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視聴率調査が大幅リニューアル “個人”重視でどのテレビ局が制する?

3月30日、ビデオリサーチによるテレビ視聴率調査がリニューアルされます。業界では、これによって“一人勝ち”する局があると言われているようです。

「有吉の壁」MCの有吉弘行さん(2015年8月、時事)
「有吉の壁」MCの有吉弘行さん(2015年8月、時事)

 一般的にはあまり知られていませんが、3月30日、テレビ業界に一つの節目が訪れます。ビデオリサーチが行っている視聴率調査がリニューアルし、各地の調査数が増えるほか、全国で個人視聴率が導入されるなどの変化があるのです。

 最大のポイントは、これまでの「どれだけの世帯が見たか」を示す世帯視聴率ではなく、「性別や年齢などの項目別で誰がどれだけ見たか」を示す個人視聴率が重視されること。また、関東エリアに限らず「全国で何人が見たか」が明快になるなど、よりリアルな視聴動向が明らかになるのです。

 スポンサーが「商品のターゲット層にリーチしやすくなる」とともに、視聴者にとっても「自分の好みに合う番組が制作・放送されやすくなる」などのメリットが得られるでしょう。

 特に2010年代に入ってから、世帯視聴率は「高齢層の影響が大きすぎる」「スポンサーの意向と合わない」などの問題点が指摘されていました。実際、高視聴率を獲得しても視聴者層が高齢のため広告収入には結びつかない番組もあるなど、個人視聴率の本格導入が待望されていたのです。

 その個人視聴率の本格導入によって“一人勝ち”しそうなテレビ局があることは、業界人の中では周知のことですが、まだ一般的にはあまり知られていません。いったい、どのテレビ局が、どんな理由で「一人勝ちする」と言われているのでしょうか。

世帯視聴率でも個人視聴率でもトップ

 世帯視聴率は現在、日本テレビが5年連続で三冠(全日・ゴールデン・プライム)を獲得するなど独走状態。特にゴールデン・プライム帯にバラエティーを3~4番組並べた編成で、他局を圧倒し続けています。

 ところが、独走状態の日本テレビは昨年から、視聴率の評価基準をいち早く個人視聴率にシフト。さらにさかのぼると、2010年代に入る前から13~49歳をコアターゲットに定め、中でも「世帯視聴率をできるだけ下げずに、若年層の視聴者層を掘り起こそう」という姿勢を続けてきました。他局が目先の世帯視聴率を求めて、高齢層をベースにした番組を制作する中、明確にシフトチェンジしていたのです。

 この1年あまり、他局は「個人視聴率にシフトした日本テレビに世帯視聴率でも勝てない」という悔しい状態が続いていますが、「今春以降はさらにその差が開くのではないか」というのが業界の見方。実際、日本テレビはバラエティーもドラマも若年層が好む要素を織り交ぜ、積極的に若手タレントを起用しています。

 例えば、「THE突破ファイル」には、ぺこぱやEXITなどの若手芸人、中尾暢樹さんや高田夏帆さんなどの若手俳優を毎週キャスティングし、突破方法を当てるクイズ要素を加えていますし、「クイズ! あなたは小学5年生より賢いの?」は若年層が記憶に新しい小学生用の問題に絞りました。

 ドラマに目を向けても、「今日から俺は!!」「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」「俺のスカート、どこ行った?」などの学園ドラマを積極的に手掛け、若手俳優を大量キャスティングしています。

 そのほとんどは、世帯視聴率こそそれほど高くないものの、コアターゲットの個人視聴率で見たら及第点以上の結果を残しました。他局が手がける高齢層向けの番組が多いこともあって、おのずと差別化になり、スポンサーからの評価も上々のようなのです。

「他局も日本テレビのように変えればいいのでは」と思うかもしれませんが、これまでの出演タレントや視聴者層を突然切り捨てるわけにはいかず、スポンサーとの調整もあるなど、すぐにシフトチェンジすることは難しいでしょう。テレビ局の番組表を変えるには少なくとも年単位での改編が必要と言われることもあり、日本テレビの一人勝ちが続きそうなのです。

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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