学校&介護施設の給食、企業の食堂どうなっちゃう…「給食事業者」業績悪化した割合は? 帝国データバンクが業績動向を調査
学校給食などを運営する「ホーユー」(広島市)が事業停止を発表し、注目を集めています。そんな中、帝国データバンク(東京都港区)が「給食事業者」の2022年度業績動向について調査を実施し、結果を発表しました。

学校給食などを運営する「ホーユー」(広島市)が事業停止した問題で、全国の学校や施設内食堂で食事の提供が滞っている状況が表面化しています。
企業を専門対象とする信用調査を行っている帝国データバンク(東京都港区)が「給食事業者」の2022年度業績動向について調査・分析を実施し、結果を公表しました。
調査は、学校や企業、官公庁などで従業員・顧客向けの「食堂運営」や、保育・介護施設など向けの「給食弁当配送」を対象に、帝国データバンクが保有する企業信用調査報告書ファイル「CCR」(190万社収録)のうち、「給食事業」を運営する企業データを抽出したとのことです。
国内で社員食堂や学生食堂の運営、給食サービスを提供する企業を調査した結果、2022年度の利益動向が判明した374社のうち、34.0%にあたる127社が「赤字」運営だったことが分かったということです。
前年度から「減益」となった29.1%のケースを含めると、計63.1%と全体の6割超で業績が「悪化」したということも判明。また、コロナ禍以降(2020年度~)から3年連続で赤字となった企業は1割を占めたということです。値上げ交渉が難航する事業者が多くみられ、厳しい採算状況を強いられているようです。
また、「増益」「前年度並み」と回答したのは、36.9%という結果でした。給食事業では、特に学校給食などで民間に委託する自治体が増えていることから、給食需要は引き続き拡大傾向が続いています。また、給食弁当などを手掛ける企業では中食需要の増加で利用需要が拡大しており、コロナ禍に比べて増収基調となった企業が多かったということです。
その一方で、足元では給食事業の入札に参加する業者も増えており、価格面で競争が激化しています。加えて、生鮮食品や加工食品を含めた食材価格の高騰、調理スタッフや栄養士などの人手不足による人件費、原油価格上昇による光熱費の上昇が響き、当初の契約金額では賄いきれず利益面で悪化する事業者が多くみられたということです。一部では原材料価格の上昇を受けて受注単価の引き上げに成功したものの、再度・再々度の値上げ交渉が難航したケースもみられたとのことです。
同社が今年7月、日本企業1万社を対象に「価格転嫁の動向」について調査した結果、回答が得られた20社の給食事業者のうち15%が「全く価格転嫁できていない」と回答。
価格転嫁ができた企業でも、「20%未満」が35%、「50%未満」が15%にとどまる企業が多く、コスト上昇分をすべて価格転嫁できた企業はゼロという結果でした。
同社によると、食材や人件費など運営コストが上昇しているものの、価格に反映ができない企業が多く、競争入札が多いため「値上げは数年に一度など制限がある」といった声や、社員食堂などでは「(値上げを)かたくなに拒絶され、取引停止を盾に交渉に応じる様子もない」など、厳しい状況を訴える声も相次いで寄せられているということです。
また、価格転嫁ができた事業者でも、「何回も短期間に値上げできない」「どこまで値上げを受け入れてもらえるかわからない」などの声も挙がっているということです。
最近では、大手飲食チェーンや宅配事業者などが給食事業へ参入・展開するケースも多く、地場給食事業者間の競争も激化しています。加えて、学校や官公庁などの入札事業では価格競争に陥りやすい上、食材費や人件費が入札当時の想定より高騰したとしても「契約期間中の価格改定が非常に困難」といったケースも見られ、価格転嫁できずに採算割れとなり業績が悪化する事業者が増加していることが伺えるということです。
2022年以降累計で5万品目を超える食品が値上げされるなど、急激に進んだ物価高を背景に補正予算などで給食事業者へのコスト補填(ほてん)を検討、実施する地方自治体もあります。
しかし、「どのような根拠でコストアップ分を計算すればいいかわからない」といった声も寄せられ、「給食事業者と行政の双方でコスト上昇と価格転嫁のバランスを決める場が求められる」と分析しています。
(オトナンサー編集部)
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