オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

川栄李奈、結婚・出産を経ても引っ張りだこの「日常を演じる」才能

NHK大河ドラマ「青天を衝け」に続き、連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」にも出演する川栄李奈さん。その魅力の源泉に迫ります。

川栄李奈さん
川栄李奈さん

 2021年度後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のヒロインの一人に川栄李奈さんが選ばれました。彼女は2月14日スタートのNHK大河ドラマ「青天を衝け」(毎週日曜 後8:00)にも出演。同じ年の朝ドラと大河に一人の役者が重要な役で登場するのは、極めて異例なことです。

 また、彼女は昨年の「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(日本テレビ系)、現在放送中のフジテレビ系連続ドラマ「知ってるワイフ」(毎週木曜 後10:00)と民放の連ドラに2クール続けて出演しています。

 前者はコロナ禍での恋愛をSNSでの交流を絡めながら描いた作品、後者はタイムスリップという設定を使って結婚の本質を掘り下げる作品です。このユニークな切り口の2つのドラマで、彼女は持ち前の、明るく自然な演技を披露し、存在感を発揮しています。

「主演の邪魔をせず、存在感を放つ」

 そんな川栄さんですが、プライベートではおととしの5月、俳優・廣瀬智紀さんと結婚。半年後には第1子を出産しました。おめでたい話とはいえ、女優としてめきめきと頭角を現し、上り調子のさなかだっただけに驚きをもたらしたものです。「しばらく仕事一本で行けばいいのになぜ」「ここで休んでしまって大丈夫?」といった疑問や危惧の声も上がりました。

 しかし、昨年6月に仕事を再開。復帰作は連ドラ「BG~身辺警護人~」(テレビ朝日系)第2シリーズ第2話のゲストヒロインでした。全盲の天才ピアニストという難役をこなす姿を見て、芸能界がいかに彼女を評価し求めているか、改めて実感したものです。

 ではなぜ、彼女は評価され、求められるのでしょう。インタビューで彼女は「私、地味なので」としつつ、「主演の邪魔をしない」「他の人が目立つ場面では極力自分を消し」「でも存在感を出す」(クランクイン!)ことを意識していると語っています。簡単なことではありませんが、脇役をやるときの彼女はまさにこれを実行できているのです。

 例えば、出世作となった朝ドラの「とと姉ちゃん」(2016年度前期)。彼女はヒロインが身を寄せる下町の弁当店の娘を演じました。自分の意志で進学より働くことを選択しながらも、ヒロインの妹の制服姿に嫉妬したりする乙女心を巧みに表現していたものです。

 そこには生来の性格に加え、AKB48時代に培われたスキルやイメージも生かされているのでしょう。いわゆる「神7」のような高みには到達できず、選抜総選挙の最高順位は16位。だからこそ、第2集団としてどう自分をアピールするかというスキルを持ち、見る者もそのイメージを重ねるのです。

 また、彼女には当初、「おバカキャラ」というイメージもありました。AKB時代に出演した「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)で発見されたキャラです。これが生かされたのが2017年の連ドラ「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ系)。彼女の役は「明るいヤンキー」で、メインとは別の恋を切なく演じました。

「とと姉ちゃん」もそうですが、彼女には庶民的な役がよく似合い、日常的な空気を醸し出すのも得意です。いかにも芸能人っぽい派手さとか、ガンガン前に出る押しの強さがない分、春の日だまりにも似た穏やかな明るさがあり、それが身近さや癒やしにもつながっています。

 もっとも、本人は明るい性格ではないと言っていますが、かといって暗い性格でもありません。インタビューでは「普段からあまり落ち込まないタイプなので、壁にぶつかったときも『違う方法を考えればいいや』と気楽に考えています。(略)気楽に考えた方が、絶対に楽しいので」(モデルプレス)と明かしています。だからこそ、握手会で暴漢に襲われ、けがをするという7年前の事件によるショックも乗り越えられたのでしょう。

1 2

宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

コメント