グレタ・トゥーンベリさんを批判する“大人たち” 心理の専門家はどう見る?
今年は、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが話題となりましたが、彼女の一連の行動について、激しく批判する大人もいました。

今年は、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)が話題となりました。9月の国連気候行動サミットで、「経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり」「私はあなたたちを絶対に許さない」などと各国代表を批判し、若者を中心に多くの人の支持を集めました。その一方で、トランプ米大統領など著名人による批判も目立ち、ネット上でも彼女をやゆする意見が飛び交っています。
大人たちはなぜ、彼女を激しく批判するのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
経済力と発言力を持つ男性
Q.海外では、トランプ米大統領や高級ブランド「ルイ・ヴィトン」を擁するLVMHグループのベルナール・アルノー氏、国内では、堀江貴文氏などの著名人が「若者の士気を下げる」「人間が人間であることを否定することになる」などとグレタさんの言動を批判したり、皮肉ったりしています。なぜ、彼らは彼女に批判的なのでしょうか。
小日向さん「彼女を批判している人の多くについて『中高年男性』といった年齢や性別ではなく、『価値観』で分類した方が理解しやすいと思います。その価値観とは『人間はより快適で利便性の高い生活を求めて常に進化していく生き物であり、それこそが個人や世界の幸福につながる』というものです。
グレタさんの活動に対して『人間であることを否定することになる』という発言は、その価値観をよく表していると感じます。より快適で利便性が高い生活を求めて進化するための人間の活動は、そのまま経済の発展につながりますが、グレタさんの主張とは対立します。
つまり、現状では、経済的な力とそれに付随する発言力を持つ人が中高年の男性に多いため、批判しているのは中高年男性が多いと見えるのではないでしょうか」
Q.大人が彼女を批判、嘲笑するとき、どんな心理なのでしょうか。
小日向さん「『若造には分からない』『あなたも年をとれば分かる』といった言葉は著名人でなくても、年長者が若者に言う発言として珍しいものではありません。多くの大人は若者(未成年)に対し、『人生経験が少ない=世の中の仕組みを十分に理解していない』と思っているものです。そうした意味では、大人が一般的な若者を見る感覚と、彼女への感覚が一致している部分はあるでしょう。
ただ、彼女を批判する人々には『若者(未成年)』というだけではない別の感情がいくつか働いているように感じます。それは彼女の『温室効果ガスを削減せよ』などの主張、感情を前面に出す態度が大きいのではないでしょうか」
Q.彼女を批判する意見の中には、「精神的に病んでいる」「学校に行け」などと彼女の病歴(アスペルガー、うつ)や不登校をやゆするようなものや、「彼女は悪い大人に操られている」「利用されている」といった陰謀論的なものも目立ちます。
小日向さん「グレタさんは、自身が発達障害の自閉スペクトラム症であることを告白しています。この障害は『空気が読めない』『物事を白か黒かで考えることが多い』『突き進むパワーが強い』といった特徴があります。
これらの特徴は長所になることもありますが、調和を重視する環境では短所になります。そのため、調和を善しとする人々は彼女の障害を『病気』だといい、『だからそれを矯正するために学校に行きなさい』という主張が妥当な結論になるのでしょう。
また、『善が悪を懲らしめる』という勧善懲悪のストーリーが好きな人は多いです。そのため、真偽のほどはさておき『実はグレタさんの裏には操っている悪い大人がいる』というストーリーはメディアで非常に盛り上がるのです」
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