新型コロナ「第7波に入った」見方も 感染対策と熱中症対策、どう両立?
新型コロナウイルスの感染が再拡大し、東京都のモニタリング会議では「第7波に入ったとも考えられる」との発言がありました。熱中症対策と感染対策の両立などについて、専門家に聞きました。

新型コロナウイルスの感染が再拡大し、7月7日に開かれた東京都のモニタリング会議では「第7波に入ったとも考えられる」との発言がありました。厚生労働省の助言機関も6月30日、「全国的に上昇傾向に転じた」との見解を示しており、全国的にも再拡大が懸念されています。一方、平年より大幅に早く梅雨明けしていることから、熱中症対策と感染対策の両立も課題となりそうです。今後のコロナ対策について、医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
「BA.5系統」広がる
Q.新型コロナウイルスの新規感染者数が上昇傾向に転じました。どのような要因が考えられるのでしょうか。
森さん「いくつかの要因が重なって、新規感染者数が増加に転じたと考えられます。その一つに挙げられるのは、流行の主体はまだオミクロン株『BA.2系統』であるものの、『BA.5系統』が広がってきていることです。
先に流行した南アフリカやポルトガルの報告等によれば、BA.5系統はBA.2系統より感染が広がりやすい上に、ワクチンや過去の感染で得た免疫を回避する能力が高い可能性が指摘されていて、今後もBA.5系統が占める割合が高くなるにつれて、感染者が増加していくことが予想されます。
それ以外の要因としては、ワクチン接種からの時間の経過が挙げられます。オミクロン株での初回(1回目と2回目)接種の効果はデルタ株より低下することが分かっており、かつ、日本で2回目が多く接種された時期からも時間が経過しているため、感染を予防する効果は低いと考えられます。追加(3回目)接種によって、オミクロン株に対しての感染予防効果は一時的に回復すると報告されていますが、3回目についても時経的に効果は低下していくと考えられています。
また、海外からの入国者に対する検疫措置緩和の影響や、しばらく感染が落ち着いていたことから、人と人とが接触する機会が戻っていること、急な猛暑で窓を開けての換気がしにくくなったことなども、要因として考えられるでしょう」
Q.「BA.5系統」の特徴を教えてください。
森さん「『BA.5系統』は今年2月に南アフリカで検出され、その後、欧米を中心に69カ国(6月30日時点)から報告され、WHOは『懸念される変異株(VOC)における監視下の系統(VOC-LUM)』として注視しています。
日本では、4月29日に成田空港に到着した男性2人の感染が空港検疫で確認されたのが初めてでしたが、現在は国内の一部地域で徐々にBA.5系統の占める割合が上昇し、東京都では7月6日現在で33.4%が『BA.5系統疑い』と報告されました。今後、東京都などでは急速にBA.2系統からの置き換わりが進んでいくと考えられています。
特徴は、先述の通り、BA.2系統と比較して感染者の増加スピードが速いことです。東京都では7月6日に新規感染者が8341人と発表され、これは1週間前の2.2倍であり、BA.5系統への置き換わりによって感染者が急増していることが分かります。
また、BA.5系統は、ワクチン接種や感染で得た免疫への逃避能力が高まる可能性も指摘されています。これは、追加接種をしても感染予防効果は低下する可能性があることと、一度オミクロン株(BA.1系統、BA.2系統)に感染した人でも、再感染の可能性があるということです。
しかし、イギリスの報告では『(データは十分ではないものの)ワクチン接種による感染予防効果は、BA.2系統と比較して差がない』という見方もあり、今後の動向を注意深く見守り、情報をアップデートしていく必要があります。
一方、BA.5系統について、重症度や死亡率が高くなるいう根拠を示す情報はありません。BA.5系統の感染が拡大しているヨーロッパでも『重症度の上昇につながる兆候は見られない』と報告されています。ワクチン接種による重症化予防効果も、一定程度保たれると考えられています」
Q.今回の感染者増は「第7波の入り口」との見方も一部にあります。そう考えるべきなのでしょうか。
森さん「新型コロナウイルス感染症は、感染者の増加と減少の波を繰り返し、日本では流行の“波”がこれまで6回ありました。オミクロン株の最初の流行だった“第6波”は2月をピークに減少したものの、感染者数が下がりきらずに5カ月が経過しました。
7月6日発表の全国の新規感染者数は4万5000人を超え、全都道府県において『直近1週間の新規感染者数の7日間平均』が前の週より増加していることから、日本全体で増加に転じたことは明らかです。
先述したBA.5系統の特徴や、BA.5系統への置き換わりが進んでいる海外の状況からも、日本の新規感染者が急増することは予測され、しばらくは感染拡大していく可能性が高いと考えられます。今回の流行が医療提供体制や社会経済活動にどのような影響を与えるかは見えない面がありますが、感染状況としては次の“波”の入り口と見るのが妥当ではないでしょうか」
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