「こたつで寝ると風邪をひく」、猫には当てはまる? そもそも、猫の風邪とは…
先日配信した、こたつと風邪の関係に関する記事に「こたつで寝ている猫は風邪をひかないのだろうか」というコメントを頂きました。そもそも、猫は風邪をひくのでしょうか。
きょう2月22日は「猫の日」です。先日配信した記事「昔からいわれる『こたつで寝ると風邪をひく』、本当のところは?」(2月2日配信)に対し、「では、こたつで寝ている猫は風邪をひかないのだろうか」という趣旨のコメントを頂きましたが、そもそも、猫は風邪をひくのでしょうか。そうだとすれば、人間の風邪がうつったり、その逆があったりするのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。
「猫風邪」は命に関わることも
Q.猫も風邪をひくのでしょうか。その原因と症状も含めて教えてください。
増田さん「一般に風邪とは、感冒症候群のことをいい、くしゃみ、鼻水、発熱、全身のだるさなどの症状を引き起こす感染症のことを指します。原因となる病原体は、ウイルス由来のものや細菌由来のものなどがあります。
猫の場合、有名なところでは『猫ウイルス性鼻気管炎』という感染症があります。ヘルペスウイルスが原因で、一般に『猫風邪』と呼ばれます。その通称の通り、くしゃみや鼻水が主な症状ですが、それ以外に目に結膜炎を起こすことがあります。鼻が詰まると味覚や食欲に直結するので、体力の弱い猫、特に子猫の場合は衰弱を引き起こし、命を落とすこともあります。
これ以外で風邪症状を起こすものとして、『猫カリシウイルス感染症』『猫クラミジア感染症』などがあります。このうち猫カリシウイルス感染症では、風邪症状のほかに、舌に大きな潰瘍をつくることがあるため、何か食べようとするたびに口に痛みが生じることから、食欲の低下に拍車をかけてしまうことがあります。
このように猫の風邪を生じるものには、いくつかの原因がありますが、ヒトと比べて重症化しやすいことが特徴で、適切な治療を行わないと命にかかわることがあるので注意が必要です」
Q.完全室内飼いの猫の場合でも、風邪症状を起こす感染症にかかることはあるのでしょうか。
増田さん「猫に風邪症状を起こす病原体の多くは『飛沫(ひまつ)感染』と呼ばれる感染方法をとります。ウイルスの含まれたくしゃみや鼻水、目やにといったものにより、他の猫に感染することがあります。従って、屋外に出る猫で感染や発症のリスクが高まります。
しかしながら、感染した猫と接触するリスクが低い室内飼育の猫でも、注意が必要です。飼い主がウイルスを運んでしまう場合があるためです。他の猫に触れた後、手洗いをしないで家庭の猫を触る行為は感染の危険性を生みます。猫に明らかな風邪症状がなくても、体内にウイルスを保有していることがあります。また、空気感染することが知られているので、室内飼育=安全とは断言できません」
Q.猫の風邪が人間にうつったり、人間の風邪が猫にうつったりすることはあるのでしょうか。
増田さん「猫が風邪をひいた、あるいは飼い主さんが風邪をひいた際に多くのお尋ねを頂きます。それだけ、ご心配されている裏付けだと思います。
ヒトにもヘルペスウイルスが関連した感染症がありますが、猫に風邪症状を起こすヘルペスウイルスがヒトに感染することはありません。また、ヒトに風邪症状を起こす病原体は原則、猫に影響を与えることもないと考えられています」
Q.ちなみに、インフルエンザや新型肺炎はどうでしょうか。
増田さん「いずれも人間に対する脅威として注目されているので、ヒトから猫へ、あるいは猫からヒトへ感染することを心配されている方もいらっしゃるかと思います。
インフルエンザですが、極めて少ないものの、猫からヒトに感染した事例が海外で報告されています。2016年にH7N2型のインフルエンザウイルスが猫に感染し、それがヒトに感染したというものです。
ただ、日本で現在流行しているウイルスとは異なるので、今すぐ脅威となるものではありません。実際は、猫にインフルエンザが感染するリスクは極めて低いというのが現状です。
一方、中国本土を中心に猛威を振るっている新型コロナウイルスについて、現在のAVMA(アメリカ獣医師会)やWSAVA(世界小動物獣医学会)の見解をご紹介します。犬や猫にもコロナウイルスは感染するものの種を超えて感染しないため、ヒトから猫、猫からヒトへの感染はないとされています。
つまり、猫のコロナウイルスは猫にのみ感染し、新型コロナウイルスはヒトの間でのみ感染するということです。新型コロナウイルスが、感染者からペットを介して他のヒトへ感染する可能性も現時点で否定されています。つまり、外に出た猫が新型コロナウイルスに感染して、それを持ち帰ってヒトに伝染させることもないと見られています」
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