帰省は避けるべき? 都内で再び感染者増、いま私たちが心掛けるべきこと
東京都では、新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向にあります。この時期、どのようなことを心掛ければいいのでしょうか。
緊急事態宣言の解除後、新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向にありましたが、東京都では7月に入ってから再び増加しています。ネット上では「再び緊急事態宣言を発令すべきだ」「通勤が不安」と懸念する声がある一方、「検査数が増えただけでしょ」「重症者が少ないから大丈夫」といった指摘もあります。
なぜ、7月に入って都内で感染者数が急増したのでしょうか。また、感染者が再び増加している時期には、どのようなことを心掛けるべきなのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
現在は「第2波」の入り口に
Q.7月に入り、東京都では新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向にあります。なぜ、このような状況になったのでしょうか。
森さん「東京都の休業要請や警戒の呼び掛けがいったん全て解除され、人の動きが再び活発になったこと、飲食や飲酒を伴う交流機会が戻ってきたことが大きな理由と考えられます。
政府による緊急事態宣言の解除後、各施設やイベントへの休業要請は東京都独自の対策によって、段階的に緩和されてきました。6月12日にカラオケ店やパチンコ店が再開したほか、居酒屋を含む飲食店が午前0時までの営業となり、ほぼ全ての業種の休業要請が終了しました。並行して、感染状況を独自の指標によって評価し、拡大の兆候が再び見られた場合に警戒を呼びかける『東京アラート』も解除されました。
6月19日にはライブハウスや接待を伴う飲食店の営業も再開し、飲食店の営業時間の要請や、国が要請してきた都道府県をまたぐ移動制限も解除されました。こうした感染拡大防止対策の緩和によって、社会活動や経済活動が再開し、人と人との接触が増えたことで感染機会の増加につながったとみられます。
また、感染が広がるきっかけとして、『夜の街』と表現される、接待を伴う飲食店での集団感染が一つの要因であるとも考えられています。5月下旬、新宿エリアを中心とした夜の繁華街に関連した感染が増え始めました。感染対策の強化として、感染拡大エリアのホストクラブやキャバクラなどを対象に集団検査を実施し、無症状の従業員でも『PCR検査』を積極的に受けられる機会を設けました。その結果、感染確認者の大きな増加につながっています」
Q.都内で感染者が連日増加しているのは、すでに第2波が到来しているということなのでしょうか。
森さん「4月をピークとし、50代以上の感染と高齢者の重症化が顕著だった感染拡大時期を『第1波』とするならば、現在は30代以下の若年層を中心とした『第2波』の入り口にいると考えられます。東京都の1日当たりの感染確認者は7月2日に107人と2カ月ぶりに100人を超え、7月10日には過去最多の243人の感染が確認されました。
これは、PCR検査体制の拡充により1日の検査実施数が増えたことと、先述のように、感染が多数確認されている業種で『集団検査』として積極的に検査を実施していることも背景にありますが、東京都を中心に感染拡大傾向が各地に広がっていることは間違いないと思います」
Q.「感染者の半数以上は20代、30代で重症者が少ないから問題ない」「医療機関は逼迫(ひっぱく)していない」といった意見もあります。本当に、大した問題ではないのでしょうか。
森さん「そんなことはないと思います。4月の感染拡大時期と状況は異なるものの、軽視はできません。7月15日に開催された東京都の新型コロナウイルスの『モニタリング会議』によって、東京都の警戒度は4段階のうち最も深刻な『感染が拡大していると思われる』レベルに引き上げられました。
7月15日現在、東京都で確保されている病床は1000床で入院患者数は約800人、つまり、病床使用率は約80%で体制強化が急がれます。重症者は1桁の横ばいで推移し、重症者病床は100床確保されているので、数字だけを見れば確かに余裕はありますが、介護老人保健施設やデイケアで複数人の感染が確認されたり、同居の家族内感染が多く発生したりと、重症化のリスクが高い高齢者への広がりが警戒されている状況です。
医療従事者の感染も確認されているので、病院での集団感染が起これば、医療提供体制に一気に負荷がかかる可能性もあります」
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