フードコートで料理を落とす→無料で作り直しの要求、法的に可能か?
フードコートで、注文した料理を自らテーブルまで運ぶ途中、人とぶつかったり、つまずいたりして、料理を床に落とすことがあります。そのとき、店に無料で作り直しを求めることは、法的に認められるのでしょうか。
週末のフードコートでは、家族連れが食事をする光景がよく見られます。注文した料理をカウンターまで取りに行き、自らのテーブルまで運ぶことが一般的ですが、運ぶ途中で人とぶつかったり、つまずいたりして、床に落としてしまうケースもあります。そうした時、購入した店に事情を話すと、無料で作り直してもらえることがあり、それを当たり前と考える人もいるようです。精算後、客が料理を床に落としたとき、店に無料で作り直しを求めることは、法的に認められるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
精算後は基本的に客側の責任
Q.フードコートで客が料理を床に落としたのに、店に無料で作り直しを求めることは、法的に認められるのでしょうか。
佐藤さん「法的には、認められないでしょう。
一般に、フードコートでは、店側が客に飲食物や、それらを飲食する場を提供し、客がそれらの対価を支払う契約を交わしているものと考えられます。店がテーブルまで料理を運ぶことは契約内容に含まれていないのが一般的でしょう。
すると、店側は、飲食物を引き渡した時点で義務を果たしているといえます。逆に言えば、客は料理を受け取った後、契約に基づいて店側に何らかの請求をすることはできないということになります」
Q.では、無料での作り直しを客から求められた場合、店側は拒否することも可能ということですね。
佐藤さん「先述したように、法的に認められるわけではないので、拒否することも可能です。ただし、事情を聞いた上で、“好意”で作り直し、無料で提供してくれる店もあるかもしれません。客側は、無料での作り直しが当たり前と思ってはいけないと思います」
Q.急に飛び出してきた人とぶつかるなど、不可抗力で料理を落とすこともあります。こうした場合でも、店に無料で作り直しを求められないのでしょうか。あるいは、ぶつかってきた人に弁償してもらうのが妥当なのでしょうか。
佐藤さん「急に飛び出してきた人とぶつかって、料理を落としてしまった場合も、店側に無料で作り直しを求めることはできません。なぜなら、先述したように、店側は、料理を提供する義務を果たしていますし、一般的には、急に飛び出してきた人とぶつかったことについて、店側に何らかの過失があるとも考えにくいからです。
この場合、ぶつかってきた人に対して、弁償を求めることはあり得ます。ぶつかってきた人の過失のせいで、購入した料理が食べられなくなってしまったと言えるからです。
ただし、料理を落としてしまった側からは、『相手が急に飛び出してきた』ように見えたとしても、実は、ぶつかったのは相手のせいだけでなく、自分にも落ち度があることも考えられます。そのような場合には、相手にも自分にも過失があることになり、全額の弁償を求めることはできません。
また、こうしたケースでは被害を受けた側が感情的になりがちです。不要なトラブルを起こさないためにも、高圧的な態度で弁償を求めるようなことは避けましょう」
Q.子どもが「運びたい!」と言って、料理を子どもに運ばせる親もいます。つまずいて料理を落としてしまう子どももいますが、やはり、店に無料で作り直しを求めるのは無理ですね。
佐藤さん「この場合も、店に無料で作り直しを求めることはできません。先述したように、契約上、店には料理をテーブルまで運ぶ義務がなく、あくまで客の責任で運ぶことになります。
客は、自らの責任のもと、子どもに料理を運ばせることもできますが、子どもが失敗して料理がだめになってしまったとしても、契約に基づき、店側に何らかの請求をすることはできません」
Q.精算後に料理を床に落とせば、どのような事情でも客側の責任と考えた方がよいのでしょうか。
佐藤さん「基本的には、料理が引き渡された後に料理を落とせば、客側の責任になるでしょう。例外的に、例えば、店の床が極端に滑りやすくなっていたなど、店側に過失が認められ、店の責任を問えることもあるかもしれません。
また、先述したように、第三者が突然ぶつかってきたなど、第三者の責任を問えるケースもあるでしょう。しかし、こうした例外的ケースはまれだと思います。
客が引き渡された料理を床に落とした場合に、店側が無料で作り直すのは、あくまで“好意”だと思います。おいしく料理を食べるためにも、受け取った料理は気を付けて運ぶようにしましょう」
(オトナンサー編集部)
コメント