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今春“お出かけ番組”が続々スタート 脱力感を狙う理由とリスクとは

この春「なりゆき街道旅」「旅サンデー」「池上彰の現代史を歩く」といった番組がスタートするなど、お出かけ番組が活況の様相を呈しています。しかし、その背景にはテレビ業界が抱える問題が潜んでいるようです。

「なりゆき街道旅」に出演する澤部佑さん(Getty Images)
「なりゆき街道旅」に出演する澤部佑さん(Getty Images)

 この春から、「なりゆき街道旅」(フジテレビ系)、「旅サンデー」(テレビ朝日系)、「池上彰の現代史を歩く」(テレビ東京系)、「世界はほしいモノにあふれてる~旅するバイヤー 極上リスト~」(NHK)がスタート。また、「帰れマンデー見っけ隊!!」(テレビ朝日系)も日曜夕方から月曜ゴールデンタイムに移動するなど、お出かけ番組が活況です。

 確かに、寒い冬を超えた春はお出かけの季節なのですが、ここまで集まった理由は何なのでしょうか。そこにはテレビやバラエティーを取り巻く難しさがあるのです。

差別化さえできれば、まだ増やせる

 そもそもお出かけ番組は、固定ファン層のいる安定したコンテンツであり、視聴率の低迷に悩むテレビ局にとっては心強い番組。現在では、「ぴったんこカン・カン」(TBS系)、「火曜サプライズ」(日本テレビ系)、「ブラタモリ」(NHK)、「モヤモヤさまぁ~ず2」(テレビ東京系)、「ぶらり途中下車の旅」(日本テレビ系)、「もしもツアーズ」(フジテレビ系)、「有吉くんの正直さんぽ」(フジテレビ系)、「夜の巷を徘徊する」(テレビ朝日系)など、多くの番組が放送されています。

 その魅力は、「地域、人、モノの魅力を再発見できる」「タレントの自由気ままな姿や、ほのぼのとしたハプニングが見られる」こと。番組は終始、脱力したムードで、ゆったりとした気持ちで楽しめるのがポイントです。

 今春スタートの新番組はこれらの要素にひと工夫をプラス。「なりゆき街道旅」は街道、「旅サンデー」は秘境や路地裏、「池上彰の現代史を歩く」は歴史、「世界はほしいモノにあふれてる」は嗜好品と、「新たな切り口で勝負しよう」という意図が見えます。

 新たな試みは、番組のMCのキャスティングも同様。澤部佑さん、池上彰さん、三浦春馬さんとJUJUさんなど、これまでのイメージとは異なるチョイスで差別化を狙っています。つまり、「差別化さえできれば、お出かけ番組はまだ増やす余地がある」ということなのでしょう。

 しかし、それはテレビ局のネガティブなマーケティング感覚だったのです。

「若年層のテレビ離れ」が加速か

「お出かけ番組は、固定ファン層のいる安定したコンテンツ」と書きましたが、その大半は中高年層。視聴率の低迷に悩むテレビ局としては、「リアルタイムで見てもらえる」という意味で、視聴率を担う最大顧客だけに「中高年層を押さえておきたい」のです。

 これは裏を返せば、「若年層を捨てている」ということ。興味関心としても、行動パターンや金銭的にも、お出かけ番組を好きな若年層は少ないため、近年言われ続けている「若年層のテレビ離れ」がますます進んでしまうリスクが高いのです。

「ネットで好きなときに、好きなものを見るのが当たり前」の若年層にとって、「テレビは不便なもの」とみなしがち。「よほど気に入った番組でなければリアルタイムで見ない」という志向が定着しつつあります。

 一方、テレビ局は若年層が気に入るような番組を作ろうとしていません。このまま視聴率をもとにしたビジネスモデルを変えなければ、「中高年層を狙うしかない」というマーケティングは加速するばかり。近年、ゴールデンタイムに日中のワイドショーを思わせる生活情報や雑学を扱う番組が増えましたが、これもすべて中高年層狙いの戦略であり、今春のお出かけ番組増加は、その流れを決定づけるものなのです。

 ただ、ここまでお出かけ番組が増えると、さすがに供給過多気味であり、中高年層もそればかり見たいわけではないでしょう。実際、業界内では、「新番組は鮮度こそあるものの、既存の人気番組にはない魅力を見せられなければ、早期終了しても不思議ではない」と言われています。次の改編期である秋まで、どの新番組も全力投球が予想されているだけに、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「新・週刊フジテレビ批評」「TBSレビュー」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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