小栗旬も織田裕二も “男がほれる男”吉田鋼太郎のラブとリスペクトの輪
硬派なだけではない、おちゃめさと浮気っぽさ
では、高倉さんと吉田さんの違いがどこにあるかといえば――。前者が「不器用」「いちず」といったキーワードで語られるのに対し、後者には硬派なだけでなく、おちゃめ、浮気っぽさのようなイメージも浮かびます。実際、吉田さんは私生活で事実婚を含めた4度の結婚歴がある「恋多き人」です。一方、高倉さんは相手側の親族のトラブルによる離婚の後、別れた妻を思いながら独身を貫きました。
吉田さんのように何度も結婚できる人は、失敗にめげないばかりか、人への好奇心が強いのだと思われます。それ故、新しい関係、新しいジャンルにも柔軟に楽しく取り組めるのでしょう。
若い頃、ドラマで自分が期待していたほどの扱いをしてもらえなかったことから、長年、テレビ嫌い(?)だったそうですが、いまや「帰れま10」(テレビ朝日系)などのバラエティーやCMでも楽しそうな姿を見かけたりします。やはり、柔軟な人なのです。
新たな取り組みといえば、彼は最近、あの年齢で乗馬を始めたそうです。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」がきっかけです。演じているのは、戦国時代の武将・松永久秀。裏切りや乗っ取り、暗殺、焼き打ちなどに手を染め「梟雄(きょうゆう)」と呼ばれました。その人間像は、徳川家康と同じ年に死去したシェークスピアが描いた歴史劇の登場人物にも通じるものです。
ちなみに、吉田さんの飲み仲間でもある藤原竜也さんはこう言っています。
「この人にシェークスピアの戯曲を演じさせたら、かなう人はいない。的確な解釈と表現と圧倒的な存在感で舞台を盛り上げる」
まさに今回の大河、そして役柄との相性は抜群といえますし、実際、第1話から大活躍でした。
主人公・明智光秀が鉄砲を買いに来たところで出会い、酒を飲むことに。酔っぱらった光秀の懐の大金だけを狙っているように見せつつ、翌朝、その姿は光秀の大金とともに消えています。
しかし、そこには「また会ハむ(会おう)」の書き置きと、光秀が求める鉄砲がちゃんと残されていた、という展開でした。梟雄と呼ばれる男が狡猾(こうかつ)さと共に持つ人たらしの才能を見せつけ、その色っぽさとかっこよさで視聴者の心もつかんだのです。
さらに、4月13日からは、月9ドラマ「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)が始まります。シリーズ第2作の目玉として登場、役どころは、織田裕二さん扮(ふん)する主人公の弁護士にとってライバルとなる大物弁護士です。
初共演となる織田さんについては、こんなコメントをしています。
「本当にいい意味で『芝居バカ』といいますか、芝居に対して、俳優をやることに対して、ものすごく熱心な印象があります。こんなにもお芝居に対して、熱心で前向きな人には、あまりお目にかからないです」
いい意味での「芝居バカ」同士、響き合うものがあるのでしょう。2人がドラマに生み出す相乗効果が楽しみです。そして、この現場でも吉田さんは、男と男のリスペクトの輪を広げていくに違いありません。
(作家・芸能評論家 宝泉薫)
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