リノベーション進む「団地」、住み心地は? マンションとの違いはある? メリット&デメリットを不動産鑑定士が解説
団地には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。不動産鑑定士に聞きました。
集合住宅として、マンションのほかに団地があります。最近では、古い団地がリノベーションされて貸し出されるケースが増えていますが、団地にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。団地とマンションに違いはあるのでしょうか。不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。
マンションよりも敷地が広い傾向
Q.そもそも、団地とマンションに違いはあるのでしょうか。
竹内さん「団地とは、一定の用途の建物を計画的・集団的に建てた地区のことを指します。必ずしも住宅だけを指す用語ではなく、工場であれば工業団地、倉庫であれば流通団地といった使われ方もします。
住宅団地は、英語では『apartment complex』や『housing complex』と訳されることが多いようです。『complex』には複合体や集合体といった意味があります。
一方、日本人が一般的にイメージしているマンションは、英語では『apartment』と訳されることが多いです。『mansion』という単語は大邸宅を意味するため、いわゆる一般的なマンションとは若干異なります。先述のapartment complexを団地とすれば、マンションは団地の一つの構成要素という関係になります。
公団や公営住宅(以下、公団など)の運営元は、UR(都市再生機構)のほか、県や市となっています」
Q.団地とマンションとで入居条件に違いはあるのでしょうか。
竹内さん「公団などの場合、入居条件があります。URが運営する公団は、家賃に応じて一定額以上の平均月額収入があることなどが求められます。一方、県営住宅や市営住宅は、住宅に困っている人を対象としている場合が多く、そのような公営住宅では、逆に一定基準以下の収入であることが入居条件となります。
マンションのような民間の賃貸住宅の場合、入居条件は貸主の意向で決まります。一般的には、入居時に家賃保証会社の保証を付けるのを条件とするケースが多いです」
Q.団地とマンションのメリット、デメリットについてそれぞれ教えてください。
竹内さん「団地のメリットは、敷地が広い点のほか、車道からそのまま運転して駐車できる、いわゆる平置きタイプの駐車場が多く、車の入出庫がしやすい点です。敷地内に植栽や公園が配備され、棟と棟との間も離れており、全体的にゆとりがあります。戸数が多く、共用部もシンプルな物件が多いことから、分譲タイプの物件は、修繕積立金や管理費が安い傾向にある点もメリットです。
URの公団は、同年代に建てられた建物より、建築物全体を構造的に支える骨組み部分である『躯体(くたい)』の施工の質が高い傾向にあります。
一方、団地のデメリットは、総じて物件が古い点です。物件によっては共用部にエレベーターがないケースのほか、専有部に空調が取り付けられない部屋があるケースもあります。戦後すぐに建てられた公団などは、面積が狭い傾向にあり、2DKなどリビングのない間取りも多く、物件によっては、専有面積が周辺の分譲マンションより狭いケースもあります。
マンションに関しては、公団などと比較する物件でメリットとデメリットが異なります。例えば、中心市街地の狭い敷地に建てられた新築マンションと公団などを比較してみます。
都市部の新築マンションのメリットは、公団などに比べると立地が良く、設備が最新であることなどです。一方、敷地の狭さや駐車場の仕様のほか、戸数が少なく管理費が高額な点などがデメリットとなります」
Q.今後、リノベーションされた団地が貸し出されるケースは増え続けていくのでしょうか。リノベーションされた団地に住む際の注意点も含めて、教えてください。
竹内さん「URの公団では、リノベーションが積極的に行われています。そのため、URの公団は、今後もリノベーション物件が増えていく可能性があります。また、不動産会社が転売を目的に購入した公団などの中古物件も、リノベーション物件を多く見掛けるようになりました。一方、公営住宅は自治体によって方針が異なり、リノベーションに積極的ではない物件も多いです。
リノベーションされた団地に住む際の注意点は、『共用部にエレベーターがあるか』『専有部に空調が設置できない部屋がないか』『お風呂は追いだきができるのか』『インターネットは光ファイバーを引き込めるか』などを確認する必要があります。
リノベーション物件は、見た目がきれいになっていたとしても、解決できない課題を残したままとなっているケースが多いです。自分に必要な最低限のスペックが備わっているかどうかを確認することがポイントです」
(オトナンサー編集部)
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