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スポーツ、コンサート…チケット「高額転売」 実は罪が重い? 購入者も罰せられる? 弁護士に聞く

チケットを転売した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。弁護士に聞きました。

チケットを転売すると、どうなる?
チケットを転売すると、どうなる?

 コンサートのチケットやスポーツの試合のチケットなどが、定価の数倍から数十倍の価格で転売されることがあり、問題となっています。

 そもそも、チケットを転売した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。また、転売されたチケットを購入した場合、どうなるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金を科される可能性

Q.コンサートやスポーツの試合などのチケットを転売した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「興行主の同意のない有償譲渡が禁止され、興行の日時、場所、座席が指定されている、いわゆる『特定興行入場券』の不正転売を禁止・防止するために、『特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律』(略称:チケット不正転売禁止法)が2019年6月14日から施行されました。

この法律では、『興行主の事前の同意を得ず、反復継続の意思をもって、販売価格を超える価格で転売する行為』を『不正転売』として禁止しています。禁止される『転売』は、チケットの不正転売および不正転売を目的としたチケットの譲り受け(購入、仕入れ行為)とされています。

『不正転売』を行った場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります。

チケット不正転売禁止法が禁止する『不正転売』は、先述のように、『販売価格を超える価格で転売する行為』のため、チケットの価格と同額で転売した場合は、不正転売には当たりません」

Q.不正転売されたチケットを買った場合、法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「チケット不正転売禁止法は、あくまで不正転売した人を処罰する法律であり、不正転売されたチケットの購入者を処罰する法律ではありません。そのため、不正転売されたチケットを購入しても、法的責任を問われることはないでしょう」

Q.規約で他人への譲渡が禁止されているチケットを知人に無償で譲ってしまったとします。この場合、法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「チケット不正転売禁止法は適用されませんが、民法上で、チケットの販売会社などとの契約違反を問われ、損害賠償請求を受ける可能性があります。ただ、現実的に、損害賠償を請求されることは、ほとんどないでしょう」

Q.チケットの転売に関する事例、判例について、教えてください。

牧野さん「2019年6月から9月にかけて、人気アイドルグループ『嵐』のコンサートの電子チケットを不正に転売したとして、20代の女性がチケット不正転売禁止法違反などの疑いで書類送検された事例があります。2020年8月、女性に対し、懲役1年6カ月(執行猶予3年)、罰金30万円などの有罪判決が下されました」

 チケットの不正転売は、法的責任を問われる可能性があるため、絶対にやめましょう。また、コンサートやイベントによっては、規約でチケットの第三者への譲渡、転売などを禁止しているケースがあり、その場合、転売されたチケットでは入場できない可能性があります。チケットは、公式サイトなどで購入するようにしましょう。

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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