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瀬木直貴監督、川栄李奈の“想定外の芝居”を絶賛「彼女は全然違うところに行きます」

川栄李奈さんの初主演映画「恋のしずく」の瀬木直貴監督に単独インタビュー。日本酒を題材にした理由や川栄さんの魅力などを聞きました。

瀬木直貴監督
瀬木直貴監督

 女優・川栄李奈さんの初主演映画「恋のしずく」でメガホンを取った、瀬木直貴監督。同作は、東京の農大でワインソムリエを目指す日本酒嫌いの橘詩織(川栄さん)ですが、研修先が日本酒の酒蔵に決まってしまいます。しかし、蔵元の輝義(大杉漣さん)や輝義と折り合いの悪い息子の莞爾(小野塚勇人さん)、杜氏の坪島(小市慢太郎さん)、詩織に親身になってくれる美咲(宮地真緒さん)らと出会い…というストーリーの「酒造りと恋」の映画です。

 オトナンサー編集部では、瀬木監督に単独インタビューを実施。日本酒を題材にした理由や川栄さんの魅力、大杉漣さんとの思い出などを聞きました。

神様が降りてきて酒になった

Q.日本酒を題材にした映画を撮った理由は何ですか。

瀬木監督(以下敬称略)「『ラーメン侍』『カラアゲ★USA』など食べ物をフィーチャーした映画を撮る機会があり、ラーメンにしても唐揚げにしても、B級グルメの代表格だと思うのですが、和食なんですね。和食をもう少し極めてみたいなと思って、太古の昔からあるものと考えたら日本酒に行き着きました。お酒好きというのもあります。

『風土記』やさまざまな書物に、酒についての記述が出てくるのですが、米と水という、日本の自然環境のエッセンスとも言われる素材を使って、そこに神様が降りてきて酒になったという発想で、それが面白いなと思い勉強しました」

Q.お酒が好きな人でも、そこまで調べる人は少ないのでは。

瀬木「映画を意識して調べたわけではありません。これまでの映画はオリジナルストーリーで、オールロケで撮ることをモットーにしています。場所に出会って、風紀を見たり、いろいろなものを五感で楽しみ、現地の人と交流したりすることで企画やストーリーができていくというアプローチです。場面に行って初めて出てくる発想です」

Q.日本各地に酒蔵は多数ありますが、西条に決めた理由は。

瀬木「駅前に7つの蔵が凝縮し、受け継がれているのはここだけだというのが一つ。もう一つは、観光化されていないところ。一般の生活と酒蔵が渾然一体となっているところというか、生活の中に酒蔵がある感じがして感銘を受けました。

地域の若い経営者たちと交流する機会があり、全ての人たちが酒蔵に関わっているわけではないのに、酒で情報発信したい、土地を盛り上げたい、という熱量が大きかったです。映画を一から立ち上げて成就させるのはエネルギーが要りますが、西条の皆さんとならばできると思い、決めました」

Q.川栄さんの魅力とは何でしょうか。 

瀬木「出演作を見て、憑依(ひょうい)型だろうと思っていました。お会いして話してみると、理解できたのか理解できてないのかよく分からない感じでしたが、演技させてみると、弾ける感じで素晴らしいお芝居を見せてくれます。

演出家は本当に彼女を高く評価していて、演技に対するアプローチが非常にユニークです。彼女がどうアプローチしているか分かりませんが、外から見ていると、明らかに違う。想定内の芝居をしてくると、監督は『つまらない』と思ってしまいます。彼女は全然違うところに行きます。想定外の芝居をしてきてそれが見ていて面白いです」

Q.大杉漣さんの現場でのエピソードを教えてください。

瀬木「散歩が好きと聞いていて、待ち時間には散歩に出かけていました。散歩にも意味があるんだろうと聞いてみたら、『輝義という役は65年間、この街で生まれ育って生きてきているから、65年間何を見てどんな空気を吸ったか、演技の参考になるかもしれない』とおっしゃっていました。

それが現場以外で交わした最後の言葉でした。プロの役者としては、あえていうと当然のことかもしれませんが、それをサラッと自然に言うところに、彼の人間としての度量や優しさを感じました」

Q.日本酒に関するエピソードはありますか。

瀬木「杜氏さんに、料理と酒を彼のチョイスで出してもらいました。お酒と料理を口の中で合わせた時に、すごい旨みが出てくるんですよね。それに感動しました。そういう時は飲みすぎるのですが全然残りませんでした。食べ物を楽しむためにある気がするんです。そういう体験は初めてでした」

 映画「恋のしずく」は10月20日から全国公開。

(エンタメチーム)

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