いま話題の「膣ケア」ってなに? 解決のヒントは膣にあった!
欧米では子どもの頃から学ぶのが当たり前という「膣ケア」について、分かりやすく解説した本を紹介します。
欧米では、小学生の時からお母さんに膣の洗い方やケアを学んだり、かかりつけの婦人科で体について相談したりするのが一般的です。しかし日本では、直近で妊娠や出産の予定がない限り、女性が自分の体について学ぶ機会は、なかなかありません。
今回は、膣や体のことを、漫画家の「あんじゅ先生」こと若林杏樹さんが、「ちつ姉」こと山口明美さんに教えてもらう様子を漫画にした「なんとなくずっと不調なんですが膣ケアで健康になれるって本当ですか? 」(サンクチュアリ出版)を紹介します。
日本の女性は無関心すぎる
日本の女性は美容には頑張りますが、膣トレや膣ケアには無関心な人がほとんどです。欧米では10歳ごろから膣ケアを母が娘に教え、フランスでは産後の膣ケアが保険適用です。ドラッグストアにも商品が並んでいます。最初に膣の機能について確認しておきましょう。
「私たちの体にはいくつかの穴があります。鼻、口、目、耳…、そして女性にしかないのが膣です。膣は生理で経血が出る場所で子供が出るときの産道です。膣は加齢や出産によってゆるみが生じると言われていますが、最近では、若い人や出産していない人にも増えています。洋式の生活や運動不足が原因と言われています」(ちつ姉)
「膣トラブルの原因は大きく2つあります。『膣の潤い不足』『骨盤底筋の衰え』です。そもそも膣は筋肉です。筋肉を粘膜が覆って粘液を分泌しています。筋肉のハリを保つ女性ホルモン『エストロゲン』の分泌量が減ると筋力が低下し潤いがなくなります。一生に出る女性ホルモンの量は大体決まっていて35歳頃をピークに減少していきます」(同)
また、ちつ姉は、女性の美をつくるエストロゲンは年齢によって分泌量が変化し、体にもさまざまな影響を及ぼすと指摘します。
「9歳~10代後半は一気に増えて女性らしい体になります。20代~30代前半は量が安定しピークに、30代後半からゆるやかに減少します。40代後半~50代前半になると、急激に減少し閉経を迎えて更年期障害が出始めます。50代後半になるとほぼなくなり子供の頃と同じくらいの量になり、生活習慣病にもかかりやすくなります」(ちつ姉)
「さらに、いまの私たちは、ストレスで女性ホルモンを乱しています。ストレスの他にも、不規則な生活、睡眠不足、ブルーライト、栄養不足、過剰なダイエットなども影響を及ぼします。出るべき女性ホルモンが出ないと不調や老化になり、肌トラブルやむくみを引き起こすので注意が必要です」(同)
筋肉の衰えにも注意が必要
さらに、トラブルの原因は膣の潤い不足の他に、筋肉の衰えがあるとも指摘します。
「膣を語るうえで知っておくべき筋肉が骨盤底筋です。骨盤のなかに、膀胱(ぼうこう)、子宮、腸があり、これらをハンモックのように支えている筋肉が骨盤底筋です。ここが弱ってしまうと、月経トラブルや臓器自体が下がることもあります。膣を支えていた骨盤底筋がゆるむと、膣のゆるみにつながります。健康でいるためにも骨盤底筋トレーニングが必要です」(ちつ姉)
女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」の策定が、常時雇用する労働者数101人以上300人以下の企業にも義務付けられました。国の女性活躍を促進させる施策も浸透しつつあり、出産後に仕事を続ける女性も増加しています。
しかし、経済産業省の「フェムテックに関する経済産業省の取組」では、月経随伴症状による労働損失は4911億円と試算されています(フェムテックとは、Femaleと Technologyからなる造語。今後さまざまな製品・サービスの上市による市場拡大が期待されている)。
本書は医師と専門家が完全監修を行っています。安田進太郎氏(医学博士)、和田浩幸氏(一般社団法人日本美容整骨協会理事)、高須賀千絵氏(ラヴィコーポレーション代表)、足立真由美氏(医療法人涼葵会Wクリニック総院長)、宮崎綾子氏(日本産科婦人科学会、産婦人科専門医)。
女性の健康問題を解決することは、企業や社会にとっても大きな課題であることが認識されてきています。まずは、私たち一人ひとりが自分の体のことについて理解することが大切です。膣を守ることは、自分を守ること。後悔しないために、多くの女性に読んでほしい一冊です。
(コラムニスト、著述家 尾藤克之)
コメント