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大型連休で起きる“5月病” 良質な睡眠で改善できる? 精神科医が解説

大型連休で起きる“5月病”。精神科医が症状やリスクの軽減方法を解説してくれています。

“5月病”リスクの軽減方法とは…
“5月病”リスクの軽減方法とは…

 4月に新年度を迎え、そして5月のゴールデンウイークが過ぎ去ろうとしています。新しい環境や人間関係への適応、コロナ禍前とは違ったハードルを感じている人も多いかもしれません。

 そんな中、ユーグレナ(東京都港区)が、「会社での新しい仕事や人間関係に対するストレス」について調査を実施。その結果を発表しました。

会社での新しい仕事や人間関係へのストレス…8割が感じている

 調査は、4月4、5日の2日間にかけ、20〜60代の有職者の男女1000人を対象に、調査を行いました。

「会社で新しい仕事や人間関係にストレスを感じた経験があるか」と聞いたところ、「ある」と回答した人が79.1%と、約8割の人がストレスを感じていたことが分かりました。新しい環境での精神的な負荷は、多くのビジネスパーソンの問題のようです。

「どのようにストレスを緩和・解消しようと努めたか?」という質問には、「苦手な人と極力接点を持たないようにする」が210人とトップに。続いて、「好きなものをたくさん食べる」が197人、「仕事以外で楽しみな予定や関心事を作り、そのことを考えて頑張る」が191人という結果でした。

“5月病”とは…

 新しい環境での緊張感から解放される大型連休のタイミングで、起こることがあるといわれる“5月病”。季節特有の精神的な不安定さや、無気力になってしまう傾向があります。そんな“5月病”を予防する対策について、精神科医の芦澤裕子さんが解説しています。

「“5月病”とは、そういった病名があるわけではなく、医学的には『適応障害』『うつ病』と診断されることが多い、この季節に起こりがちな抑うつ症状を呈する状態のことです。これは精神的または身体的なストレスや疲労によって心身に過大な負荷がかかり、脳がうまく働かず、ぼーっとしてしまったり、精神的に不安定になったり、無気力になってしまうなどの状態を指します。

環境の変化など、明らかにストレス原因となる事象が存在するのが通常で、その原因について夜、考え込んだりしてしまうことで眠れなくなってしまい、心身が回復しないまま日々を過ごしてしまうことがさまざまな抑うつ症状を増悪したりするといわれます。なんとか仕事ができている場合は大丈夫ですが、起床時から気力が湧かず、布団に体が張り付いてしまって起き上がれないくらいの場合は精神科を受診しましょう。

プライベートでは軽やかに動けるけれども、仕事など、明確なストレス環境に行くことだけに気力が湧かないという人もたまに見られますが、そういったケースでも病的に重度な場合があるので要注意です。新しい環境になじめないなどのネガティブな原因のみならず、志望通りの進学や昇進など、ポジティブな変化であっても、『5月病』のような状態になることもあります」

人とのコミュニケーションにおける対策

芦澤さん「ストレス要因となっている特定の人物と会うと動悸がするなど、ストレスの原因が明らかな場合は、その人物から距離を取らせてもらうなどの物理的な対処が一番の対策です。

そういった対処が難しい場合は、間に別の人が入ってコミュニケーションしてもらう、プライベートの時間に、気を許せる人に話を聞いてもらうというだけでも改善が見込めることは多いです。

反対に、リモートワークの機会が増え、コミュニケーション不足で“5月病”的な傾向になる人もいるかもしれません。細かいニュアンスが伝わらない、相手が忙しいかもしれないので話しかけられないという理由で実務の相談がしづらく、一人で抱え込んでしまい、解決できずに自信喪失してしまうという負のスパイラルに陥ることが一因です。

周囲の人が『いつでもなんでも聞いて』という姿勢を示したり、複数人での会議開始時に雑談の時間を持ち、ささいなことでも話してもいいのだと思える環境づくりもお勧めです。

リスクを軽減するには“睡眠”が重要

芦澤さん「“5月病”と感じる精神的な無気力さは、何らかの理由で自律神経、脳神経が上手に機能できていないことなど、さまざまな要因が考えられます。自律神経も脳神経も、細胞一つ一つからできていて、体の組織の一つです。きちんと疲労が回復され、栄養や酸素がいきわたっている状態を作ってあげることが重要です。そして、身体組織の疲労回復には、睡眠の量や質が深く関わっています。

