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「グリーンブック」ファレリー監督“旅”に出る若者へ「純粋に心の声に従って旅を」

第91回アカデミー賞で主要3部門を受賞した「グリーンブック」の脚本や制作などを担当した、ピーター・ファレリー監督にインタビュー。受賞の感想などを聞きました。

ピーター・ファレリー監督
ピーター・ファレリー監督

 2019年度の第91回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞の主要3部門を受賞した「グリーンブック」の脚本や制作などを担当した、ピーター・ファレリー監督。同作は、1960年代、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハラーシャ・アリさん)が人種差別が根強く残る南部のコンサートツアーを計画しています。ドクター・シャーリーの運転手として雇われたトニー(ヴィゴ・モーテンセンさん)が、黒人旅行用ガイド「グリーンブック」を頼りに旅に出るロードムービーです。

 オトナンサー編集部では、ファレリー監督にインタビューを実施。主要3部門を受賞した感想などを聞きました。

賞自体はただの“もの”

Q.アカデミー賞主要3部門での受賞の感想を教えてください。

ファレリー監督(以下敬称略)「アカデミー賞を受賞できたことは幸せですが、賞自体はただの“もの”にすぎません。僕自身、賞レースについては3カ月くらい前からしか意識しませんでしたし、受賞をしたくて映画を作ってきたわけではなく、物語をつづること、それがたくさんの人に届けばいいと思っています」

Q.スタインウェイのピアノが用意されておらず、スタインウェイに変えろとトニーが怒るシーンは実際にあったことでしょうか。

ファレリー「はい。僕の好きなシーンで、トニーが初めて運転手以外の仕事をしていて、ドクター・シャーリーに役立つシーンです。シャーリー自身はこの出来事を知らないかもしれませんが。この時、トニーはまだ差別的なところが残っています。彼はシャーリーが侮辱されて怒っているのではなく、自分が失礼なことを言われたことに反応しています。シャーリーに役立つことはしているのに、自分のことしか考えていないところが面白いと思いました」

Q.アカデミー賞の授賞式での、「私たちは皆同じ」というスピーチですが、コメディーを撮っている時から同じメッセージを訴えておられます。

ファレリー「僕は人が大好きです。ストーリーテラーとして、メインキャラクターは愛さなければならないと思っています。悪い人間も出てきますが、どんな人物であっても許せる部分がなければなりません。『Mr.ダマー』の二人もそうです。どこかで応援できなければ、好きになってもらえません。そうしないと、ストーリーに興味を持ってもらうのが難しくなります。

冒頭でトニーが、黒人が家で使ったコップをゴミ箱に捨てる差別的なシーンを見せます。そこから、観客に好きになってもらうのが大きなチャレンジです。どんな悪い人でもいいところがあるはず。全員とは言えませんが(笑)」

Q.女優のオクタヴィア・スペンサーさんが関わっていますが、彼女がこの作品にもたらした影響は。

ファレリー「多くのものをもたらしてくれました。何人かプロデューサーがいましたが、彼女が一番強かったです(笑)スタジオから、『タイトルを変えたい』と言われたことがあります。僕らは、この作品の『グリーンブック』の意味を考えると、このタイトルしかありえませんでした。スタジオは、ロードムービーだから『ルール・オブ・ザ・ロード』のようなタイトルにしようとしていました。スタジオと戦うときはオクタヴィアが前線に出てくれました。

議論の上でも非常に聡明な人なので、相手を言い負かしますし、そもそもオクタヴィア・スペンサーですからスタジオも耳を貸します。本当に説得力があり、落ち着いています。安定していて聡明なので、議論をしていると、彼女の方が正しいと思ってしまいます」

Q.これから「旅」に出る若者にどんなアドバイスをされますか。

ファレリー「やりたいことに対して最大の努力をしなければなりませんが、心の声に耳を傾けて導かれるべき、ということかもしれません。僕自身、人から言われてやったことはなく、僕自身がやりたいから、自分の心がそれを求めていたから、やりました。『Mr.ダマー』も『グリーンブック』も、やりませんかと声をかけられたわけではなく、物語と出会ったり、アイデアが出てきたりして、やりたいから作りました。

自分の心の声に導かれていけば、自然に起こりうるべきことが起こる、という考え方で、純粋に心の声に従い旅をすれば、予測していない扉が開いたり、いろいろなことが起きたりします。自分の場合も、最初は文章書きか人に教えることを仕事にしようとしていたら、たまたまある人と脚本を書くことになり、どんどんこういう形になりました。心の声に導かれ、旅をしていれば宇宙が助けてくれるはずです」

Q.コミカルなシーンが多かったと思います。監督がコメディーが得意だからでしょうか。

ファレリー「今回は、自然に生まれてきたユーモアだと思います。全く違う二人だから。もし、僕と君がアメリカ横断の旅に出たら面白いことが起きると思います(笑)お互いに学ぶことも多いし、デコボコだからこそ生まれてくる面白いこともある。僕にとっては、とても自然な形でのユーモアがありましたが、ユーモアがなくても語れなくはないです。ただ、僕にとってはなければならないシーンだと思っています」

Q.資料が少ないシャーリーを描く上でワクワクしたことはどんなことですか。

ファレリー「シャーリーについては初耳でした。彼の才能や独創性に衝撃を受けました。クラシックのピアニストになりたかった彼が、レコード会社の意向でブルースやジャズ、それにエレガントなものを混ぜた独特のスタイルを作り上げたのは魅力的でした。『ロストボヘミア』というカーネギーホールのドキュメンタリーで登場していて、それを参考に『こういう人』というのを感じました。あとは、トニーの息子さんに話を聞き、トニーは心からドクター・シャーリーが好きだということが分かりました」

 映画「グリーンブック 」は公開中。

【写真】Yoshiko Yoda

(オトナンサー編集部)

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