プロ野球OP戦、新型コロナで無観客試合に 経済的損失はどれくらい?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プロ野球のオープン戦が無観客試合となりました。経済的な損失は、どの程度になるのでしょうか。

新型コロナウイルスの感染拡大は、プロ野球のオープン戦にも影響を与えています。日本野球機構(NPB)は、臨時の12球団代表者会議を2月26日に開き、2月29日から3月15日までのオープン戦全72試合、ファーム(2軍)の春季教育リーグの全試合を無観客で実施することを決めました(一部は中止)。
オープン戦が無観客試合となったことで、経済的な損失はどの程度になるのでしょうか。一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事で尚美学園大学准教授の江頭満正さんに聞きました。
無観客72試合に108万人超が来場?
Q.そもそも、オープン戦を実施する目的や意義は。
江頭さん「オープン戦には3つの役割があります。1つ目は、選手が公式戦に向けてコンディションを調整することです。もう少し詳しく説明すると、(1)主力選手が試合感覚を取り戻す(2)球団内の紅白戦とは異なった緊張感(初対面の選手など)がある環境で試合をする(3)練習ではなく試合開始時間に向けてコンディションを調整する――などの目的があります。
2つ目として、オープン戦は、2軍に所属する選手が首脳陣にアピールして昇格する機会にもなります。昨年、2軍にいた打者は、1軍の投手相手に結果を残そうと必死になっています。3つ目は、キャンプ地のファンやメディアに対して新人選手やチームの体制を具体的に見せる、いわば『顔見世』の役割があります」
Q.なぜ、キャンプやオープン戦を地方で多く行うのでしょうか。また、開催地の経済効果はどの程度なのですか。
江頭さん「プロ野球チームのキャンプやオープン戦が行われる沖縄では、県外からの観光客も増加し、りゅうぎん総合研究所(那覇市)によると、2019年は141億3100万円の経済波及効果がありました。昨年、首里城が火災に遭った沖縄県にとって、プロ野球のキャンプやオープン戦は大事な観光資源と思われます。
なお、2月29日以降、沖縄でオープン戦の開催予定はなく、沖縄に関しては今回の無観客試合決定でのダメージは少ないと思われます」
Q.2月29日以降のオープン戦がすべて無観客試合となりました。経済的な損失はどの程度になるのでしょうか。
江頭さん「2019年のオープン戦の観客数から類推すると、無観客試合となった72試合での観客総数は108万人を超えると予想されます。この観客数を基に損失額を算出すると、141億4000万円程度です。
この金額は来場者の入場料、宿泊費、交通費、飲食費などに限定されており、オープン戦を開催するための球場使用料や警備費用などは含まれていません。そうした費用も含めると、損失額はさらに増えるのではないでしょうか」
Q.観客だけでなく選手間の感染拡大なども考慮して、オープン戦そのものが中止となる可能性はあるのでしょうか。もし中止となった場合、どのような影響があると思われますか。
江頭さん「日本プロ野球機構は、公式戦を万全の状態で開幕することを最優先に考えているようです。オープン戦そのものが中止になる可能性は低いと思われますが、選手やコーチの間で感染者が出たら事態は変わってくるでしょう。感染が確認された場合、選手やコーチを隔離状態にする取り組みが行われるかもしれません。
例えば、選手やコーチを合宿所などに集めてゆるやかな隔離環境をつくり、練習を続けることなどです。過去に例はありませんが、そうした環境は準備できますので、実施される可能性はあると思います」
Q.プロ野球の公式戦は3月20日から始まる予定ですが、延期される可能性はあるのでしょうか。延期となった場合の経済的な影響はどの程度になりますか。
江頭さん「3月20日に公式戦を開幕できるかどうかは、新型コロナウイルスの状況次第でしょう。今年は東京五輪・パラリンピックの開催で変則日程が組まれているため、もし延期にした場合、日程を短縮するなど抜本的な対策を講じる必要があるでしょう。
例年、ペナントレース(公式戦)は143試合行われています。そのうち、セ・リーグとパ・リーグに分かれて行うリーグ戦(各リーグ6チーム)は125試合、セ・リーグとパ・リーグのチームが対戦する「セ・パ交流戦」は18試合あります。
リーグ戦では、1チームは他チーム(5チーム)と25試合ずつ行います。例えば、1チーム当たりの対戦数を3試合減らし、22試合にすると合計128試合になり、4月10日に開幕しても、予定通りの日程で日本シリーズを開催できることになります。プロ野球の歴史では異例のことですが、こうした方法も検討する必要があるのではないでしょうか」
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