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白石麻衣&西野七瀬共演 「広告」に見る俳優育成グループとしての乃木坂46

コメディームービー「乃木坂毎月劇場」

 一方、昨年5月から継続的にウェブ展開されている広告企画がサンヨー食品「カップスター」「和ラー」をPRするコメディームービー「乃木坂毎月劇場」(監督・脚本:オークラ)です。齋藤飛鳥さんら乃木坂46メンバーとお笑いトリオ・東京03が共演し、シェアハウスを舞台にした連作が毎月発表されています。

 毎回、商品をPRするくだりを設定しつつも、いわゆる、シットコム的な連続ドラマとしてのクオリティーを保った同ムービーもやはり、単純に商品に従属するのではないコンテンツの充実度が楽しまれているタイプの企画です。また、平熱なテンションを保ちながら、オフビートな笑いを生み出してみせる乃木坂46と東京03のやりとりはコメディーも当然ながら、「演技」の安定感によって支えられるという基本を再認識させてくれます。

 さらに、昨年11月から12月にセブンイレブンアプリとスマホゲーム「乃木恋」によるキャンペーンで企画された「乃木恋デイズ」でも、乃木坂46は連作ショートムービーの演者となります。「愛がなんだ」「his」などの映画作品で知られる今泉力哉さんが監督・脚本を務めるこの企画は、グループの培ってきた「演技」にまつわる特性を最も色濃く映し出しています。

 乃木坂46メンバーが2人一組でダブル主演を務めた計14話のドラマは毎回、作中にセブンイレブンで販売している食品を取り入れながら、人間関係の機微を捉えた作品になっています。いずれも、おおよそ5分前後の短い尺だからこそすくい取れる、ささやかな1コマを描写していますが、これらはまさに先述の「個人PV」に代表される乃木坂46の映像作品群の変奏といえるでしょう。今泉監督自身、2014年から、乃木坂46の映像作品で度々、ドラマを手掛けてきた人物でもあります。

浮かび上がるメンバー同士の関係とキャリア

 列挙してきたようなドラマ型広告はそれぞれ、単独のドラマ作品としての充実度を志向したプロジェクトですが、それらは演技者を育む組織としての乃木坂46の特性を強く反映したものでした。それゆえ、広告キャラクターと企画性とが、とりわけ好相性をみせている例と言えるでしょう。

 そして、また、同一グループのメンバーがさまざまなフィクションを描くことで、物語上の人物配置の背後に演じるメンバーたち自身の日常的な関係性を投影するような見方も生まれてきます。「乃木恋デイズ」で今泉監督が描く、他者同士の繊細な距離感の表現に顕著ですが、虚構の筋書きでありつつ、それらを2人一組で演じるメンバー同士の先輩・後輩関係、同期としての関係、あるいは個々のキャリアをなぞるような設定などが浮かび上がってくるのは、このようなコンテンツの醍醐味(だいごみ)です。組織が長い歴史を持つほどにそれらの関係性は幾重にも広がっていきます。

 話を冒頭のトピックに戻せば、今春の白石麻衣さんと西野七瀬さんの共演は、これらの組織的な物語の先にあるものです。

 白石さん、西野さんがどのようなシチュエーションを演じるのかにも注目ですが、同時に、その背景にある関係性――巨大な有名性を持つグループのシンボル的立場を引き受け、あらゆるベクトルから向けられる大量の言葉や視線の矢面に立ちながら、自身のキャリアを模索してきた2人がそれぞれの道を歩む中で再び巡り合うこと――そのものが、強い感慨をもたらすことも間違いないでしょう。

(ライター 香月孝史)

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香月孝史(かつき・たかし)

ライター

1980年生まれ。ポピュラー文化を中心にライティング・批評やインタビューを手がける。著書に「乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟」「『アイドル』の読み方 混乱する『語り』を問う」(ともに青弓社)、共著に「社会学用語図鑑 人物と用語でたどる社会学の全体像」(プレジデント社)、執筆媒体に「RealSound」など。

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