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災害時のライフライン「公衆電話」、利用なく激減? 知らない世代も? その現状は

東日本大震災から、明日で10年。大災害時、頼りになるのが「公衆電話」ですが、設置台数も利用者も激減しています。その現状を探りました。

東日本大震災直後、携帯電話がつながりにくくなり公衆電話に行列(2011年3月、時事)
東日本大震災直後、携帯電話がつながりにくくなり公衆電話に行列(2011年3月、時事)

 3月11日、東日本大震災の発生から10年を迎えます。震災後も日本ではたびたび、大きな災害が起きていますが、大災害時に頼りになるのが携帯電話よりつながりやすい「公衆電話」。しかし、携帯電話の普及などでその利用機会は減少し、設置台数も激減。スマホに慣れた若い世代や子どもたちの中には「公衆電話を使ったことがない」「使い方も知らない」という声さえあります。公衆電話の現状を探りました。

1日1回も使用されない電話も

 公衆電話には「第1種」「第2種」「災害時用公衆電話」という種類があり、第1種は、電気通信事業法施行規則で「市街地ではおおむね500メートル四方に1台」「それ以外の地域はおおむね1キロメートル四方に1台」設置することが決められています。第2種は、百貨店など多くの人の利用が見込める場所に設置され、災害時用公衆電話は役所や避難所に配備されるものです。

 NTT東日本とNTT西日本によると、ピーク時の1984年度末に93万台強あった公衆電話(1種と2種の合計)は、2019年度末には約15万1000台に減少。ほかに災害時用公衆電話もありますが、日常的に使える公衆電話は6分の1に激減しています。利用回数も1台平均で年間300回弱(NTT東日本管内、2019年度)と、1日1回も利用されないものもあることが分かります。

 NTT東日本の広報担当者に聞きました。

Q.公衆電話の存在意義、特に災害時の利点について教えてください。

担当者「災害時等の緊急時に電話が混み合い、通信規制が実施される場合であっても、公衆電話は通信規制の対象外として優先的に取り扱われます。また、NTT東日本の通信ビルから電話回線を通じて電力の供給を受けているため、停電時でも電話をかけることができます(NTT西日本管内も同様)」

Q.最近の収支はどうなっているのでしょうか。

担当者「(NTT東日本管内の)公衆電話の2019年度の営業収益は約26億6800万円、営業費用は約73億9700万円で営業利益は47億2900万円のマイナス(赤字)となっています」

Q.「ユニバーサルサービス制度」として、維持費の一部が携帯電話料金から賄われていると聞きます。

担当者「ユニバーサルサービス料は1電話番号あたり月額3円(税別、2021年1月時点)となっています」

Q.第1種公衆電話以外は撤去を進めていると聞きましたが、事実でしょうか。

担当者「NTT東日本では法令に基づき、社会生活上の安全、および戸外における最低限の通信手段の確保を目的に設置している第1種公衆電話は、設置を継続することとしています。一方、第2種公衆電話のうち、ご利用が見込まれないものはお客さまの利用状況に配慮しつつ、受託者の同意を得た上で撤去しています」

Q.将来的に公衆電話はどうなっていくのでしょうか。

担当者「通信環境の変化に伴い、戸外ではSNSやチャットなどテキスト(文字)中心のコミュニケーションが増加しており、公衆電話など音声中心の通信手段の利用は減少してきています。一方、携帯電話のバッテリー切れや災害の発生直後など通話が集中する状況における通信手段として、公衆電話は活用されていると認識しており、当社としては災害時の拠点となる場所に災害時用公衆電話の設置を実施しています。

こうした公衆電話の社会的役割の変化に合わせ、総務省の委員会で、現行のルールなどの見直しについて議論されています」

Q.公衆電話の使い方を知らない子どもが増えていると思います。講習会などは開かれているのでしょうか。

担当者「NTT東日本が2018年11月に実施した公衆電話に関する調査では、小学生の77.0%が公衆電話を使ったことがなく、27.3%が存在自体知らないという結果でした。保護者の皆さまから、『自分の子どもが公衆電話の使い方を知らないことに強い危機意識を持っている』との声が数多く寄せられていることもあり、NTT東日本では、子ども向けに使い方を伝えるイベントを開催したり、緊急時や災害時にも子どもたちが公衆電話を通じて家族と連絡が取れるよう、子どもたちの印象に残る啓発活動を実施したりしています。

また、タカラトミーアーツ社さまには(公衆電話型のミニチュアの)『ガチャ』の商品企画・販売をしていただき、小学館さまには児童学習誌『幼稚園』で、公衆電話特集をしていただきました。両企画とも、子ども向け啓発の観点でも好評を得ているとお聞きしています。

当社のホームページ内にある『はじめての公衆電話キッズページ』では、公衆電話の使い方を楽しく学べるよう、公衆電話に関するクイズをはじめ、緊急時の連絡先や使い方を記した『使い方カード』が作成できるコンテンツを紹介しています。ぜひご覧ください」

(オトナンサー編集部)

【画像】「幼稚園」付録の”公衆電話”と「はじめての公衆電話キッズページ」

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