞」で最優秀主演男優賞を獲得しています。思えば、竜之介も売れない作家でした。

 同作は、東京の下町を舞台に、竜之介が身寄りのない少年を引き取り、一人の人間として成長していく姿が描かれました。吉岡さんは他の作品でも、どこか未熟さを残した大人を演じることが多い印象を受けます。「Dr.コトー診療所」で演じた“コトー先生”こと、五島健助も医師としての優秀な腕と人柄の良さで島民の信頼を得ていきますが、決して完全無欠ではありません。のちに妻となる看護師・星野彩佳(柴咲コウ)の恋心にいつまでたっても気づかない鈍感さや、観ていて心配になるような情けない部分も持ち合わせているし、救えない命を前に葛藤することもあります。

 そのような場面で見せる、吉岡さんの演技には“人間らしさが匂い立つ”印象を持つ視聴者も多いのではないでしょうか。時に直視するのがはばかられるほどリアルだからこそ、なんだが他人事だとは思えず、その行く末を見守り続けてしまうのでしょう。

「コタツがない家」の悠作は“究極のダメ人間”とも言えますが、その“どうしようもなさ”も、ある程度は人間なら誰しも持ち合わせているものです。

 昨年12月に放送されたバラエティー番組「人志松本の酒のツマミになる話」(フジテレビ系)に出演した際には、お酒でついつい気持ちがゆるみ、「仕事場になんか、本当に行きたくないです」と本音を吐露する場面も。誰もが認める名優でありながら、そういう気取らない性格や、吉岡さんの持ち味である柔らかい笑顔も悠作の役にハマるゆえんなのかもしれません。

 最終第10話は、万里江が悠作との離婚を見事に回避し、深堀家の絆が深まるのかと思いきや、楽しいはずのクリスマスに新たな騒動の始まりを告げるゴングの鐘が鳴る……という展開です。ラストだと思うとさみしい気もしますが、「けんかするほど仲がいい」をこれ以上なく体現する万里江や悠作ら深堀家の最後の掛け合いを楽しみましょう。

(オトナンサー編集部)

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苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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