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江口洋介“最強の2番手”が作品にもたらす深みと重み

日本テレビ系連続ドラマ「ネメシス」出演中で、近年、ドラマや映画などさまざまな作品への出演が続く江口洋介さん。その特徴や魅力を専門家に聞きました。

江口洋介さん(2015年9月、時事通信フォト)
江口洋介さん(2015年9月、時事通信フォト)

 現在放送中の日本テレビ系連続ドラマ「ネメシス」(毎週日曜 後10:30)に出演している俳優・江口洋介さん。同ドラマは、天才すぎる助手・美神アンナ(広瀬すずさん)とポンコツ探偵・風真尚希(櫻井翔さん)の凸凹バディーが超難解な事件を次々に解決していくミステリーエンターテインメント。江口さんは探偵事務所「ネメシス」のCEO・栗田一秋を演じています。

 近年、ドラマ「七人の秘書」(テレビ朝日系)や主演を務めた「天使にリクエストを~人生最後の願い~」(NHK総合)の他、4月23日から最新作が公開された映画「るろうに剣心」シリーズなど、さまざまな作品への出演が続く江口さん。その特徴や魅力について、作家・芸能評論家の宝泉薫さんに聞きました。

「画面の中で大きな存在感」

 1987年公開の映画「湘南爆走族」で主人公・江口洋助役に抜てきされ、注目を集めた江口さんは1990年代に放送された「東京ラブストーリー」「愛という名のもとに」(いずれもフジテレビ系)などのトレンディードラマに出演。主演ドラマ「ひとつ屋根の下」「救命病棟24時」(同)はいずれも大ヒットを記録するなど、俳優として確固たる地位を築いていきました。

 以降も多数のドラマや映画に出演を重ね、今もなお活躍が続く江口さんについて、宝泉さんは「画面の中で大きな存在感を示せる俳優」と評します。

「見栄えも良く、声もいいので目にも耳にも記憶に残り、画面に映るだけで存在感を示せる俳優です。ドラマや映画に比べて出演は少ないですが、舞台でも江口さんの姿は映えるはずです」(宝泉さん)

「近年は助演での出演も増えていますが、それでも存在感を示せるのは江口さんならではの大きな魅力。現在放送中の『ネメシス』でも、ダブル主演の広瀬さんと櫻井さんの2人に江口さんが加わることで、作品に深みと重みをもたらしています」

 江口さんにとって、織田裕二さんの存在がプラスになったと宝泉さんは話します。

「江口さんのこれまでを振り返ってみると、本当に切れ目なく、幅広いジャンルの作品に出演し続けてきたんだなと改めて感心しました。同世代でデビューの時期も近い、織田裕二さんと比較されることが多い江口さんですが、織田さんの存在もプラスになっていたように感じます」

「特にトレンディードラマ全盛の頃は、織田さんが世代のトップとして走っていたこともあり、江口さんは俳優としての価値を消耗することなく、ある程度、自分のペースを保ちながら活動できていたのではないでしょうか」

 宝泉さんは、江口さんの俳優としての特徴についても言及しています。

「単独で主演というよりは、男同士のライバル関係のような役柄が非常に似合い、これは昔から変わらない江口さんの特徴の一つです。織田さんと江口さんが共演した『湘南爆走族』『東京ラブストーリー』を振り返っても、2人が対になっているような構図が多く見られます」

「また、デビューして10年くらいは歌手活動も行っていた江口さんですが、森高千里さんと結婚を発表した1999年ごろを境に俳優業一本にシフト。俳優業に専念したことで主演にこだわらず、いろいろなことをやっていこうというスタンスになったのも、結婚が一つのきっかけだったのかもしれません」

“最強の2番手”タイプで起用しやすく

 近年の出演作の中に、俳優として転機になった作品があると宝泉さんは言います。

「『コンフィデンスマンJP』出演は俳優として、転機の一つだったのではないでしょうか。最後の最後でだまされてしまう、ちょっぴりカッコ悪いキャラクターを面白く演じていて、これまであまり見られなかった、江口さんの新境地とも言える役柄でした」

「加えて、昨年放送のドラマ『七人の秘書』で、秘書たちの元締めという役どころを演じていましたが、このポジションでの起用は、江口さんの今後の方向性を暗示していたような気がします。一歩引いたところからヒロインたちを見守る立場で、その姿が妙にしっくりきていました」

 宝泉さんは、今後の江口さんの活動についても期待を寄せています。

「助演でありながら存在感を示せる“最強の2番手”タイプになったことで制作側も起用しやすくなり、本人もこのポジションに手応えを感じているはずです。ドラマ版の第1話でゲスト出演にすぎなかった『コンフィデンスマンJP』で、その後、映画がシリーズ化された際にレギュラーキャストとして起用されたことは、制作側の信頼を勝ち取ったことの表れでしょう」

「また、江口さんが画面に登場すると何かが起こるような期待感を抱く一方で、実は裏の顔があるかのような黒幕的存在、策士のような役柄が似合うようになってきたと、ここ数年は特に感じています。今後もそういう役どころでの起用が増えるのではないかと期待していますし、江口さんなら、しっかりと応えてくれるはずです」

(オトナンサー編集部)

宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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