※睡眠の量や質の改善については以下の通り。

◆起床時刻を一定にする
 人間の概日リズム(生体リズム)は約25時間と、1日の24時間より1時間ほど長いのです。この差を修正するためには、朝の起床時刻を一定にし、朝、光を目の中に入れる事で24時間周期にリセットを。午前中に光を一定時間浴びることによって、自律神経や脳神経を正常化するのに役立つホルモン、セロトニンの正常な分泌にも役立ちます。

◆睡眠の質をあげる食生活
 調査結果でもストレス解消法として「好きなものをたくさん食べる」という声が第2位でした。おいしいものを食べることでも“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されるので、適度であれば好きなものを楽しむことはお勧めです。

 しかし、栄養が偏ったり、糖質・脂質など胃腸に負担がかかるものを過剰に摂ることは、長期的には血液中のコレステロールを増やしてしまったり腸内環境を乱すなど、メンタルヘルスにもよくない影響を及ぼす可能性もあるので注意が必要です。

 睡眠の質の改善に必要な栄養素は、神経伝達物質を作るタンパク質、セロトニンの合成に不可欠なビタミン B6、脳神経の正常な働きを助けてくれるビタミンB12、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の原料トリプトファン、ドーパミンを作るのに必須といわれる鉄、ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせるGABA、体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やすグリシンです。

 肉や魚は日々の主菜にきちんと取り入れ、ビタミンB12が豊富なしじみやあさりなどの貝類、グリシンが豊富なエビやウニ、トリプトファンが豊富な豆腐や納豆も積極的にとってみてください。主食には、GABAが豊富な発芽玄米がお勧めです。

 また、睡眠の質の改善に役立つ栄養素を含むといわれるユーグレナは、59種類もの栄養素を含み、その中にはビタミンB6、ビタミンB12、トリプトファン、鉄、GABA、グリシンに加え、ユーグレナ特有のベータグルカンである「パラミロン」も含まれています。ユーグレナの粉末1000ミリグラムおよびユーグレナ粉末の入っていないプラセボ粉末を12週間摂取した臨床試験において、主観的な睡眠への満足度有意な向上が見られたという検証結果もあります。一般販売されているドリンクやタブレット型のサプリメントなどで取り入れることができます。

◆お酒はNG。カフェインは夜眠る時間の5時間前まで
 お酒は睡眠の質を下げてしまい、アルコールの利尿作用で就寝中に目を覚ませてしまうなどデメリットが大きいので、睡眠の質を改善したい場合は避けるようにしてください。神経を覚醒させ、入眠しづらくなってしまうカフェインも、とるならば就寝時間の5時間前までにしましょう。

◆夕食のメニューは入眠を左右
 夜は脂っぽいものをなるべくとらない、ないしは控えるようにしましょう。胃もたれが身体的負担、精神的なストレスにつながり、睡眠の質を下げてしまう恐れがあります。食べすぎでの胃もたれも同様です。
食事、特に夕食は腹八分目を心掛け、理想は就寝の3時間前、難しい場合は、2時間前には食べ終えるようにしましょう。

◆運動するべきタイミングと強度
 運動すると体に乳酸などの疲労物質が作られ、体が疲労回復しようとするために入眠しやすくなります。また、運動をすることで全身の血流、ないしは脳の血流もよくなり、思考の処理などが行われやすくなることもあります。

 運動習慣を持つことで、中期的に体力がつくので仕事の集中力、意欲の維持にもつながり、仕事への自信喪失などに起因する“5月病”リスクも軽減できるかもしれません。午前中に屋外で15分以上散歩するなど、ほんのり汗をかく程度の運動が理想的です。

◆就寝時に深部体温が下がるようにぬるめの半身浴を
 体の内部の温度(深部体温)が下がる時に副交感神経が優位になり、入眠しやすくなります。眠るタイミングで深部体温の低下を下げるには、春夏の暖かい季節は1時間前までに、湯船で38度~40度のぬるめの半身浴で入浴を。20分ほどゆったりつかりましょう。

◆眠る1時間前からはPCやスマホの液晶画面(ブルーライト)は見ないように
 ブルーライトは、光の脳への刺激によって睡眠相(睡眠リズム)を崩してしまいます。本来は夕方以降にブルーライトを浴びないほうが理想とも言われます。また、眠る前のネットサーフィンも、見ていることに興味を持ってしまうことで交感神経が優位になり、入眠の際に優位になるべき副交感神経がうまく作用せず、なかなか寝つけなくなってしまいます。

 5月8日から仕事という人も多いことでしょう。“5月病”に陥らないよう、健康には気を付けましょう。

(オトナンサー編集部)

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