オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

ドライブレコーダーの撮影映像 車種ナンバー、通行人、住居…プライバシー侵害にならない? 弁護士が“危険性”解説

ドライブレコーダーの映像にプライバシーの侵害はあり得るのでしょうか? 弁護士に聞いてみました。

ドライブレコーダーの映像にプライバシーはあるのか?
ドライブレコーダーの映像にプライバシーはあるのか?

 近年、あおり運転対策や車上荒らしなどの記録を録画するためだったり、運転中の事故、危険運転などを録画するために、ドライブレコーダーを設置するドライバーが増えています。そのような映像を気軽にSNSにアップしたりする人もいるのではないでしょうか。

 テレビのニュース映像などでの記録映像では、ナンバーにモザイクが入れられたりしていますが、SNSなどにアップされている動画では、ナンバーにモザイクが入っていなかったり、街行く人たちの姿、住宅のベランダなどがそのままアップされたりしていることがあります。そういったプライバシーに関わる侵害で罪に問われる場合があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の弁護士・牧野和夫さんに見解を聞きました。

慰謝料の損害賠償も

Q.ずばり、一般人が撮影したドライブレコーダーの映像にプライバシーの侵害はあてはまるのでしょうか。

牧野さん「ドライブレコーダーの映像に人の顔や自動車のナンバーなど個人が特定できる情報が映り込んでいた場合には、その映像が公開されれば、他人から無断で写真を撮られたり、撮られた写真が無断で公表されることを禁止できる権利にあたる『肖像権』あるいは『プライバシー権』の侵害になる可能性があります。

 日本の判例として有名なものに、1964年の『宴(うたげ)のあと事件最高裁判決』があります。これは、元外務大臣の有田八郎が、三島由紀夫の小説『宴のあと』によりプライバシー権(私生活をみだりに公開されない権利)を侵害されたとして、謝罪広告と損害賠償を請求したもので、東京地裁が、日本で初めて『プライバシーの権利』を実定法上の権利として容認した事件です。

 映像を公開した人は、公開された人に対して、民法の不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります」

Q.SDカードを挿入するタイプのドライブレコーダーもありますが、SDカードに個人的に記録しておく場合は、どうなのでしょうか。

牧野さん「全問と同じ様に、『肖像権』あるいは『プライバシー権』の侵害になる可能性があります」

Q.危険な運転を記録したドライブレコーダーの映像をSNS上にアップしたりする行為は法的に問題あるのでしょうか。

牧野さん「加害者の危険運転の法的責任とは別に、反対に被害者による加害者の『プライバシー権』の侵害になる可能性があり、加害者の映像を公開した被害者は、公開された加害者に対して、民法の不法行為に基づき、公開された精神的損害=慰謝料について損害賠償責任を負う可能性があります」

Q.これらのケースに類似した判例はありますか?

牧野さん「逮捕に至ったケースは見つかりませんでしたが、古くは『Google ストリートビュー』での損害賠償請求事件(通称・ストリートビュー事件)があります。

ストリートビュー事件は、2012年7月13日、福岡高等裁判所で福岡市内居住の原告が、被告の親会社である米国法人Google,Inc.が提供する『Google ストリートビュー』により、原告の住居のベランダに干してあった洗濯物を撮影公表されたため、強迫神経症及び知的障害が悪化し転居を余儀なくされたとして、プライバシー侵害の不法行為に基づく損害賠償請求を被告に行ったが、請求が認められなかった事件判決があります」

 牧野さんの解説によると、ドライブレコーダーの映像には「肖像権」あるいは「プライバシー権」がしっかりあるということです。SNSなどに公開する際には、それらを守る必要があります。しっかりと判断した上で、アップしない、するといった行動を取るようにしましょう。

(オトナンサー編集部)

【分かりやすい!】プライバシーの侵害に当たらない方法を写真で あおり運転の加害者を撮影した動画をSNSに投稿した場合などの法的責任、一挙公開!

画像ギャラリー

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント