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料理のキツイ臭いが近所に漏れ…「問題ない」「訴えるレベル」と議論に、法的問題は?

料理の強い臭いが隣家や近所に漏れ、トラブルに発展するケースがあるようです。料理を作った側に法的問題はあるのでしょうか。

料理の臭いが隣家に…法的問題は?
料理の臭いが隣家に…法的問題は?

「臭いのキツイ料理を作るのは近所迷惑なのか」。ネット上で先日、このような議論が行われました。豚骨スープのように独特の強い臭いがする料理を作った際、換気口などを通じて隣家や近所に臭いが漏れ、クレームやトラブルに発展するケースがあるようです。

 ネット上では、「豚骨は無理」「煙は迷惑かもしれないけど、臭いは問題ないのでは」「住宅街では控えるべき」「訴えてもよいレベル」など、さまざまな声が上がっています。料理の臭いを巡る法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

被害のレベルが「受忍限度」を超えているか

Q.臭いの強い料理を作る行為に法的問題はありますか。

牧野さん「臭いや煙などの被害を受けた人は、一定の条件を満たせば、臭いや煙を発生させている人や会社に対して、人格権の侵害を根拠に民事上の不法行為責任を追及することができます。

人格権侵害の不法行為責任を追及するには、被害のレベルが『受忍限度(我慢すべきレベル)』を超えていることが必要です。裁判所は、受忍限度を超えているかどうかの判断基準として、以下の4つを総合的に判断するとしています」

(1)被害の性質:健康被害の有無
(2)程度・態様:悪臭の大きさ・時間帯・頻度・継続性(一般常識から大きく外れたものは、受忍限度を超えたと判断される可能性が高くなる)
(3)加害行為の公益性の有無:加害者が病院、学校など公共性を持つかどうか
(4)回避可能性:悪臭クレームに対する対応(防臭設備を付けるなど)の有無

Q.こうした行為は、どの程度であれば、法的問題に発展しうるのでしょうか。

牧野さん「悪臭かどうかは人によって感じ方が異なります。基準を明確にするために、悪臭防止法に基づき『受忍限度』として各地域における臭気指数による規制値が定められています。東京都の場合は、地域を『住宅地域』『商業地域』『工業地域』の3つに分け、それぞれ臭気指数による規制値を定めています。

クレームを行うためには、まずは『受忍限度』を超えていることを、臭気センサーや臭いセンサーなどの計測器によって測定、定量化(数字化)する必要があります」

Q.隣家から料理の強い臭いが漏れ、何らかの害を被った場合、法的手段に訴えられますか。

牧野さん「『受忍限度』を超えている場合は不法行為(民法709条)に該当し、被害者は加害者に精神的、経済的な損害の賠償を請求することができます。臭いや煙があまりにもひどく、それが反復・継続されたことで精神的な病気になってしまった場合、治療費に加えて精神的損害に対する損害賠償を請求できる可能性もあります」

Q.隣人が臭いの強い料理を作ることを、法的に止めることは可能でしょうか。

牧野さん「前述の『受忍限度を超えているかどうか』で判断することになるでしょう。悪臭が受忍限度を超えれば、近隣住民の人格権を侵害することとなるため、差し止め請求が認められる可能性があります」

Q.臭いに関するトラブルについて過去の実例・判例はありますか。

牧野さん「住宅街ではありませんが、家主からビルの一室を賃借して『婦人服販売店』を経営していた借り主が、別の借り主が同じビルの地下1階を賃借して『飲食店』を始めたことで発生した悪臭で、婦人服販売店の『営業上の損害を被った』として、家主に対し、債務不履行による損害賠償請求をした事件があります。

店舗の環境悪化により、顧客の購買意欲の減退などの被害を受けたことが認められ、約2年2カ月分の悪臭について80万円の損害賠償請求が認められています(平成15年1月27日・東京地裁判決)」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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