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犬の足に“融雪剤”がつくと炎症を起こすのでご注意を…「怖い」「ペット用靴って有効」、獣医師に聞く

大雪などの際に使用される「融雪剤」について、「犬の足につくと炎症を起こす」という趣旨の投稿が話題に。「こういう情報を知らないと怖い」などの声が上がっていますが、専門家の見解とは。

雪道の散歩には注意が必要?

 SNS上で「融雪剤」に関する投稿が話題となっています。1月の関東地方での積雪により、白い粒状の融雪剤が多くの場所でまかれた際、投稿者は「融雪剤は塩化カルシウムで人が素手で触ると皮膚が炎症を起こします。ワンコ(全ての動物)も足に付くと炎症を起こすことがありますので十分ご注意ください」と呼びかけました。これを受けて「便利なものだけど、こういう情報を知らないと怖い」「我が家の犬も肉球負傷したことあります」「ペット用の靴ってかなり有効なのね」などさまざまな声が上がりました。

 実際、融雪剤は犬などのペットにとって有害なのでしょうか。オトナンサー編集部では、公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)広報担当理事で獣医師の吉田尚子さんに聞きました。

塩化カルシウムが水と反応して発熱

Q.融雪剤は動物にとって有害なのでしょうか。

吉田さん「融雪剤に使われている成分によって異なりますが、その多くには塩化カルシウムが使われているようです。接触や誤飲、雪を食べた場合、量にもよりますが、犬猫をはじめとする動物や人間にとって有害となることがあります。主な理由は、塩化カルシウムが水と反応することによって発熱し、皮膚や消化管粘膜を刺激することと考えられます。多くは一時的な刺激で済みますが、大量に付着した状態で放置すると軽度の熱傷のようになります」

Q.融雪剤をなめたり、毛に付着したりした場合も何らかの症状が出ますか。

吉田さん「犬は自分の足や体表に何か異物が付いていると、それらをなめて取ろうとします。そのため、雪が付いたまま、あるいは濡れたままの状態だと、雪に混じり込んだ融雪剤を一緒になめることで胃腸を刺激し、おう吐や軽度の腹痛、下痢(げり)などの症状を示すこともあります。犬が雪の中ではしゃぎ回り、背中を雪の地面にすり付けている様子を目にすることもよくありますが、こうした場合、融雪剤が散布されている場所かどうか確認が必要です」

Q.大量に体内に入れた場合、死に至ることもあるのでしょうか。

吉田さん「動物では考えにくいですが、融雪剤が入っている雪を大量に食べたり、小児が誤って飲んだりしてしまうと、胃腸障害に加え、体液が急激に酸性に傾き、血液中のカルシウムが多くなることでさまざまな症状を併発することがあります。人間の場合、成人の推定致死量は経口摂取で30グラムです。ただし、薬剤自体は苦みがとても強いため、そのものを大量に飲んでしまうことはまれのようです」

Q.犬が散歩中に融雪剤を踏むなどした場合、どのように対処すべきですか。

吉田さん「目や皮膚に付着した可能性がある場合は、なるべく早く十分な水でよく洗ってください。なめたり飲み込んだりした場合は、なるべく早く動物病院に連絡し、その量やタイミングをお知らせください。皮膚の炎症の薬や胃腸粘膜の保護など処置が必要な場合があります。すでに犬に何らかの異変があったら、連絡と同時に速やかに受診できるようにしましょう。ちなみに、欧米の雪の多い地域では、融雪剤や雪に隠れた鋭利なものを踏むことによるケガなどを避ける目的で、蜜蝋(ミツロウ)など天然成分のワックスを足パットに塗ったり、犬用の靴(ブーツ)を履かせたりする方法も紹介されています。ただし、靴を履くことに慣れていない犬は靴自体を気にして靴を誤飲してしまうなど、かえって大きな事故につながる可能性もあるため、十分に気を付けてください」

(オトナンサー編集部)

吉田尚子(よしだ・なおこ)

獣医師、公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)理事

家庭動物診療施設「獣徳会」勤務。NPO法人「CANBE子供のための動物と自然の絆 教育研究会」副代表。一般財団法人クリステル・ヴィアンサンブルアドバイザー。名古屋市動物愛護推進委員。海外留学やテレビ局勤務を経て獣医師に。「人と動物の絆」に基づく丁寧なコミュニケーションを心がけている。動物介在教育や小児科病棟でのアニマルセラピーに医療チームと共同で取り組むほか、滝川クリステル氏とともにペットの殺処分問題関連の活動も行っている。

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