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早稲田大学・東北大学「100円朝食」 生理用品の無料配布も…学生の懐&胃袋に寄り添うワケ

新型コロナウイルスの感染拡大、長引く物価高騰の影響で、近年の大学生を取り巻く環境が変化しています。「100円朝食」や生理用品の無料配布など、学生の生活に寄り添う取り組みを行う大学についての思いを、筆者が調べてみました。

「100円朝食」を実施している早稲田大学
「100円朝食」を実施している早稲田大学

 新型コロナウイルスの感染拡大、長引く物価高騰の影響で、近年の大学生を取り巻く環境が変化しているように思います。そんな中、早稲田大学や東北大学、北九州市立大学などでは「100円朝食」を提供、早稲田大学については生理用品の無料配布も実施していた時期があり、学生の生活に寄り添う取り組みを行う大学が増えています。

 さまざまな物が値上がりしている昨今、多くの人が経済的に苦しい状況にあると思いますが、大学生の「懐」や「胃袋」の事情に変化が起きているのでしょうか……。

9万円超…“仕送り”が減少

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、「緊急事態宣言」の発令や自粛・行動制限などが行われた2020年~22年ごろは、高校生の地元思考が強まっているといわれていました。感染拡大が落ち着き始めると、進学や就職をきっかけに地元を離れる若者が増加しました。

 独立行政法人「日本学生支援機構」の「令和4年度学生生活調査結果」によると、居住形態が「下宿、アパート、その他」と回答した学生は、国立大学が60.4%、公立大学が55.2%、私立大学が28.6%となっています。近年、多くの学生が一人暮らしを選択しているものの、実家からの給付だけでは生活できない人が多く存在するのが現状です。同調査では、アルバイト従事者の学生のうち「家庭からの給付のみで修学可能」と回答した人は男性が49.2%、女性が55.2%にとどまってます。

 なお、学生生活費収入のうち「家庭からの給付」は2018年から2022年にかけて9万9700円減少しています。大学生の子どもをもつ親自身も値上がりが続く中で大変な状況にあります。このため、学生でありながらも経済的にも自立しなければならない10代、20代の学生が多く存在すると思います。

大学進学を機に「一人暮らし」を選択する“深刻な事情”

 親にとっても、子ども本人にとっても大学進学を機に一人暮らしをするのは大変なことだと思います。それでも、子どもたちが地元から離れて大学進学する理由には、大都市圏への憧れだけではない深刻な事情があります。

 地方には四年制大学が少なく、選べる学部学科が少ないのが現状です。特に、地方の大学は国立大学を除いて介護や保育など実務に結び付く学部学科が目立ち、人文科学系の学部や理系学部などを設置している大学がないエリアも珍しくありません。

 さらに、少子高齢化により地方を中心に多くの大学が学生の募集を停止しています。地方在住者にとって稀少な大学がなくなる中で、進学先の選択肢はますます少なくなっています。

 また、就職のことを考えて、大都市圏へのアクセスが良好な大学に進学する人もいます。地方には日本の基盤となる重要な産業があるものの、選べる職業が限られているのも事実。また、自身の能力を発揮できる職業に就くことを目指して大都市に移り住む人もいます。

 中には、地方ならではの閉塞感になじめないと感じる人や男尊女卑の土壌に嫌気がさし、将来を考えて都会に出る人もいるでしょう。

早稲田大学が「100円朝食」を学生に提供するワケ

 2022年4月、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、大学生も1年次から“大人”の仲間入りをしました。とはいえ、学生である以上、経済的に自立している人は少なく、生活面でも心許ない部分があると思います。全国大学生協連や各大学、地方自治体などが、自宅通学の学生よりも一人暮らしの学生の方が朝食を食べない学生が多い傾向にあると報告しています。また、自分を律しなければ、寝坊して、大学の講義を欠席してしまうということもあると思います。

 このような事態に、早稲田大学のほか、東北大学、北九州市立大学などが学生に100円で朝食を提供しています。

 筆者が、早稲田大学学生生活課の担当者に目的を取材しました。担当者によると、同企画について、「本学での100円朝食は早稲田大学学生健康増進互助会の企画の一つです。当企画は本学学生の朝食摂取を通じた健康増進および食生活への関心向上を図るために大学・生協と連携して2014年度から実施」しているとのことです。

 運営については「2016年度からは学生に対する経済的な支援という意味合いも込めて本学校友会(卒業生による同窓組織)からの寄付もいただき、運営されています」と説明してくれました。

 学生たちからの評判については「100円で朝食が食べられるということもあり、毎年用意をしている食数が完売するくらい好評です」と明かしつつ、「朝起きるのが苦手な学生も大学で安価で朝食を食べられるため、頑張って早起きをして、そのまま1限の授業に遅刻せずに出席できるようになったという声もあります。そのため、健康増進以外の効果も一定数あったかと思われます」と効果も教えてくれました。

 さらに、「本学入学者の比率として、実家から通学が可能な関東圏からの学生が増える中、1人暮らしの学生もまだまだ在籍しており、100円朝食という形にとらわれず、栄養バランスの取れた食事を提供する機会や正しい食生活を意識させることは、学業面にも影響を及ぼす健康や体作りの面で現代の学生にも必要不可欠かと思います」と、活動への思いも聞かせてくれました。

 学生時代について思い返してみると、筆者も1限の講義がつらいと感じていました。また、コンビニで朝食を買うと、おにぎり1つで100円以上の出費となり金欠時には結構な負担を感じることもありました。100円でおいしい朝食を食べられると早起きの“ご褒美”のようでうれしいですよね。さらに、一人暮らしの学生は一日に1食でもきちんと食べられれば、健康面での不安も少し軽減されそうですよね。

西田梨紗

西田梨紗(にしだ・りさ)

ライター

 学生時代は、アメリカ文学を中心に女性のライフスタイルや人間の生き方を研究。「LIMO」「All about」「Real Sound」「オトナサローネ」などにも寄稿している。

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