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駅前や路上で果物販売…警察や自治体の許可が必要では? 弁護士に聞く

駅前や住宅街の路上で物を販売するときは、事前に警察や自治体などの許可が必要なのでしょうか。弁護士に聞きました。

路上で物を販売、許可が必要?
路上で物を販売、許可が必要?

 駅前や住宅街の路上で、果物などを販売している人を見掛けることがあります。こうした光景に対し、ネット上では「路上販売してもいいの?」「許可を取っているの?」といった意見があります。そもそも、路上で物を販売する際は、事前に警察や自治体などの許可が必要なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

移動販売は「道路使用許可」不要

Q.そもそも、駅前や住宅街の路上で物を販売するときは、事前に警察や自治体などの許可(あるいは届け出)が必要なのでしょうか。

牧野さん「駅前での販売は、その敷地が鉄道会社の私有地である場合、鉄道会社の許可が必要です。また、公道や多くの人が利用する私道に長時間、露店などを設置して物を販売する場合、道路交通法に基づき管轄の警察署から道路使用許可を得る必要がありますが、お祭りなどの地域イベントを除いて、個人が公道の道路使用許可を取得するのは難しいでしょう。

ただし、道路交通法で禁じられているのは『交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置く』『(許可なく)場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする』といった行為なので、軽トラックやキッチンカー、リヤカーなどで移動販売する場合、基本的に道路使用許可は不要です。

なお、販売する商品やサービスによっては、移動販売であっても特別な許可が必要です。例えば、路上でアンティークなどの古物雑貨を販売する場合、管轄の公安委員会(警察署)から古物営業の許可を得る必要があります。また、路上で弁当を移動販売する場合、食品衛生法に基づき営業先の保健所に営業届を提出する必要がありますし、キッチンカーでの調理営業は、保健所から飲食店営業の許可を得る必要があります」

Q.では、鉄道会社や警察などの許可を得ずに駅前や住宅街の路上で物を販売した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「駅前の鉄道会社の私有地で許可なく物を販売した場合、民事責任(不法行為による損害賠償責任)を問われる可能性があるでしょう。また、鉄道会社側から退去するよう要求されたにもかかわらず応じない場合は不退去罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)、販売行為が鉄道会社の業務を妨害している場合は威力業務妨害(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)にそれぞれ該当する可能性があります。

警察署から道路使用許可を得ずに路上に露店や屋台などを設置して物を販売した場合、道路交通法違反(無許可道路使用、禁止行為、道路の使用許可)として、3月以下の懲役または5万円以下の罰金を科される可能性があります。

古物雑貨を許可なく移動販売した場合、古物営業法違反として3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、保健所から許可を得ずに弁当や料理を移動販売した場合、食品衛生法違反として、最大で3年以下の懲役または300万円以下(法人の場合は1億円以下)の罰金が科される可能性があります」

Q.駅前の路上で、チラシやパンフレットなどを配布している人を見掛けることがあります。路上で物を配布するときも、事前に警察や自治体などの許可を取る必要があるのでしょうか。許可なく無断でチラシなどを配布した場合の法的責任も含めて、教えてください。

牧野さん「道路交通法に基づき、管轄警察署への許可申請が必要です。違反した場合、3月以下の懲役または5万円の罰金が科される可能性があります。私道や駅前広場、駅構内、イベント会場、店の敷地などで物を配布する場合、その土地の所有者や管理者からの承諾がなければ実施できません」

Q.路上で許可なく物を売ったり配布したりしたことがきっかけで、取り締まりの対象となった事例について、教えてください。

牧野さん「2015年10月、許可を得ずにJR新宿駅西口付近の歩道など3カ所でラーメンやおでんの屋台を設置し、道路を不正に使用したとして、警視庁が道路交通法違反(無許可道路使用、禁止行為、道路の使用許可)容疑で、露天商の男ら5人を逮捕した事例があります。

『屋台は移動販売が可能なので、取り締まりの対象にならないのでは?』と思うかもしれませんが、営業が歩行者の通行の妨げとなる場合、道路交通法に抵触する可能性があります。そのため、警察から屋台営業をやめるよう警告があれば、従わなければなりません。逮捕された男らは、警察からの約60回の警告を無視して営業を続けていたそうです」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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