王道ラブコメ「恋はつづくよどこまでも」が最強の“医療ドラマ”でもある理由
上白石萌音さん扮する新人ナースと、佐藤健さん演じるイケメン医師との恋愛模様を描く「恋はつづくよどこまでも」。王道ラブコメであることはもちろん、医療ドラマとしての側面が人気の理由のようです。
TBS系の火曜ドラマ「恋はつづくよどこまでも」が熱い盛り上がりを見せています。毎回、放送終了後にはSNSに関連のタグがいくつも上がり、視聴率も右肩上がり。2月25日放送の第7話では平均視聴率11.9%を記録し、自己最高を更新しました(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
好調の理由については、今どき珍しいほど王道のラブコメであることが指摘されています。
同名マンガを原作に、主演の女優・上白石萌音さん扮(ふん)する新人ドジっ子ナース・七瀬と佐藤健さん演じるツンデレなイケメン医師・天堂との恋愛模様が描かれ、毎熊克哉さんや蓮佛美沙子さんといった脇を固める登場人物のキャストも魅力的。まさに、胸キュン(死語?)が止まらない展開です。
「公」を描くからこそ、「私」が輝く
しかし、それだけではありません。この作品、医療ドラマとしても実によくできているのです。それは初回の時点ではっきりと感じられました。
まず、冒頭の出会いのシーン。まだ女子高校生だった七瀬が急病人を見つけ、助けを呼びます。それを聞きつけた天堂が適切な処置を行い、病人を救います。
それ以来、天堂を思い続けた七瀬は5年後、ナースになり、天堂と同じ病院に配属されます。そして、心臓移植を控えた13歳の少女を2人で救うのですが、特に、少女の心の異変に気付いた七瀬がファインプレーを見せました。「命を預かる、助ける、それ以外はどうでもいい」という天堂と、「誰かを助けたい、今の私の夢です」という七瀬の気持ちがシンクロした瞬間でもあります。
これが第1話のクライマックスとなり、その直後、山本耕史さん扮する副院長のこんな発言が紹介されました。
「病院には病人の方がたくさんいらっしゃって、医者は病を、看護師は人をみる」
この発言は、2人の未来も暗示していたのでしょう。立場の違う男女が同じ目的に向かって力を合わせ、時にギクシャクしながらも、その中で尊敬を深め、恋も育まれていく。いわば、この作品は医療をテーマにした「バディー」ものでもあるのです。
そんな、バディーものとしての魅力がよく表れていたのが、第5話です。主任看護師の息子の不整脈を天堂が治療中、ぜんそく発作が起きている可能性を七瀬が指摘します。患者がせき込んだり、メンソールをなめていたりしていたのを見逃さなかったが故の気付きでした。
こうした仕事面、すなわち「公」の部分をきちんと描いているからこそ、恋愛という「私」の部分がより輝くともいえます。それは、この「火曜ドラマ」という枠の伝統かもしれません。ここでは、公と私の間で揺れる葛藤が度々、主要テーマになってきたからです。
例えば「初めて恋をした日に読む話」は、塾講師と高校生が年の差恋愛をしながら東大合格を目指す話でした。また、同じく年の差恋愛の話である「中学聖日記」も、お互いが寂しさに堪え、それぞれの本分を全うした上で再会、ハッピーエンドを迎えます。「わたし、定時で帰ります。」でも働き方と恋愛、結婚を巡る葛藤に焦点が当てられました。
「恋つづ」のプロデューサー・宮崎真佐子さんも、こう語っています。
「『逆に、恋愛ドラマがド真ん中な分、新人ナースの当たる壁、医療現場の現実もちゃんと描かないとね』って、脚本の金子ありささんとは話していて。病院という舞台上、『ドジっ子な見せ方は難しいね』って言いながら、作っているんですけれども。とにかく不謹慎にならないように描こうと意識しています」(「Real Sound」2020年2月18日掲載)
ちなみに、金子さんは「ナースのお仕事」(フジテレビ系)にも関わった脚本家。医療ものでのドジっ子の見せ方には実績があります。
ただ、「不謹慎」うんぬんについては、心配のし過ぎではとも感じます。というのも、この作品で描かれる病院の風景はかなりリアルだからです。
私事になりますが、筆者の妻は医師で、知り合ったのは彼女が研修医になりたての頃でした。注射の際に緊張していると、若い患者さんから「先生、頑張って!」と励まされたとか、飲み会で医師とナースの恋バナが盛り上がったとか、青春っぽくて楽しい話も聞かされたものです。思うに、人命を扱う職場だからこそオンオフの切り替えが大事で、私の充実が公での成果につながるのでしょう。
コメント