静寂の中「キーン」「ジーン」…「耳鳴り」は病気のサイン? 気にしなくていい?
周囲が静かなとき、「キーン」「ジーン」といった音が聞こえることはないでしょうか。「耳鳴り」は健康上、何らかの問題があるのでしょうか。医師に聞きました。

周囲が静かなとき、「キーン」「ジーン」といった音が聞こえることはないでしょうか。「耳鳴り」と呼ぶものだと思われますが、耳鳴りは健康上、何らかの問題があるのでしょうか。病気が潜んでいることはないのでしょうか。わしお耳鼻咽喉科(兵庫県西宮市)の鷲尾有司(わしお・ゆうし)院長に聞きました。
メニエール病や中耳炎の可能性も
Q.周囲が静かなときなどに「キーン」「ジーン」といった音が聞こえることは、「耳鳴り」といってよいのでしょうか。なぜこうした現象が起きるのでしょうか。
鷲尾さん「耳鳴りの定義は、『明らかな体外音源がないにもかかわらず、感じる異常な音感覚』とされています。簡単に言うと、自分が耳鳴りと思ったものは、すべて耳鳴りということになります。
今のところ、耳鳴りのメカニズムに関しては十分に解明されていません。一般的に無音室などで聞こえる『キーン』『ジーン』といった音は耳鳴りに当てはまりますので、『誰でも耳鳴りは聞こえる』ことを前提に考える必要があります」
Q.耳鳴りは何らかの病気のサインである可能性はあるのでしょうか。それとも健康上、問題ないのでしょうか。
鷲尾さん「耳鳴りは病気の名前ではなく、症状の一つです。ただし、『誰でも耳鳴りは聞こえる』という前提で考えるため、病気がなくても起こり得る症状といえます。
病気の症状である場合には、耳鳴りだけでなく、難聴や目まいなどの症状があることが多いです。反対にそういった症状がなければ、病気が隠れていることは少ないといえます。しかし、ほかの症状に気付いていないだけかもしれません。『ほかの症状がないから、絶対に病気ではない』とは言えませんので、気になるようであれば、一度耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします」
Q.どのような病気の可能性があるのでしょうか。
鷲尾さん「耳鳴りは大きく2つに分けて考えます。有難聴耳鳴(ゆうなんちょうじめい。聞こえの悪さを伴う耳鳴り)と無難聴耳鳴(聞こえの悪さを伴わない耳鳴り)です。
耳鼻咽喉科では、まず鼓膜の状態を確認した上で、聴力検査で難聴の有無を調べます。必要に応じて、エックス線検査やコンピューター断層撮影装置(CT)などによる画像診断も行って、診断をつけていきます。検査で異常が見つかれば、原因疾患の結果として、耳鳴りが起こっていると考えます。
有難聴耳鳴の場合には、突発性難聴やメニエール病、中耳炎などに加えて、老人性難聴など、さまざまな耳の病気が疑われます。また、高血圧などの血管病変でも、拍動性の耳鳴りを感じる場合があります。
耳鳴りの原因となる病気があって、治療が必要な場合は、病気の治療を行うことが第一です。突発性難聴やメニエール病、中耳炎などが耳鳴りの原因となる場合は、それぞれの病気に対する治療が、耳鳴りの改善につながります。
自然治癒する病気もありますが、あくまでも一部の病気のみですので、自己判断せずに耳鼻咽喉科で診断を受けることです。特に、急に耳鳴りが出てきた場合は、速やかに治療を行わないと、ずっと改善しないことがあります。
なお、無難聴耳鳴の場合でも、検査によって病気が見つかる場合があります」
Q.耳鳴りが気になる場合の対策を教えてください。
鷲尾さん「気になる程度によって対応が異なりますが、雑音が多い環境や他に集中している時などには気にならない人は、寝るときにのみ、気になる場合が多いと思われます。そのような時は、小さく音楽をかけながら寝るなどすると、徐々に気にならなくなります。
うまくいかないようであれば、耳鼻咽喉科での耳鳴治療をおすすめします。耳鼻咽喉科で行う耳鳴りの治療としては、薬物療法や音響療法、心理療法などがあります」
(オトナンサー編集部)
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