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柄本佑、前田敦子は「色気のある真っ白いキャンバス」

最初から最後までの佑さんを楽しんでほしい

Q.冨永監督の現場はいかがでしたか。

柄本「すごく楽しかったです。冨永さんって男らしいでしょ、迷いがなくて」

前田「確かに確かに。演出している時はかっこいいですね。見た目はそうじゃないけど……(笑)」

柄本「言ったな(笑)でも演出してる時は迷いがないです。頭の中ですごくよくできているので、4月に撮影が終わり、7月には初号試写が見られるくらいの早さでした。明日このシーンを撮りますとなったら、そこのところで、どこに誰が入る前にこういうカット割りでこうやってっていうのが頭の中に入っていて、実際人が入った時に面白かったところがカットインされていく感じです。そのつなぎが変なので、多分周りの人はよく分かってないと思うし、僕もよく分かりませんでした。だけど、監督は迷いがないので安心して身を委ねていいと思いました」

前田「分かりやすい」

柄本「分かりやすいだろう。僕は監督をずっと取材していたから」

前田「確かに、現場で監督は楽しそうで、いつもニヤニヤして考えていて、役者に合わせた変化をつけてくださりました」

柄本「監督もその場でつけていくから意外だと思ったのが、監督が段取りが終わって話してる時に、助監督がカットインしてくると『ちょっと待って、今話してるから。カットインされると何話してたか忘れちゃうから』と言ってたこと。たったひと言のカットインで分からなくなるということが意外でした」

Q.お気にりのシーンは。

前田「犬を抱っこするところ。フワフワでした。子どもがいなくて、あの犬が突然登場することで時間の流れを感じさせるのがシュールだなと思いました」

柄本「抱っこすると異常にでかく感じます。もっとフワフワの小さい感じかと思っていたら(笑)僕は最後にあっちゃんがパズルをやっていて、僕のメモを見るシーン。僕がサックス持っていって出ていったので、別れのシーンだったんだと思っていたら、その後で二人でこたつに入っていて、片方はジグソーパズルをやっています。きっと二人の心は離れているんだろうけど、あそこで一瞬ホッとするというか、ドラマチックなんじゃないかなと思います。まだこの二人一緒にいたんだという、ちょっと変シーンな気もします。直前が明らかに別れのシーンになっているのに、また二人でいるという。なんか気になる好きなシーンです」

Q.冨永監督のこだわりはどんなことでしょうか。

柄本「監督と話していたことなんですが、後半はサスペンス要素が増えていく、空っぽの要素が増えていきます。僕がこだわったというより監督がそういう演出をしてくださったと思うのですが、いい人に見えるところだけは徹底的に削除していった気がします。悪い人に見える分にはいいのですが、いい人に見えたら即消していったように思えます」

前田「監督がこだわって演出してくださったので、考え込むことはありませんでした。衣装の段階から役作りができていたので。衣装の変化には驚きました。最初は銀行員、夫が働かなくなってからは三角頭巾かぶって働いて、終盤はアルパカのセーター着てメガネかけて。ちなみに、あの眼鏡をかけた私はお母さんに似てるなと思いました」

柄本「監督がこだわってたといえば、あっちゃんがカステラ食べながら煮出ししてるところとかもそうだよね」

前田「こだわってた!」

柄本「僕は関わってないけど、皆でカステラ食べながら作業するところで、異常にテストやってましたよね」

前田「“せわしないおばちゃん感”にすごくこだわってました」

柄本「監督にすごいビジョンがあるから、そこまで自分たちが直していったっていう記憶がないんですよね」

Q.冨永監督の変わった演出などはありましたか。

柄本「変わったことは一つもしてないんですが、冨永監督の体を通して変わったものになっているだけであって、冨永監督的には変わったことはしてないので、あれだけ迷いなく出てるということが変わってると思います」

前田「冨永監督の普通が変わっているんでしょうね」

Q.映画を楽しみにしている方々にひと言をお願いします。

前田「最初から最後までの佑さんを楽しんでほしいです。周りにいる人も変わっていますが、中心にいる人が変わりすぎているので、周りの人が変なのも違和感ありません。それは佑さんの良さがあふれ出てる証拠なんじゃないですかね」

柄本「分かったよ、あとでアメ買ってやるよ。末井昭さんの体を通して、でき上がっているフィクション映画になっています。こういう時代があったことを知れるでしょうし、そういうことを体験してきた人やこういう時代があったのかと思ってもらえると思います。単純にフィクション映画としてそればかりに囚われないようにして、その世界は作り出されているので、身を任せていただければと思います。身を任せてばかりだと冨永監督の不可思議なストーリーテリングにやられると思いますので、2回3回と楽しんでいただければこちらとしては幸いです。とにかく映画館で見てください」

(オトナンサー編集部)

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