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多すぎた振込金…使った後でも返還義務はある?

取引先から、『その金額で問題ない』と入金されましたが、後日、金額が多すぎたことが判明。しかし、その時はもう、お金を使った後で――。

金額を間違えたお金の返還義務はあるのか

 法律の専門家である弁護士が、私たちの暮らしに身近な事象についてわかりやすく解説します。今回のテーマは「金額を間違えて振り込まれたお金を返還する義務はあるのか」、取材に応じてくれたのは牧野和夫弁護士です。

「取引先から入金される際、『その金額で問題ない』と伝えられたため、そのお金を使ってしまいましたが、その後、『金額が多すぎた』と訂正されました。このような場合に、お金の返還義務は生じるのでしょうか」

「返還請求権」放棄とは考えられない

 牧野さんによると、この場合は、「法律上の根拠」がない振り込みであるため、民法上の「不当利得」として差額を返金する義務が発生します。「たとえば、消費者金融に法定利息を超えて金利を支払った場合、不当利得として過払い分が返金されるのと同じです」(牧野さん)。

 たとえ、取引先が「その金額で問題ない」と言ったとしても、それを不当利得に基づく「返還請求権」を放棄する意思表示と解釈することは難しく、返還義務が生じるとのこと。もしも、過入金であることを知っている場合は、民法上の「悪意の受益者」となるため、受けた利益に利息を上乗せして返還しなければなりません。

 それでは、返還義務があるのに、それを無視し続けた場合、どのようなペナルティーが考えられるのでしょうか。

 牧野さんによると、不当利得に基づく返還債務は、返還債権が時効で消滅するまで存在し続けます。「それを認識しながら返還しなければ、詐欺罪の容疑をかけられる可能性があります。返還要求を無視しただけで犯罪になる場合もあるため注意が必要です」。債権は、民法改正前は、過払いに気がついて請求できるようになった時点から10年以内、改正民法施行後は、5年以内に請求しなければ消滅します。

 ちなみに、会社の給与が誤って多く振り込まれた場合も同様。ただし「返還に際しては、そもそも送金者の過失によって発生した問題であり、振込手数料は、過入金した当事者が負担するのが一般的でしょう」。

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。