オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「わが子は発達障害」と伝えたら“入園拒否”…それでも“公表”した方がよい理由

障害児だけを“特別扱い”するクラスはうまくいかない

 では、同じクラスの園児たちにはどのように伝えたらよいのでしょうか。

 子どもは3~4歳くらいになると、「どうして◯◯くんは立ち歩いても叱られないんだ。僕が同じことをしたら、先生は注意するのに」と言い出します。さらに、他の保護者から「担任は“えこひいき”している」とクレームが出ることもあります。

 こうならないために、担任には不平不満が出ないクラス運営が求められます。特別な対応をしている理由を、こう伝えるのです。

「走るのが速い子、遅い子、給食をおかわりする子、全部食べられない子がいますよね。それと同じで、いすに座ってじっと話を聞くのが上手な子、動いていることの方が得意な子がいます。できないのではありません。できることが違うだけです。そのことを、皆にはしっかりと頭に入れてほしいです。先生はそれぞれの違いに合わせて、言葉をかけています。『◯◯くんだけ許されてずるい』と考えないようにしてほしいです」

 また、障害がなくとも、子どもはみんな「先生に認めてほしい、自分のことを注目してほしい」と願っています。特別扱いされる子がいると不満を持ちます。ですから、障害児だけを特別に支援しようとすると、クラス運営はうまくいきません。

 担任は、それぞれの子どもに対して「給食をおかわりする」「風邪をあまり引かない」「虫について詳しい」「お片付けを率先してやる」「砂場で泥団子を上手に作れる」といったように“褒めポイント”を変えることです。これは家庭内での、障害のある子と定型発達の子のきょうだいに対しても同じです。どうしても、親の目は障害のある子ばかりにいってしまうので、定型発達のきょうだいにも“褒めポイント”を変え、認めてあげましょう。

わが子が「幸せに過ごせる」居場所づくりを

 クラスの保護者に対しては、どうしたらよいでしょうか。

 担任に伝えただけだと、特別な配慮をしていることに対して「どうして、あの子だけ立ち歩いても許されているのかしら? 特別扱いするなんて、えこひいきする先生よね!」と陰口をたたかれることもあります。

 息子の場合、保育園では保護者会がなかったので、送迎時に顔を合わせる3〜4人のママたちに「実は、うちの子は自閉症なんです。ご迷惑をかけることもありますが、どうぞよろしくお願いします」と伝えました。嫌な顔をして、「障害のある子どもとは関わらせたくない」という姿勢だった親御さんはたった一人だけでした。そんな相手に対しては、「もうわが家とは縁のない人々」と割り切りました。

 結果、障害を公表することにより、「協力できることがあれば何でも言ってね」と保護者の皆さんが温かい言葉をかけてくれるようになり、私も肩の荷が下りて、より親しくなれました。

 家庭内だけで秘密にしていては、子どもは適切な配慮を受けることができません。祖父母、親戚、幼稚園・保育園の先生、普段よく立ち寄るお店まで含めた地域社会で理解されることで、子どもは居心地のいい環境で育つことができます。

 世間体、プライドに縛られて他人の目線を気にするよりも、わが子が幸せに過ごすことができる居場所をつくってやることが、家族の役割だと思います。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

【5つの行動】「おうむ返し」や「聴覚過敏」…「発達障害児」が取ることのある行動、イラストで解説!

画像ギャラリー

1 2

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

コメント